火星18
北朝鮮による大陸間弾道ミサイル
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火星18(朝鮮語表記:화성포-18、Hwasong-18、ファソン18)は、朝鮮民主主義人民共和国の固体燃料大陸間弾道ミサイル (ICBM) である。 [3]
このミサイルは、北朝鮮で開発された最初の固体燃料ICBMであり、2023年2月8日の、朝鮮人民軍設立75周年記念の軍事パレードにおいて初公開された。最初の発射試験は、2023年4月13日に行われた。
概要
2023年4月13日に最初の発射試験が行われ、翌14日に朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、昨日発射したミサイルは新型の固体燃料ICBM「火星砲-18」であると発表した。試験には金正恩総書記が立ち会った。「今回の試験発射は、周辺国家の安全と(北朝鮮)領内飛行中の多段ロケット分離の安全性を考慮して、第1段ロケットは標準弾道飛行方式で、第2、3段ロケットは高角発射方式(ロフテッド軌道)に設定」したと主張した [4]。
同日、北朝鮮国営・朝鮮中央テレビが試験の模様を動画で公開した [5] [6] [7]。 動画によれば、火星18は固体燃料3段式ミサイルであり、9軸の輸送起立発射機 (TEL)からキャニスター・コールドローンチ方式で垂直発射される [3] [8][9]。
画像から判断して、全長は25m、胴体直径は2.1mと見積もられており、全重量(離陸重量)は55~60トンと推定されている。 [10] [11]
このミサイルは、北朝鮮にとって初の固体燃料を使用した大陸間弾道ミサイルであり、その噴煙からコンポジット系固体燃料推進薬が使用されていると推定されている [7]。 固体燃料の使用は、先行型の液体燃料ミサイルのように、燃料注入に数時間を要することは無く、また発射のための多数のサポート車両も必要としないため、発射に対する先制攻撃をより困難にする。 [9] [12]
このミサイルはMIRV (複数個別誘導再突入体)核弾頭を搭載可能である。 [11]
2023年7月12日の発射試験の公開情報は、火星18の射程距離が15000㎞であることを暗示しており、これは北米大陸の任意の地点に到達可能であることを意味する。 [13]
軍事専門家のJeffrey Lewisによれば、火星18のエンジン推力は980kN(100トン)である。 [14]
北朝鮮国営メディアは、火星18を、朝鮮人民軍戦略軍の「将来的基幹手段」であり「最も強力で基幹的・基本的手段」であると呼んだ。 [15]
また、2024年10月31日の火星19の最初の発射試験の翌日、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、火星19の試験成功を伝えるとともに、火星19は火星18とともに「国家の安全を確実に守る第一の核心主力手段」になると強調した。 [16] [17]
火星18の第1段と第2段は、2024年4月2日に最初の発射試験が行われた火星16B中距離弾道ミサイル(IRBM)、および、2024年1月14日に最初の発射試験が行われた、機動再突入体(MaRV)を搭載したIRBM (公式名称が公表されていないが、火星16Aと推定されている)のブースター(第1段と第2段)としても使われている。 [18] [19] [20]
ドイツの専門家、Norbert Brügge によれば、火星18は小型衛星を軌道に投入できるローンチ・ヴィークルとしても使用可能であろうとしている。 [21]
ロシアのICBM、RT-2PM2 トーポリMとの関連
マサチューセッツ工科大のセオドア・ポストル名誉教授は、現代ビジネスのインタビューで火星18はロシアのトーポリMと「本質的に同じミサイル」としており [22] 、戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書でもポストルは同様の指摘をした [23] 。またポストルはウクライナ侵攻を機に「ロシアは、米国に重大な安全保障上の脅威をもたらす可能性のある国に、高度な長距離ロケット技術を提供しないという約束を破った」と語った[22]。現代ビジネスの連載で朝日新聞外交記者の牧野愛博は、「北東アジアの安全保障を巡る危機は更に深刻な状態に陥った」と指摘し [22] 、また「NPT体制を破壊する行為」だと指摘した [24]。
一方アメリカのジェームズ・マーティン不拡散研究センターはCSISの報告書に、「『トーポリM』と『ヤルス』を取り違えるなどの事実誤認があると指摘」 [23] 。ヨーロッパのミサイル専門家のマルクス・シラーはCSISの報告書の間違いに「同意しながらも」、「ロシアの関与の可能性を示す兆候を覆い隠してはならない」とした [23]。
実際、火星18の発射シーンの動画 [25] と、トーポリMの発射シーンの動画 [26] を比較すると、酷似していることが分かる。
日本の軍事評論家のJSFは、火星18とトーポリMの形状がよく似ているのは確かだが、これは要求される性能を満たすために、必然的に似た設計となった可能性が有り、この二つとアメリカのICBM、ミニットマンⅢもかなり似ている。また、コールドローンチのタイミングなど、細かい点で火星18とトーポリMには無視できない相違があり、火星18がトーポリMのコピーとまでは言えないとしている。 [27]
沿革
初期の固体燃料ICBMの計画
2017年4月の軍事パレードにおいて、北朝鮮は2つのタイプのミサイル・キャニスターを展示した。このキャニスターは固体燃料ICBMを含む固体燃料ミサイル・プロジェクトの存在を示している可能性があった。 [28]
北朝鮮の指導者、金正恩は、2021年1月に、最初に固体燃料ICBMの開発が、兵器開発5ヵ年計画に組み込まれたことに言及した。 [29] [30]
2022年12月に、140トンの推力を発生する固体燃料ロケットモーターの地上固定試験が実施された。 [31]
火星18の公開
火星18は、2023年2月8日の、朝鮮人民軍設立75周年記念の軍事パレードにおいて初公開された。4両の9軸TELが固体燃料ICBMとおぼしきものを運搬していたが、テレビ・アナウンサーはこれらを、火星級ミサイルと呼ぶだけで、公式名称には触れなかった。これらのミサイルはキャニスターに詰められており、発射時には、噴射がキャニスターにダメージを与えないように、第1段の点火に先立ち、コールドローンチ方式でキャニスターから射出される。このモデルは、先行する北極星5号固体燃料SLBMとは、明らかに異なったデザインである。 [10] [15] [32] [33]
火星18の最初の発射試験は、2023年4月13日に行われた。 [34] [35] 第1段は、飛行距離を最大化する最小エネルギー軌道に従っていたが、第2段と第3段は機首上げ機動を行い、強いロフテェッド軌道に入っていた。この特異的な飛行経路により、第1段が燃焼終了した段階で、自衛隊のレーダーは対象を喪失し、第2段以降が日本の本州を飛び越えるか、北海道に着弾する恐れがあるとしてJアラートが発令されている [4] [36]。 翌14日に、金正恩総書記が立会いの下で、13日に発射した事実を北朝鮮国営メディアが報じた [5]。
2023年7月12日に、北朝鮮は火星18の第2回の発射試験を実施し、それまでの北朝鮮のミサイル試験における遠地点高度と飛行時間の記録となる、75分間弱および6648kmを記録した [13]。 翌13日に朝鮮労働党機関紙である労働新聞が再び金正恩の立ち会いのもとで発射実験を行ったと報じた [37]。 [9] [12]
7月12日の試験後、北朝鮮は、2023年7月27日の軍事パレードで火星18を展示した。 [38]
これらに続く第3回の発射試験は、2023年12月18日に実施された。この試験と北朝鮮による「ICBM部隊の発射演習」という位置づけは、火星18が実戦配備の状態にあることを確証しているように見える。 [39]
2024年1月5日、朝鮮中央通信は金正恩が弾道ミサイルの輸送起立発射機製造工場を視察する様子を報道。背後に火星18を運搬する輸送起立発射機が写っていることが確認された[40]。
各国の対応
日本 - 初回発射直後、松野官房長官は「国連安保理の緊急会合の開催を要請し、調整している。北朝鮮によるたび重なる決議違反に対し、安保理が行動できていないことは大変遺憾だ」と述べた
[5]。
大型の発展型モデル
火星18の大型の発展型である火星19は、2024年10月31日に最初の発射試験が実施され、翌日、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、最新型の「火星19」の発射試験に成功したと写真付きで公表した。 [41] [42] [43] [44] また同日、北朝鮮国営・朝鮮中央テレビは、発射試験の模様を動画で伝えた。 [45] [46]
試験リスト
| 試番 | 日付 (平壌時間) | 位置 | 発射前の発表 | 結果 | 補足 | 参照 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2023年4月13日 07:22 | チンダルレレジデンス、平壌市江東郡 | 無し | 成功 | 火星18の第1回の試験であり、最高高度は約3000km、水平飛行距離は約1000kmであった。
北朝鮮国営メディアによれば、この発射試験は近隣国の安全に何ら打撃を与えるものではないとしている。 |
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| 2 | 2023年7月12日 | チンダルレレジデンス、平壌市江東郡 | 無し | 成功 | 火星18の第2回の発射試験では、ミサイルは74分51秒飛行し、最高高度は6648km、水平飛行距離は1001.2kmであった。
金正恩が試験に立ち会った。 |
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| 3 | 2023年12月18日 | 平壌東部 | 無し | 成功 |
火星18の第3回の試験では、73分間飛行し、最高高度は6518.2km、水平飛行距離は1002.3kmであった。 朝鮮中央通信(KNCA)は、この発射は、アメリカ合衆国の潜在的敵対性に対する、北朝鮮の核抑止力の即応性を確認する為のものであると述べた。 金正恩と娘の金主愛が試験に立ち会った。 |