知人による性暴力
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知人による性暴力(ちじんによるせいぼうりょく、Acquaintance rape)とは、被害者の知人によって行われる強姦を含む性暴力である。加害者の例として、家族や恋人、配偶者、友人、同僚、雇用主、介護者などのあらゆる知人が挙げられる[1][2][3][4]。
レイプなどの性暴力は「赤の他人によるもの」と考えられがちだが、実際には知人によって行われることが多い。しかし、知人による性暴力は警察に届出される割合が低く、犯罪統計や一般の認識では過小に見積もられる傾向がある[1]。
知人によるレイプおよび性暴力は、ドメスティックバイオレンスをはじめとする、知人による暴力というより広い枠組みの中で捉えることができる。このような知人による暴力には、届出の難しさや、暴力が長期にわたって継続しやすいといった固有の問題がある[1]。恋愛関係や性的関係にある相手によるレイプは、デートレイプと呼ばれる[5][6][7][8]。
日本の内閣府が2008年に男女5,000人を対象に実施した調査では、「異性から無理やり性交された経験がある」と回答した女性123人のうち、約8割が面識のある人から被害を受けていた。そのうち、加害者が「よく知っている人」だったのは62%、「顔見知り程度の人」だったのは14%、加害者の類型で最も多かったのは「配偶者・元配偶者」で36%だった[9]。
一方、1998年に内山絢子が全国の警察署の事件記録を収集して行った調査では、加害者が友人・知人だった割合は16%にとどまり、見知らぬ人が79%を占めた。この逆転は、知人からの被害が警察に届け出されにくいことを示している[9]。
1987年、米国の25大学の生徒7,000人を対象に行った調査によると、4人に1人がレイプまたはレイプ未遂の被害に遭っており、そのうちの84%は加害者を知っていた[10]。アメリカ疾病予防管理センターによる調査では、生涯にレイプ被害を経験した女性のうち41%が知人から、51%が現在または過去の親密なパートナーから被害を受けていた。アルコールや薬物によって抵抗できない状態で行われたレイプでは、ほぼ全件(93%)が知人または親密なパートナーによるものだった[11]。
主にヨーロッパ30か国を対象とした国連の2004〜05年の調査では、レイプ被害者の約半数が加害者を知っていた。内訳は同僚・上司が17%、親しい友人が16%、元パートナーが11%、現在のパートナーが7%だった[12]。2009年の欧州委員会の調査では、加害者の67%が被害者の知人であり、その多くが現在または元パートナーだった[13]。
知人による性暴力の特徴
研究者によると、知人によるレイプの加害者は自分の行為を加害やレイプではなく「口説いた」と捉える傾向があり、罪悪感・後悔・共感の欠如、また過剰な特権意識を持つといった特徴がある[2]。
デートレイプや夫婦間レイプは、性的欲求ではなく、支配、権力、屈辱が目的として見られると研究者は指摘する[14]。過去に性的な関係を持った相手や、今も性的な交際関係にある人に対しては、同意が不要であるという誤った認識が、親密圏における性暴力が認知されにくい原因となっている。また、職場や学校などでは、地位や権力を利用して性暴力が行われる[1]。
一般的なイメージに反して、知人によるレイプ、とくに現在または元交際相手によるレイプは、見知らぬ人によるレイプよりも身体的外傷を伴う割合が高い。交際相手からレイプされた女性の40〜50%が挿入以外の身体的外傷を負っているのに対し、見知らぬ人からのレイプでは24%だった[15]。
これらの傾向は、知人によるレイプは「本当の」レイプではないとするレイプ神話によって強化される。2007年に日本の首都圏の大学生444人を対象に行われた研究では、加害者を知らない場合に比べ、知人によるレイプのほうが、被害者が責められる度合いが大きく、加害者の責任が小さく認識されることが指摘された。また、レイプ神話を信じている人ほど被害者の責任を大きく、加害者の責任を小さく認知し、被害者の心的外傷を軽く見積もっていた[16]。このような社会における認知の歪みが性暴力を許容するレイプ・カルチャーに寄与していると指摘される[16]。
知人からレイプされた被害者は、自分の経験をレイプだと認識しにくいことも指摘されている。この現象は、1980年代後半に初めて報告されて以来、複数の研究で確認されている。性暴力を公表しない他の理由としては、恥の感情、自責、信じてもらえないという恐怖、知人を困らせたくないという気持ちがある[17]。