阿仙薬

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ペグノキの芯材から抽出したペグ阿仙薬
ペグノキの芯材から抽出したペグ阿仙薬

阿仙薬(あせんやく)はタンニンを含有する植物から作られる生薬および染料の一種。カテキューとも呼ばれる。

ガンビール阿仙薬

服用するとタンニンに由来する収れん作用によって歯肉の出血や下痢を止め、口中の清涼剤として働く。ビンロウジ噛みや皮革のなめし、合成染料が普及する大正中頃までは着物の赤茶色や黒色への染色[1][2]にも使われた。

アカネ科ガンビールノキの葉や若い枝を煎じ、煮詰めたもの。成分はポリフェノール化合物カテキン30~40パーセントおよびタンニン。独特の香りと味を持ち、古く熟成されたものほど爽快感が増すという[1]。ガンビアカテキューとも呼ばれる[3]

ペグ阿仙薬

別名アセンヤクノキとも呼ばれるペグノキの芯材から抽出したエキスを固めたもので、暗褐色の塊状態で流通する。成分はタンニンが20~50パーセント、カテコールおよび異性体のエピカテキンが2~20パーセント[4]。染色剤としてはベンガルカテキュー(アカシアカテキュー)とも呼ばれる[3]

檳榔子阿仙薬

ビンロウから抽出した阿仙薬で、主に染色に利用される。ボンベーカテキュー(アレカカテキュー)とも呼ばれる[3]

日本薬局方における阿仙薬

2021年(令和3年)現在、日本薬局方(第十八改正)の生薬として記載されている阿仙薬はガンビール由来の製剤のみが「アセンヤク」および「アセンヤク末」として記載されている[5]

歴史

カテキューは14世紀初頭の中国での飲膳大医、忽思慧中国語版[6]が編纂した『飲膳正要』に「孩児茶」として収録されており、これをマメ科のペグノキから抽出したアカシアカテキュー(ペグ阿仙薬)とする説と、カテキン含有量の多い茶葉醗酵させて作った説がある[7]

日本における阿仙薬の利用は、東南アジアとの交易が始まった室町時代と考えられる[2]

透頂香

元禄時代、日本に滞在したドイツの植物学者エンゲルベルト・ケンペルは日本における阿仙薬製剤の製造を『江戸参府旅行日記』に記している。それによると、オランダや中国の貿易商から輸入した阿仙薬の原液を京都小田原で精製し、アンブラ(鯨蝋龍涎香からなる芳香を放つ興奮剤)や龍脳、精製した樟脳などを調合し、丸薬や花型など様々な形に誂えて小箱に入れて販売したという。こうして作られた透頂香や花外郎は口臭歯周病を防ぐとされ、成人女性は毎日服用し、海外にも輸出された。1730年(享保15年)にはオランダ船によって7.6トンもの阿仙薬が輸入されたという[8]

偽薬

近世の日本ではタンニン成分の多い草本から阿仙薬の類似品が作られた。その一つが百薬煎で、これはヌルデ虫こぶから採取する五倍子を主成分としていた[1]。この百薬煎はお歯黒として歯を黒く染めるのにも使われた[9]。またでは、五倍子に紅茶の朱を混ぜ、蕨粉で練った檳榔膏と称する和製阿仙薬が作られている[1]

貝原益軒は「大和本草」にて孩児茶と阿仙薬を同一とし、小野蘭山は「本草綱目臨蒙」にて百薬煎と阿仙薬を同一とした[10]

名称

なお、阿仙薬の名称は日本独自のもので、古い和書では阿煎薬と称するが、中国では児茶[4]、孩児茶[7]と呼ぶ。インドではカッターやカイル。サンスクリット語ではカディラと呼ぶ[11]

脚注

参考文献

外部リンク

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