爆弾 (小説)
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あらすじ
プロローグ
東京都中野区の野方警察署に、酔っ払って自販機を蹴り飛ばして酒屋店主を殴った、うだつの上がらない風体の49歳の中年男・自称「スズキ タゴサク」が連行されてくる。傷害と器物破損だったが、スズキは一文無しで「偽名」らしく、記憶がないと言う。
うんざりしながら取り調べを行う取締官の等々力だったが、男は「霊感が働く」と言いだし、秋葉原辺りで何か事件が起こると発言した5分後、男の霊感は的中し、秋葉原の廃ビルで爆発が起こる。スズキは「霊感によると、あと三度。次は一時間後に爆発する」と言いだす。その1時間後、東京ドームシティでも爆発が起こり、スズキは連続爆破事件の重要参考人となる。
序盤
その後、警視庁捜査一課特殊犯捜査課・清宮輝次が、スズキの新たな取調官になる。スズキが不意に、「ハセベ ユウコウ」という名前を口にする。
長谷部有孔は、4年前までは野方署の番人とも呼ばれたベテラン刑事であったが、「事件現場で自慰をする」ところを記者に目撃され、週刊誌に《お恥ずかしい不祥事》とすっぱ抜かれていた。長谷部は定年を目前に退職し、3カ月後に自殺をしていた。この事から、スズキの標的は「野方署」だと推測され、長谷部とスズキとの関係を探るために、長谷部の家族に連絡を取ることになる。
一方のスズキは、深夜になっても取調室で、「タイガースの試合」「未来を予言する半獣半人の妖怪」「焼き肉のタン」など、とりとめのない話を続けていく。その雑談の中で、頭脳明晰な清宮の部下類家は、次の爆弾についてのヒントだと睨み、クイズに挑戦していく。類家は次々とクイズを解いていき、次の爆発場所を「九段下の新聞販売所」に絞り、爆発による被害を食い止める。
次の爆弾予告は、時刻は午前11時の代々木。爆弾が仕掛けられている場所は、「幼稚園か保育園」だと判明し、避難命令が出される。幼稚園に仕掛けられていた爆弾は発見・処理されたものの、同刻に代々木公園南門でも60名以上を巻き込んで爆発が起こる。
元刑事の長谷部有孔の元妻・石川明日香は、スズキの顔写真に「見覚えがない」と言う。長谷部は駅のホームから飛び降りて命を絶ったことから、賠償金は莫大な金額で、一家離散の後、今は長女の美海と同居させてもらっていた。
中盤
一方、取調室のスズキは、見張りの若い刑事・伊勢に、同期の警察官・矢吹に電話をさせ、無くしたと言った自分のスマホを回収させる。スマホには「スズキの住所」が保存されており、矢吹は独断専行でその住所へと向かう。
到着した家はシェアハウスで、矢吹は勇んで家探しを行う。同行している後輩の倖田沙良に先行して、奥の部屋に拘束されていた男性を発見するも、矢吹が近づこうとしたとき爆発が起こり、矢吹の左足は吹っ飛ぶ。拘束されていた男性は、長谷部有孔の長男・辰馬と思われ、彼の遺体は爆発によりバラバラに爆散した。
スズキが潜伏していたとみられるシェアハウスでは、他に2人の住人の遺体が見つかる。いずれも若い男で、名前は山脇と梶。死因は服毒。死後三日程度だった。
終盤
取調べは、清宮に代わって類家が行うことになる。類家はスズキに「かまかけ」をして、山脇と梶の外見を知っていたことが判明し、スズキと彼らの共犯説が浮上する。類家は、「この事件はチームプレイであり、秋葉原・東京ドームシティ・九段・代々木と、あまりに統一性がない。しかし、4人の思惑ならば納得できる」と推理する。
長谷部辰馬は、父親を尊敬していた父親の起こした事件後、家族は離散して、会社を退職して引きこもりになった辰馬はシェアハウスに転居。そこで辰馬は、自殺志願者の仲間を招き入れて「犯罪集団の巣窟」となり、大学で化学を専攻していた辰馬が「手製の爆弾」を作り、辰馬・山脇・梶の三人は、計画をスズキに託すと、爆発を見届けることなく服毒自殺をしたのだ。
長谷部の自殺した阿佐ヶ谷駅が捜索される中、「爆発するのはどこだ?」と尋ねられたスズキは、「全部です」と告げる。阿佐ヶ谷駅の自動販売機の中に隠されていた爆弾が爆発。犯行グループの山脇は、自動販売機を補充する仕事をしており、飲料缶型の爆弾を仕掛けていたのだ。
阿佐ヶ谷駅だけでなく、通常営業の山手線の駅で、反時計回りに円を描くように次々に爆弾が爆発していく。スズキの予告した、すべての爆発が終わる。
梶による、解雇した九段下の新聞販売所での爆発。スズキによる、ホームレスを狙った爆発。辰馬は、警察官を狙ったシェアハウスの爆発。山脇は、山手線の爆発により務めていた会社にダメージを与えることになった。
ラスト
シェアハウス爆発の真の目的は、「辰馬の身体を吹き飛ばすこと」だった。その動機を考えたとき、辰馬を殺した犯人として、ある人物が浮かびあがる。もともと、辰馬がシェアハウスに住まわせた元ホームレスは、路上で暮らしをしていた母の明日香だった。
その一方で辰馬は、今回の爆弾計画を練りはじめるが、やがて明日香に爆弾テロの計画がバレ、辰馬の計画を知った明日香は息子を殺し、路上暮らしで知り合ったスズキに助けを求め、スズキは「辰馬たちの計画」を自分のものにしたのだ。
製作された爆弾は20個だったが、これまでに爆発した爆弾は19個。類家は、「スズキが最後の爆弾を明日香に送り、明日香は野方警察署へ来る」と推測する。その頃、野方署の階段の踊り場に、スズキもろとも自爆しようと石川明日香が訪れており、婦警の倖田沙良によって阻止されていた。明日香が爆弾のボタンを押すも、爆発は起こらなかった。
身柄が確保された明日香のリュックには、テープで巻かれた箱があり、中身は「洋菓子」であった。その後、スズキは逮捕されて、本庁へと移送されていく。
エピローグ
事件から一か月後、石川明日香は容疑を否認し、爆弾テロや息子の辰馬たちの殺害も、すべてスズキの仕業だと告げる。容疑否認のまま、彼女は「辰馬の殺人容疑」で起訴されることになる。
一方のスズキタゴサクは、一貫して「霊感・記憶喪失・催眠」を主張しており、決め手となる物証を警察は得ることができず、彼の身元すら確認することができなかったが、世論に押されて検察は起訴を決定する。
穏やかな日常が戻る中で、いまだに最後の爆弾は見つかることなく、物語は終わりを告げる。
登場人物
書誌情報
- 呉勝浩『爆弾』
- 単行本:2022年4月20日発売、講談社、ISBN 978-4-06-527347-0[2]
- 文庫本:2024年7月12日発売、講談社文庫、ISBN 978-4-06-536370-6[3]
- 呉勝浩『法廷占拠 爆弾2』
- 単行本:2024年7月31日発売、講談社、ISBN 978-4-06-536304-1[7]
映画
2025年10月31日に公開された[9][10]。監督は永井聡、主演は山田裕貴[5][6]。PG12指定[11]。また、一部劇場ではDolby Atmosでの上映も実施された[12]。
第49回日本アカデミー賞では11部門にノミネートされ[13]、スズキタゴサクを演じた佐藤二朗は最優秀助演男優賞を受賞した[14]。
キャスト
- 類家:山田裕貴
- 倖田沙良:伊藤沙莉[5][6][15]
- 等々力功:染谷将太[5][6]
- 矢吹泰斗:坂東龍汰[16]
- 伊勢勇気:寛一郎[16]
- 石川辰馬:片岡千之助[17]
- 石川美海:中田青渚[17]
- 長谷部有孔:加藤雅也[17]
- 鶴久忠尚:正名僕蔵[17]
- 石川明日香:夏川結衣[17]
- 清宮輝次:渡部篤郎[5][6]
- スズキタゴサク:佐藤二朗[9][10]
- 井筒柾:遠藤史也[18]
- 山脇:吉田カルロス[19] - 辰馬のシェアハウス仲間
- 梶:門田宗大[20] - 辰馬のシェアハウス仲間
- 女性技官:竹崎綾華[21] - 爆弾の説明をする科捜研所員
- 杉本朝生:小沼朝生[22] - 警視庁捜査一課長
- 和久:二村仁弥[23] - 辰馬のシェアハウス仲間
- ミノリ:平田風果[24] - スズキの回想の少女
- 蓮見:星野翼[25] - 職質を受ける金髪の若者
- 風間健介:岡雅史[26] - 刑事
- 助友康弘:酒井貴浩[27] - 刑事
- 汲田愛美:麻絵[28][29] - 刑事
- 我妻:小澤雄志[30][31] - 刑事
スタッフ
- 原作:呉勝浩『爆弾』(講談社文庫)
- 監督:永井聡
- 脚本:八津弘幸、山浦雅大[17]
- 音楽:Yaffle[17]
- 主題歌:宮本浩次「I AM HERO」(UNIVERSAL SIGMA)[32]
- 製作:臼井裕詞、高島祐一郎、山田邦雄[17]
- プロデューサー:岡田翔太、唯野友歩[17][10]
- ラインプロデューサー:加藤賢治[17]
- 撮影:近藤哲也[17]
- 照明:溝口知[17]
- 美術:杉本亮、岡田拓也[17]
- 録音:石貝洋[17]
- 編集:二宮卓[17]
- 装飾:茂木豊[17]
- VFXスーパーバイザー:須藤公平[17]
- VFXプロデューサー:林達郎[17]
- カラリスト:石山将弘[17]
- 音響効果:北田雅也[17]
- スタイリスト:申谷弘美[17]
- 衣装:片岡久美子、小堀あさみ[17]
- ヘアメイク:荒木美穂、神谷菜摘(渡部篤郎担当)[17]
- スクリプター:山縣有希子[17]
- スタントコーディネーター:吉田浩之[17]
- キャスティングディレクター:川口真五[17]
- 助監督:松下洋平[17]
- 制作担当:三浦吉弘[17]
- 配給:ワーナー・ブラザース映画[6][10]
- 制作プロダクション:AOI Pro.[10]
- 製作:映画「爆弾」製作委員会(フジテレビジョン、ワーナー・ブラザース映画、講談社)
受賞
- FILMARKS AWARDS 2025 国内映画部門 優秀賞[33]
- 第49回日本アカデミー賞 [34]
- 最優秀助演男優賞(佐藤二朗)[35]
- 優秀作品賞
- 優秀監督賞(永井聡)
- 優秀脚本賞(山浦雅大、八津弘幸)
- 優秀主演男優賞(山田裕貴)
- 優秀撮影賞(近藤哲也)
- 優秀照明賞(溝口知)
- 優秀音楽賞(Yaffle)
- 優秀美術賞(杉本亮、岡田拓也)
- 優秀録音賞(石貝洋)
- 優秀編集賞(二宮卓)
- 新人俳優賞(坂東龍汰)
- 第45回藤本真澄賞 奨励賞[36]