遺伝子プール
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有性生殖における遺伝子プールの意味
ハーディー・ワインベルクの法則との関連
ハーディー・ワインベルクの法則の説明において、遺伝子プール・遺伝子頻度は重要な概念である。この法則では、個々の個体の遺伝子について記述するのではなく、遺伝子プールと遺伝子頻度の概念を用いて、次世代の遺伝子型頻度を解説するものである。
遺伝子プールに含まれる遺伝的多様性
遺伝子プールに含まれる遺伝子を無作為に取り出し、組み合わせることによって多様な遺伝子型を持った個体が誕生することになる。
例えば、ヒト (2n=46) の常染色体と同じ数の常染色体22組44本の各染色体に1遺伝子座のみを持つ生物(合計22遺伝子座)を仮定する。この生物では各染色体それぞれは独立に次世代に遺伝することから、その染色体上の遺伝子座も独立に遺伝する。ここでさらに、各遺伝子座が3種類の対立遺伝子を持つと仮定する。その場合、各遺伝子座について3種類の対立遺伝子から作られる遺伝子型は、AA,AB,AC,BB,BC,CCのように6種類となる。これが各遺伝子座(染色体)で独立に遺伝することから、仮定した遺伝子座総体の遺伝型の総数は、となる。
このような22遺伝子座のみ生物のモデルにおいても莫大な数値を示すが、ヒトの遺伝子座数は 2万以上[1]と言われており、遺伝子プールに含まれる遺伝子型の多様性は天文学的数値になる。実際の人口は約65億人(2006年)であり、完全に同じ遺伝子構成を持った個人は世界のどこにも存在しないし、過去にも存在しなかった確率が極めて高い(ただし一卵性の双生児は例外であり、同一の遺伝子構成をもつ[2])。
進化との関連
進化の総合学説においては、遺伝子プール内の各遺伝子の比率の変化が進化という現象であるとみなす。例えば、まだ首の短かったキリンの個体群において、突然変異で少し首を長くする遺伝子を持つキリンが現れたとき、首の短いままの遺伝子しかなかった遺伝子プールに首を長くする遺伝子が追加された。するとその遺伝子プールに基づいて、ある割合で首の長いキリンが生まれるようになった。このとき、首が長いことが生存に有利な条件となると、首の長いキリンがより多く生き残って子孫を残し、遺伝子プールの中で首を長くする遺伝子の割合が、少しずつ増加していった。最終的には遺伝子プールは首を長くする遺伝子ばかりになった。こうして少し首の長いキリンへと進化したと考えるのである。