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ソーセージ

肉料理の一種 From Wikipedia, the free encyclopedia

ソーセージ(英語: sausage)は、挽肉や刻んだ食肉を食塩、香辛料などで調味し、ケーシングに詰めるなどして成形する食肉加工品(英語版)の総称である。用いる肉、挽き方、調味料、くん煙・加熱・発酵・乾燥の有無によって多くの種類がある[1]。

種類 食肉加工品(英語版)
主な材料 食肉、食塩、香辛料
概要 ソーセージ, 種類 ...
ソーセージ
各種のソーセージとザワークラウト
種類 食肉加工品(英語版)
主な材料 食肉、食塩、香辛料
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日本語では腸詰め(ちょうづめ)ともいう[2]。伝統的には動物の腸などを外皮に用いるが、コラーゲン、セルロース、合成樹脂製のケーシングも使われる[3]。製造後にケーシングを取り除くスキンレスソーセージもある[4]。

特徴

ソーセージの製造では、筋肉だけでなく脂肪や可食の内臓なども原料として利用する。原料の組合せ、挽肉の粒度、香辛料、加工方法によって、粗挽きの製品から滑らかなペースト状の製品まで異なる食感や風味が得られる[5][6]。

塩漬け、乾燥、発酵、くん煙などは保存性に関係するが、その程度は製品ごとに異なる。保存性を左右する要因には水分活性、酸性度、塩分、製造時の衛生状態、保管温度があり、生ソーセージや多くの加熱済みソーセージには冷蔵が必要である[7]。

歴史

起源と古代の記録

肉を腸などに詰める技術の起源は明らかでなく、単一の発祥地や発明者を確定できるものではない。動物のさまざまな部位を利用し、保存するための食品として、各地で異なる形のソーセージが発達した[1][8]。英語の sausage は、古北部フランス語の saussiche、中世ラテン語の salsicia を経て、ラテン語で「塩漬けにした」を意味する salsus に由来する[9]。

古代ギリシアのホメロスの叙事詩『オデュッセイア』には、血と脂肪を詰めたものを火の上で回しながら焼く場面が比喩として現れる。アリストパネスの喜劇『騎士』にもソーセージ売りが登場し、古代ギリシアに同種の食品が存在したことがうかがえる[8]。

古代ローマの料理書『アピキウス』として伝わるレシピ集には、ルカニアにちなむ「ルカニカ」の作り方がある。肉を香辛料などで調味し、脂肪やナッツを加えて腸に詰め、くん煙するものである[10]。

中国では、6世紀に成立した農書『斉民要術』に、羊の腸に肉や調味料を詰める料理の記述がある。同書にある腸詰めの料理のうち、「灌腸」は後世のソーセージに近いものとされる[2]。

中世・近世の発達

ニュルンベルクのブラートヴルスト

中世のヨーロッパでは、地域の気候、利用できる原料、食習慣を反映した品種が発達した[1]。ドイツのニュルンベルクでは1313年に市の評議会がソーセージの製造について定め、使用する肉の品質などを規制していた[11]。テューリンゲンのブラートヴルストは、1404年の記録に現れる[12]。

保存の方法にも地域差があり、温暖で乾燥した地域では空気乾燥によるソーセージが発達した一方、イギリスでは調理前の生ソーセージが広く作られた。16世紀以降のヨーロッパ諸国の交易・植民活動は、チョリソやリングィーサなどの製法がアジア、アフリカ、アメリカに伝わる契機となり、各地の原料や香辛料と結びついて変化した[8]。

近代以降

19世紀には製造の機械化が進んだ。冷蔵技術の発達によって、と畜場や販売地の近くで行われていた製造の立地条件も変わり、原料の運搬や製品の保管が容易になった。さらに人工ケーシングや包装技術、製造設備の改良が工業生産を支えた[8][1]。

戦時下の食糧不足は、肉の代替や増量を目的とする製品の開発にもつながった。第一次世界大戦中の1915年、ケルンの行政に携わっていたコンラート・アデナウアーは大豆を利用するソーセージを考案した。この製品には肉のスープや肉のペーストも使われており、肉を一切使わない製品ではなかった[13]。

発酵ソーセージでは、原料に自然に存在する微生物を利用する製法に加え、選別したスターター培養を用いて発酵を管理する技術が使われるようになった[14]。

製法

製法は種類によって異なるが、基本的な工程には、原料の選別、細切・挽砕、調味・混合、充填、必要に応じた加熱・くん煙・発酵・乾燥がある。豚肉、牛肉、鶏肉などの肉と脂肪のほか、製品によって血液や肝臓などを使用する。でんぷん、パン粉、植物性・乳性のたんぱく質などを加える製品もある[5][15]。

食塩は味を付けるとともに、肉のたんぱく質の溶解や保水性に関係し、肉・脂肪・水を結びつける働きをする。細かく挽いた乳化型のソーセージでは、肉、脂肪、水または氷を混合し、加工中の温度を管理する。過度の温度上昇は、加熱時の脂肪や水分の分離につながる[5][6]。

ケーシングには、牛・豚・羊などの天然腸と、コラーゲン、セルロース、合成樹脂などによる人工のものがある。天然腸は洗浄・加工して使用し、人工ケーシングは直径などをそろえやすい。ケーシングを充填器の口金に取り付けて原料を押し込み、ひもやクリップなどで端を閉じる。人工ケーシングには食べられるものと、製造後または食べる前に除去するものがある[3]。

発酵ソーセージでは、微生物が糖を分解して乳酸などを生じ、酸性度を高める。乾燥による水分活性の低下と組み合わせることで、特有の風味と保存性を得る[14]。一方、加熱済みの製品や、生のまま販売して食べる前に調理する製品もあり、すべてのソーセージが同じ加工を受けるわけではない[15][6]。

亜硝酸塩などの発色剤は肉の色を保つために使われ、風味の形成、脂肪の酸化抑制、微生物の増殖抑制にも関係する[16]。ただし、発色剤を使わない製品もあり、日本のJAS規格にも「無えんせき(塩漬)ソーセージ」の区分がある[17]。

種類

製造方法による区分

製造方法による分類の一例として、FAOの製造技術書は次のような区分を用いている。製品名と製法の対応は地域によって異なる[1]。

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区分主な特徴・例
生ソーセージ加熱していない原料肉を調味・成形したもの。冷蔵し、食べる前に加熱調理する[15]。
発酵ソーセージ原料肉を発酵させ、通常は乾燥も行う。サラミなどがあり、乾燥の程度によってセミドライとドライに分けられる[14]。
くん煙・部分加熱ソーセージくん煙や部分的な加熱を行い、通常は食べる前にさらに調理する[18]。
乳化型ソーセージ肉、脂肪、水を細かく均一に混ぜて成形し、加熱する。フランクフルター、ウインナー、ボロニア、モルタデッラなど[6]。
原料を予備加熱するソーセージ内臓や肉などをあらかじめ加熱し、挽いて充填した後にも加熱する。レバーソーセージや血液を用いるソーセージなど[19]。
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地域ごとの例

地域ごとのソーセージには、肉、香辛料、穀類、発酵・乾燥方法などの組合せに特色がある。以下はその一部である。

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地域名称特徴
ドイツ・ミュンヘンヴァイスヴルスト子牛肉などを細かく挽き、パセリなどを加えた白いソーセージ[20]。
ドイツレバーヴルスト豚の肝臓などを用いる。ペースト状のものはパンに塗って食べられる[20]。
イタリアサラーメ・ミラノ豚の赤身肉と脂肪を用い、ニンニクや赤ワインなどで調味するドライソーセージ[20]。
イタリアモルタデッラ細かく挽いた肉に脂肪の角切りなどを混ぜる大型の加熱ソーセージ[6]。
フランスブーダン・ノワール豚の血液や脂肪を用い、充填後に加熱する[20]。
中国臘腸肉を塩、砂糖、酒などで調味して乾燥させるソーセージ。伝統的な空気乾燥のほか、製造時に熱風乾燥も行われる[21]。
タイ・ラオスネームなど豚肉、豚の皮、米、ニンニクなどを用いる酸味のある発酵食品。バナナの葉や合成樹脂のフィルムで包むものもある[22]。
タイ東北部サイクローク・イーサーン豚肉と米などを腸に詰めて発酵させる[22]。
インドネシア・バリ島ウルタン豚肉、脂肪、香辛料を腸に詰める。伝統的な製法では発酵させた後に揚げる[22]。
ブルネイベルタック牛肉などを牛や水牛の腸に詰めて発酵させる[22]。
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原料による違い

豚肉や牛肉などの筋肉を主原料とする製品に加え、血液を使うブラッドソーセージや肝臓を使うレバーソーセージがある。血液や内臓を用いる製品では、肉、脂肪、穀類などを組み合わせる場合もある[19]。鶏肉を用いるソーセージも製造される[6]。

日本の魚肉ソーセージは魚肉を原料とし、食品成分表では水産練り製品に分類される[23]。

肉を使用しない製品

肉に似た食感や形状を持つ植物性のソーセージも作られ、大豆や小麦グルテンなどが原料に使われる。原料や配合は製品ごとに異なる[24]。

肉を使わない伝統的な料理の例には、ウェールズのグラモーガン・ソーセージがある。チーズ、リーキ、パン粉などを用い、ソーセージの形に成形する[25]。

日本

歴史

日本では明治初期にはソーセージが知られており、1877年(明治10年)の第1回内国勧業博覧会の出品目録に「腸詰」が見られる[2]。

1910年(明治43年)2月から3月には、農商務省種畜牧場渋谷分場で豚肉加工の講習会が開かれ、アメリカで技術を学んだ飯田吉英がソーセージの製法を講義した。その内容は講農会刊行の『豚肉加工講習会講義録』に収められ、複数の種類のソーセージが紹介されている[26]。大木市蔵も製造や技術普及に携わり、1917年(大正6年)11月1日の第1回神奈川県畜産共進会にソーセージを出品した[27][28]。

第一次世界大戦中はヨーロッパからの輸入が減少し、日本国内でのハム・ソーセージの生産が進んだ。一方、終戦後には輸入が再開し、国産品の品質向上が課題となった[29]。

1918年(大正7年)2月、飯田は習志野俘虜収容所のドイツ人捕虜カール・ヤーンらから製造技術を学んだ。習得した技術は講習会を通じて各地の技術者に伝えられ、日本でのドイツ式ソーセージ製造の普及に影響した[30]。1922年(大正11年)には明治屋が、元ドイツ人捕虜のヘルマン・ウォルシュケらを技師として招いた[29]。1925年(大正14年)には、カール・レイモンが函館でハム・ソーセージの製造を始めた[31]。

ハム・ソーセージは長く高価な食品だったが、戦後、昭和30年代から40年代にかけて一般家庭に普及した。1962年(昭和37年)には、ハム・ソーセージ・ベーコンにJAS規格が設けられた[31]。1980年代には天然羊腸を用いた粗挽きのウインナーが家庭向け市場で広がり、その一例が1985年に発売されたシャウエッセンである[32]。

JAS規格による区分

日本のJAS規格は、原料肉や内臓を調味・練り合わせ、ケーシングなどに充填した後、加熱または乾燥したものなどをソーセージとして定義する。原材料、品質、試験方法についても定めている[17]。

ウインナー、フランクフルト、ボロニアは、使用する動物の腸と太さにより次のように区分される[33]。牛腸・豚腸・羊腸を使う場合は、直径だけで分類するものではない。例えば、羊腸を使う製品は、太さが20 mmを超えていてもウインナーソーセージとして表示する[34]。

さらに見る 名称, 天然腸による区分 ...
名称天然腸による区分牛腸・豚腸・羊腸を使用しない製品の太さによる区分
ウインナーソーセージ羊腸を使用20 mm未満
フランクフルトソーセージ豚腸を使用20 mm以上36 mm未満
ボロニアソーセージ牛腸を使用36 mm以上
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これら3種には「特級」「上級」「標準」の等級がある。原料肉や結着材料の使用範囲、色沢、香味、肉質などに基準があり、特級は結着材料を使わず、上級・標準には結着材料の量などの制限がある[17]。

また、乾燥した製品については、水分35 %以下をドライソーセージ、ドライソーセージを除く水分55 %以下をセミドライソーセージとするなど、原料と製法を含む定義がある。「無えんせき(塩漬)ソーセージ」は発色剤を加えない原料を用いる区分であり、食塩を加えないという意味ではない[17]。

赤いウインナー

切れ目を入れて焼いた赤いウインナー

日本では、表面を赤く着色したウインナーも販売されている。家庭でハム・ソーセージが普及した時期から、赤いウインナーは弁当のおかずなどに使われてきた[32]。

食べ方

ソーセージの食べ方は種類によって異なる。生ソーセージは食べる前に焼くなどして加熱し、ドライソーセージや加熱済みのものにはそのまま食べる製品もある[15][14][6]。パンにはさんでホットドッグにしたり、薄切りにしてパンに添えたりするほか、レバーソーセージにはパンに塗るものもある[4][20]。

健康と衛生

加工肉と発癌性

国際がん研究機関(IARC)は2015年、塩漬け、発酵、くん煙などの加工を施した肉を「ヒトに対して発癌性がある」(グループ1)に分類した。ソーセージもこの加工肉に含まれる。主な根拠は、大腸癌についての十分な疫学的証拠である。この分類は発癌性を示す証拠の確かさを表し、同じグループに属する要因の危険性が同じ大きさであることを意味しない[35]。

IARCが示した研究の分析では、加工肉を毎日50 g摂取することは、大腸癌の相対リスクの約18 %増加と関連した。これは発症確率が18 %になるという意味ではない[35]。

食中毒

製造や保管の衛生管理、温度管理はソーセージの安全性に関係する。加熱、塩分、酸性度、水分活性などの条件は製品によって異なり、原料の衛生状態や加工後の汚染にも注意が必要となる[7]。

ボツリヌス症の研究は、18世紀末から19世紀初めのドイツ南部で起きたソーセージによる中毒と結びついている。ユスティヌス・ケルナー(英語版)が症例を記述し、1895年にベルギーで起きたハムによる集団中毒を契機として、エミール・ヴァン・エルメンゲムが原因菌を発見した。病名の botulism は、ラテン語でソーセージを意味する botulus に由来する[36]。

ことわざ・比喩

法律とソーセージを、その製造過程を知ると敬意を失うものとして並べる格言がある。引用句研究者のフレッド・R・シャピロ(英語版)によれば、確認できる初期の記録は、1869年3月29日の新聞でアメリカの詩人ジョン・ゴッドフリー・サックスの言葉として紹介されたものである。ビスマルクの言葉としても広く流布しているが、シャピロが確認した最も古いビスマルクへの帰属は1933年の文献に現れる[37]。

脚注

関連項目

外部リンク

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