麻酔中のアレルギー
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疫学
2009年、麻酔専門誌Anesthesiology誌の報告では、アナフィラキシーの発生率は麻酔症例10,000-20,000件に1件と推定されている[3]。日本では、2012-2016年の間に400例の周術期のアナフィラキシーショックが報告され、発生頻度は10万例中4.41例であった[4]。400例中、心停止は11例、死亡は4例であった[4]。原因薬物に関しては、フランスでの解析では、上位3位が、神経筋遮断薬 61.6%、ラテックス 16.6%、抗生物質 8.3%で占められていた[4]。リスク因子は、男性、肥満、緊急手術、高血圧、心血管疾患、β遮断薬服用であり、これらが揃っている患者は非常にリスクが高い[4]。
術中診断

迅速な治療を成功させるためには、迅速な診断が必要である[5]。診断は、低血圧、じんましん、喘鳴、発疹、目の周囲や口やのどの腫れ、呼吸困難などの症状の認識によって行われる[6]。しかしながら、全身麻酔中は患者には意識が無いために、患者の主訴が乏しい上に、覆布などで身体が覆われており、皮膚所見が気付かれにくい[7]。よって、成人の重症アレルギー、すなわちアナフィラキシーの5割は、血圧低下、循環虚脱、心停止で気付かれる[7]。小児の場合は、咽頭・喉頭浮腫、気管支痙攣などの呼吸器症状で気付かれることが多い[7]。周術期のアナフィラキシーの90%は麻酔導入時に発症し、そのタイミングは通常、抗原暴露から30分以内であるものの、数秒から数分で急激に悪化することもある[8]。発症時早期のトリプターゼ、ヒスタミンの血液検査は診断の補助となる[9]。
予防
治療
アナフィラキシーと診断したら、心肺蘇生に準じた治療が必要となる[12]。すなわち、気道確保、呼吸管理、循環管理である。被疑薬剤・物質は速やかに投与を中止する[13]。下肢を挙上し(トレンデレンブルク体位)、静脈路を確保し、十分な輸液を行う。重篤な血圧低下に対しては、厳重なモニター(心電図、血圧計、パルスオキシメータなど)の上で、第1選択薬である、アドレナリン0.2µg/kgを静脈内投与する。静脈路がなければ、0.3mgを筋肉注射する[12]。この投与量、投与経路は日本麻酔科学会のガイドラインの推奨だが、日本アレルギー学会はアドレナリン0.01mg/kg(最大0.5mg)の大腿中央への筋肉注射を推奨している[14][注釈 3]。副腎皮質ホルモンや抗ヒスタミン薬は第2選択薬であり、それぞれアナフィラキシーの遷延化や、アナフィラキシーで体内に放出されたヒスタミンによる有害作用を軽減できるが、これら単独では救命できない[12]。アドレナリンは、上気道閉塞、蕁麻疹や血管性浮腫、下気道閉塞、低血圧、そしてショックの症状を緩和できる[15]。心停止に至れば胸骨圧迫も行う[注釈 4][16]。患者の状態が安定したら、24時間の厳重な経過観察が必要である[13]。
術後診断
局所麻酔薬によるアレルギー

局所麻酔薬によるアレルギーは稀である[20]。局所麻酔薬による有害作用がしばしば、局所麻酔薬によるアレルギーと誤解されている[21]。局所麻酔薬による有害作用(アレルギーではない)は0.5-26%の範囲で生じているが、歯科における非盲検前向き研究において、有害作用が報告された5018人にアレルギーは無く、ドイツの歯科医を対象としたアンケートでは、有害作用は4.5%が経験したものの、アレルギーは1%未満であった[20]。最も多く報告された有害作用は、めまい、頻脈、動悸、および発汗であった[20]。一方、局所麻酔薬による、アレルギー性接触性皮膚炎は、比較的起こりやすく、発生率は2-3%とされる[20]。非アレルギー性の有害作用の多くの原因は、局所麻酔薬の毒性、血管迷走神経反射、不安、そして局所麻酔薬に添加されている血管収縮薬(アドレナリン)などの副作用である[20]。
