田部重治

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田部重治(『アサヒグラフ』1948年8月18日号)

田部 重治(たなべ じゅうじ、1884年明治17年〉8月4日[1] - 1972年昭和47年〉9月22日)は、日本英文学者登山家

登山と山岳随筆[7]

富山県富山市長江(旧:富山県上新川郡山室村)生まれ[1]。田部家と養子縁組したが旧姓は南日[1]で、長兄の英語教育者南日恒太郎、次兄の英文学者田部隆次、と共に南日三兄弟と呼ばれる。玄孫に建築家の永山祐子がいる[2]

1897年富山中学校入学(14回生)[3]、1902年には四高(現金沢大)入学を経て、1905年9月に東京帝国大学英文科入学[4]。在学中に夏目漱石上田敏らに師事し、中勘助らと級友となります。大学卒業後、海軍経理学校東洋大学法政大学などで講義をする[5]。研究対象は19世紀英文学で、ウォルター・ペイターウィリアム・ワーズワースなどを研究した[5]

墓所は多磨霊園[6]

 1905年6月婚約者急逝で傷心の重治を慰めようと7月の四高卒業後、兄の恒太郎と隆次が誘い、神通川を遡行した高山までのルートを進んだ[3]。幼少の頃から身体が弱かった重治には、これが初めての山旅であった。

 東京帝国大学英文科在籍中には。近所の新聲社(後の新潮社)に出入りし編集者の木暮理太郎と知り合い山への関心を深める。木暮との出会いが、その後の山岳研究の原動力となった。兄貴分の木暮とは歳の差が11あるが無二の親友となった。1908年東京帝大卒業後、重治は帰省の際の妙高山登山を皮切りに、登山に邁進するようになる。 

登山家として日本アルプス秩父山地を歩き、1919年大正8年)に『日本アルプスと秩父巡礼』を刊行、1930年昭和5年)に『山と渓谷』として出版される。日本アルプスを偉大な山として、秩父山地を緑の渓谷美としてその魅力を表現した。奥秩父の雲取山荘のすぐ上には重治のレリーフがあり、今でも6月第三土曜日には三峰神社から神主が登山をして田部祭を行い、山の安全を祈願している。[8]

 日本の自然美は、豊かな森林に守られた渓谷と清流にある。頂上をめざす西洋アルピニズムに対して、重治はこうした自然美にふれることに大きな意義があると主張し多くの人が共感した。重治の重要な研究テーマである、ロマン派詩人ウィリアム・ワーズワースも、自然の中に崇高な存在を見出だし讃美しており、重治も深い影響を受けている[3]

 「絶頂よりも渓谷、雪よりも深森という風な変化が、著しく私の山に対する志向の上に現れるようになってきた。[9]」「(西洋の)アルプスと日本の中部山岳とを比較して、日本の山の麗しさは山腹を取り巻く樹林と渓谷にあると言ったウェストン※1 の言葉は至言である[10]」と記している。

 また「只今のところ日本アルプスという名称によって総括されている山脈を概括的にあらわすべき適当な名称が無く、かつ今俄かに適当なる名称を創造することも出来ない為め」日本アルプスという名称を使う、として、アルプスという表現を日本の山にあてはめるのに抵抗を示した[3]

山岳雑誌『山と渓谷』の誌名に名前を貸す

重治の著書『山と渓谷』は、雑誌『山と渓谷』に名前を貸した。[11]

田部重治 ぼくはあのときのことを覚えているんですよ。私が法政大学の教授室にいたときに、川崎(川崎吉蔵・雑誌「山と渓谷」創設者)さんが飛んで来て、僕の著書の『山と溪谷』を雑誌の表題にしたいから名前を貸してくれないかというんです。

塚本閤治 ただで……(笑声)。

田部重治 むろんさ(笑声)。((「二十五周年座談会」『山と溪谷』1955年5月号)

田部重治先生から名著『山と溪谷』のタイトルを頂戴した。理由は何もない、ただあの本がすきだつたからである。(川崎筆『山と溪谷』1947年5月号

人物エピソード

戦時中に紀州の奥地で、その風貌から外国人のスパイと疑われ巡査に捕まったといった逸話もある[1]。

著作

  • 日本アルプスと秩父巡礼 北星堂、1919、あかね書房、1966、大修館書店、1975
  • 渾沌より統一へ 博文館、1920
  • スキーの山旅 大村書店、1930
  • 峠と高原 大村書店、1931、新潮社 1938、角川文庫 1950
  • 中世欧洲文学史 第一書房、1932/新編「中世ヨーロッパ文学史」法政大学出版局、1966
  • 心の行方を追ふて 第一書房、1933、角川文庫 1951 改版1964
  • 紀行と随筆 大村書店、1934
  • 山への思慕 第一書房、1935
  • 涯てしなき道程 第一書房、1936
  • 日本精神の情操的陶冶 中央教化団体聯合会、1936
  • 山と渓谷 第一書房、1938
  • 山に入る心 旧新潮文庫、1938
  • 山路の旅 新潮社、1938
  • 四季の随想 旧新潮文庫、1939、松和書房 1947
  • 萠え出づる心 第一書房、1939
  • 山と随想 新潮社、1939、旧新潮文庫 1942
  • 青葉の旅・落葉の旅 第一書房、1941、角川文庫 1952
  • ふるさとの山々 第一書房、1942
  • 旅への憧がれ 新潮社、1942
  • 詩と断章 七丈書院、1942
  • わが散文詩 第一書房、1942
  • 北アルプス 熊沢復六共編 六芸社、1943
  • 随想山茶花 七丈書院、1943
  • 旅路 青木書店、1943
  • 山と渓谷 紀行篇 旧新潮文庫、1944、新編・角川文庫 1951。電子出版 2013
  • 日本の山 生活社、1946
  • 文芸の理念 八雲書店、1947
  • 高原のあけくれ 東海書房、1947
  • 山茶花の咲く頃 鳳林書林、1948
  • 山と渓谷 随筆篇 万葉出版社、1948、新編・角川文庫 1951。電子出版 2013  
  • 憧れの旅路、元々社教養新書、1954
  • 人生の旅 角川文庫、1955
  • 山をたゝえる心 山と渓谷社、1955
  • わが山旅 朋文堂、1956
  • 旅・人間・自然 東京ライフ社、1957
  • 忘れえぬ山山 第二書房、1959
  • わが山旅五十年 桃源社、1964、二見書房「山岳名著シリーズ」1971
  • ペィターの作品と思想 北星堂書店、1965
  • 山旅と随筆 紀行・随筆集 世界文庫、1965
  • 忘れえぬ山旅 三笠書房、1968
  • わが詩わが歌 田部重治先生詩歌集刊行委員会、1974。遺稿集
新版

翻訳

作詞

  • 山室小学校校歌

参考文献

脚注

関連項目

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