電子移動度
From Wikipedia, the free encyclopedia
定義
電気伝導率との関係
電気伝導率 は、キャリア密度を とすると と表される[3]。単一のキャリアのみが伝導に寄与する系では、この関係式から移動度を直接算出できるが、複数のキャリアが寄与する系では、伝導率テンソルを用いた解析が必要となる。
2キャリアモデルの導出
半導体や半金属のように、電子(密度 、移動度 )と正孔(密度 、移動度 )が共存する系において、磁場 を印加した際の輸送現象は2キャリアモデルによって記述される。磁場が印加された際の、単一キャリアの伝導率テンソル成分は、運動方程式の定常解から次のように得られる。ここでは便宜上、電子の電荷を と定義する。
正孔(電荷 )の寄与を加え、系全体の伝導率テンソル成分をそれぞれの和として構成すると、全体の縦伝導率 およびホール伝導率 は以下の通りに定式化される[4]。
実測されるホール抵抗率 は、テンソル変換式 によって算出される。低磁場極限()において、分母の磁場依存項を無視できる近似を用いると、ホール係数 は次のように導出される。
この結果は、キャリア密度が等しい補償型の物質()であっても、電子と正孔の移動度に差があればホール係数は有限の値を持ち、より高い移動度を持つキャリアの符号が支配的になることを示唆している。
移動度の制限要因
ホール移動度とドリフト移動度
定義上の移動度(ドリフト移動度)と、ホール効果の測定から算出されるホール移動度 は、厳密には区別される。両者の比はホール因子 と呼ばれ、散乱機構の統計的性質を反映して次のように定義される[6]。
ホール因子は通常 1.0 から 1.5 程度の値をとる。高精度な物性評価においては、この因子の影響を考慮してキャリア密度や移動度の補正が行われる。