立見峠のおとんじょろう
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- ある夜、高草郡の商人が鳥取の城下に向けて歩いていると、向こうの方から若い女が手ぬぐいをかぶって歩いてくる。商人は「さてはおとんじょろうが化けたか」と思っていると、女が「商人さん、わしをどこぞへ嫁に世話してもらえまいか」と頼んできた。商人は友だちの十兵衛の所におとんじょろうを連れて行ってひどい目に遭わせてやろうと、何食わぬ顔をして十兵衛の家に女を連れて行くと、十兵衛の家ではもう嫁取り支度が始まっていた。下へも置かぬもてなしを受けた商人は、家人から風呂にはいるように勧められた。商人は湯を浴びながらいい気分になっていると、だんだん夜が明けてきて、朝仕事に田んぼに出てくる百姓たちがこれを見て、「商人さんがおとんじょろうに化かされて、肥壺につかって顔を洗ようるわいや」と大騒ぎになった。商人は騙されて田んぼの肥壺で一風呂を浴びていたのである。
- おとんじょろうのいたずらを腹に据えかねた庄屋さんは、村の若い衆を集めて「おとんじょろうを退治した者にはたくさんの褒美をやる」と伝えた。すると力自慢の若い衆が二人、狐退治に名乗り出た。二人が立見峠に行ってみると、一匹の大狐が歩いている。狐は川のそばまで来ると青みどろをかぶって若い女に化け、川原の石を赤子に変えて、村はずれの一軒家に入っていった。若い衆がその家をのぞくと、おじいさんとおばあさんが石の赤子を抱いて喜んでいる。家に踏み込んだ若い衆が言って聞かせても、おじいさんたちは「これは自分たちの孫だ」と言い張って聞かない。それほど言うなら赤子を煮てみようということになり赤子を煮え湯に入れたところ、赤子は煮え死んでしまった。若い衆は平謝りするが、怒ったおじいさんとおばあさんが二人を役人に引き渡すと言って縛り上げてしまった。そこへ旅の坊さんが通りかかって「この二人を役人に引き渡すよりは、寺に入れて孫の菩提を弔わせた方がよい」とおじいさんたちを諭したので、若い衆は頭を丸め寺に入ることになった。村では、明るくなっても若い衆が戻らないものだから探し回っていると、丸坊主になった若い衆が川原の石を叩いて念仏を唱えていた。
