212A型潜水艦
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212型潜水艦(ドイツ語: U-Boote der Klasse 212)は、ドイツが開発したAIP搭載通常動力型潜水艦。
| 212A型潜水艦 | |
|---|---|
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| 基本情報 | |
| 種別 | 攻撃型通常動力潜水艦 |
| 建造所 |
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| 運用者 |
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| 建造期間 | 1999年 - |
| 就役期間 | 2005年 - |
| 建造数 | 10隻 |
| 前級 |
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| 次級 | 最新 |
| 要目 | |
| 基準排水量 | 1,460トン |
| 軽荷排水量 | 1,370トン |
| 水中排水量 | 1,870トン |
| 全長 | 57.15 m |
| 最大幅 | 7 m |
| 吃水 | 6 m |
| 機関 | ディーゼル・エレクトリック方式+燃料電池式AIP |
| 主機 | PERMASYN電動機×1基 |
| 推進 | ハイスキュー・プロペラ×1軸 |
| 出力 | 2,400 shp |
| 電源 | |
| 最大速力 |
水上: 12ノット 水中: 20ノット |
| 航続距離 |
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| 乗員 | 士官5名+曹士22名 |
| 兵装 | |
| C4ISTAR | MSI-90U Mk.2情報処理装置 |
| レーダー | 1007型 対水上捜索用 |
| ソナー | CSU-90 統合式 |
| 電子戦・ 対抗手段 | FL-1800U ESM |
来歴
ドイツ潜水艦の復興
建国直後の西ドイツは軍備を禁止されていたが、1954年にパリ協定に調印して北大西洋条約機構(NATO)・西欧同盟(WEU)に加盟するとともに、再軍備が認められた[1][2][3]。ただしこの際、保有できる軍備については制限が付され[1]、潜水艦については個艦の排水量を350トン以下とするように求められた[2][4]。しかしこの制約の下では所定の性能を達成することは困難であり、1961年のベルリンの壁建設など緊張の高まりもあって、1962年10月19日には450トンに引き上げられ、1963年10月9日には6隻について1,000トンまで許容されることになり、1973年には上限自体が1,800トンに緩和された[1]。
西ドイツにおいては、1955年3月8日より潜水艦隊整備についての検討が着手されており、1962年からは201型潜水艦(水中排水量433トン)、同年にはその船体素材を変更するとともに性能も向上させた205型潜水艦(水中排水量450トン)、1973年からは更に発展させた206型潜水艦(水中排水量500トン)が、順次に配備されていった[2][3]。
排水量制限と連邦海軍の想定任務とを踏まえて、これらはいずれもバルト海を西進してくるソ連海軍の要撃任務を想定した小型潜水艦とされた[3]。一方で、ドイツで建造される潜水艦であっても他国向けであれば排水量制限の対象外であり、また多様な顧客の要望に答える必要もあって、206型と並行して建造されていた輸出専用の209型潜水艦では、水中排水量1,207 - 1,810トンとかなり大型化していた[3]。
206型後継艦計画の変遷
西ドイツにおいては、1970年代より、208型潜水艦の研究開発が進められていた[5]。これは燃料電池を搭載した1,000トン級潜水艦とされ、当初は燃料電池単独、後には従来型電池との併用とされたものの、技術的な不安を払拭できず、1980年代半ばにキャンセルされた[5]。
かわって計画されたのが211型であり、ノルウェー海軍向けに西ドイツで建造された210型潜水艦(ウーラ級)をベースに、新型の統合型ソナーなど装備を充実させる一方、機関は従来型の電池潜水艦とされていた[2][5]。NATOでの役割拡大もあって船型は1,450トン級に大型化し、1991年より6隻を建造する予定であったが、大型でコストが嵩み、206型の206A型への改修が進展したこともあって、1987年に計画は打ち切られた[2][5]。
これを受けて、206型後継艦の計画は再び燃料電池と従来型電池との併用方式に立ち返り[5]、1988年からは212型潜水艦の検討が開始された[6]。コスト抑制のため211型よりも艦型を圧縮することが求められた一方、211型向けに開発された新技術を盛り込むことも求められ[2]、大西洋での運用もある程度想定されていたことから、初期計画では、水上排水量800トン・水中排水量1,200トン級とされていた[7][8]。その後、1990年のドイツ再統一、1991年のソビエト連邦の崩壊を受けて、ドイツ海軍に課せられていた潜水艦の排水量などの諸制限は解除された[3]。1992年には、ティッセン・ノルトゼーヴェルケ(TNSW)とホヴァルツヴェルケ=ドイツ造船(HDW)の共同事業体であるARGE 212が、インジェニエーアコント・リューベック(IKL)の協力を受けて、水中排水量1,830トンの設計案を完成させた[9]。1994年には4隻の建造予算が承認され、最終的には12隻を建造する計画とされた[7]。
一方、イタリア海軍は、サウロ級潜水艦の後継艦として、フランスとの共同開発技術を組み込んだ水中排水量2,780トンのS90型潜水艦の建造を計画していたものの、その建造予算は議会の承認を得られず、1994年末に計画中止が決定された[10]。これを受けてイタリア海軍は212型の導入に方針変更し、まずライセンス生産、1995年末には共同開発についての合意が締結された[10][11]。ドイツ海軍とイタリア海軍の要求事項に差異があり、仕様が大きく変更されたことから、型式名も212A型に変更された[3]。
212A型
設計
船体
上記の経緯から、206型と比べて、水上排水量にして3倍以上と大型化し、艦容も、201型を端緒とする従来の戦後ドイツ潜水艦とは一変した[12]。耐圧殻の素材はタイプ1.3964オーステナイト系ステンレス鋼で、船体構造は、前部を単殻、後部を複殻とする部分複殻構造である[9][6][注 1]。船型は理想的な涙滴型に近いスマートな流線型となっており[5]、水中放射雑音の原因となる乱流を抑制するため、セイルと船体は滑らかなラインで一体化されている[13]。発射管区画がある艦首部が一番太く、艦尾に行くほど細くなるという独特な形態であり、発射管区画と発令所では、船殻直径は約1メートルの差がある[12]。なお後期建造艦2隻ではセイルを大型化し、特殊部隊員4名を収容可能なロックアウトチェンバーや装備用の外部船体マウントなどが設置された[3]。
潜舵は、前舵はセイルプレーン、後舵はX字配置である[9][6]。ドイツ潜水艦としてX字配置を採用したのは初、また新造時からセイルプレーンを採用したのも初の例である[14][12]。後舵をX字配置とすることには、操縦性や抗堪性の向上といった効果がある[12]。
当初の212型の計画時点で、バルト海での運用に適する深度制御性能が重視されていたことから、水中排水量1,800トン以上という大きさにも関わらず、水深25メートル程度の海域でも十分に運用可能な設計となっていた[3]。一方、イタリア海軍は地中海や大西洋での運用を想定しており[3]、行動期間も比較的長かった[10]。212A型はこれらの要求を反映した結果、世界のどの海でも運用可能な、汎用性が高い潜水艦となった[3]。
- HDW造船所で建造中のU32。特徴的なセイルの成形がよく分かる。
- 212A型潜水艦の側面図
機関
本型の最大の特徴は、従来のディーゼル・エレクトリック方式に加えて、非大気依存推進(AIP)システムを搭載したことにある[3][7]。ドイツでは、1987年11月より205型潜水艦「U1」においてAIPの試験を行っており[7]、本型では、シーメンス社製の固体高分子形燃料電池(PEM)を用いて出力34キロワットのシステムを9基搭載する[6]。これにより、排気熱をほぼ発することなく、最大3週間にわたって潜航状態での行動を継続できる[3]。燃料電池のための酸素は液体酸素、水素は水素吸蔵合金を使用して保有している[7]。艦内への漏洩リスクを低減するため、これらは、複殻構造をとっている船体後部において、内外殻間に配置された金属製のタンクに収容されている[9][13]。
ディーゼルエンジンとしてはMTU 16V 396 SE84を1基搭載しており[9]、発電機の出力はそれぞれ1,040キロワットとされる[6]。電動機はシーメンス社製で、PERMASYN(Permanent Magnet Synchronous)永久磁石同期電動機を搭載しており、出力3,875馬力を発揮できる[9][6]。なお二次電池としては高エネルギーのナトリウム・硫黄電池を用いている[9]。
装備
潜水艦情報処理装置としてはMSI-90U Mk.2を搭載した[6]。これはウーラ級潜水艦で搭載されたMSI-90Uの発展型であり、同時に25個の目標を追尾して、8本の魚雷を統制可能とされる[6]。後期建造艦2隻では性能向上型が搭載されたともいわれる[9][6]。
ソナーとしては、統合型のCSU-90を搭載した[6]。これは、艦首に中周波の円筒形アレイ(CAS)であるDBQS-40(アクティブ・パッシブ両用)を備えるほか、船体側面の平面アレイ(FAS-3)、曳航式のTAS-3、更にPRS-3-15パッシブ測距アレイやFMS-52機雷探知アレイ、AN-5039A1逆探アレイ(CIA)などを統合したものであり[6]、前任の206型では艦首の中周波ソナーとパッシブ測距ソナーしか持たなかったのと比べて、格段に能力が向上している[7]。なお艦首アレイは船体下方、機雷探知アレイは発射管の上方、逆探アレイはセイル上面の艦尾側に配置されている[12]。また後期建造艦2隻では、セイルの大型化に伴い、こちらにもソナーアレイが設置されているとも言われる[3]。
カール・ツァイスSERO-40潜望鏡システムを備えており、これは捜索用のBS-40と攻撃用のAS-40から構成される[6]。BS-40には光学測距儀とGPSアンテナも設置されている[6]。またFL-1800U電波探知装置のUSK800/4アンテナにも、2つ目のGPSアンテナが設置されている[6]。なお後期建造艦2隻では、潜望鏡を非貫通型のOMS-100に変更したといわれる[9][6][12]。
魚雷発射管は、前任の206型では8門を備えていたのに対し、本型では6門に減少した[7]。ただし206型では発射管に装填する形でしか兵装を搭載できなかったため、魚雷の搭載数は8本に限られたのに対し、本型では再装填機構を備え、12本搭載可能となった[7]。発射方式は水圧式である[9][6]。魚雷としては、光ファイバーによる有線誘導に対応したDM2A4 ゼーヘヒトが用いられる[7]。DM2A4魚雷は、水平方向200度・垂直方向48度と極めて広いソナー探知範囲を有する上に、これによって得た情報を光ファイバーを介して潜水艦に送信できるため、潜水艦はその情報を踏まえて目標を選択して攻撃を指示でき、船舶が輻輳した状況下での攻撃や、敵船団内の高価値目標への優先攻撃などが可能となる[7]。なお本型の魚雷発射管は、左舷側に偏った非対称の設置方式が採用された[6]。
2025年6月、ドイツ連邦軍はティッセンクルップ・マリン・システムズ社に対して、212A型6隻の近代化改修を発注した[15]。改修内容は潜水艦の中核システムの近代化で、特に最初の4隻の古い航法システムと、指揮および武器システムの改修に重点が置かれている[15]。
同型艦一覧
| 国名 | # | 艦名 | 建造所 | 起工 | 進水 | 就役 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| S181 | U-31 | HDW | 1998年 7月1日 |
2002年 3月20日 |
2005年 10月19日 | |
| S182 | U-32 | ノルトゼーヴェルケ | 2000年 7月11日 |
2003年 12月4日 |
2005年 10月19日 | |
| S183 | U-33 | HDW | 2001年 4月30日 |
2004年 9月 |
2006年 6月13日 | |
| S184 | U-34 | ノルトゼーヴェルケ | 2001年 12月 |
2006年 7月 |
2007年 5月3日 | |
| S185 | U-35 | HDW | 2007年 8月21日 |
2011年 11月15日 |
2015年 3月23日 | |
| S186 | U-36 | 2008年 8月19日 |
2013年 2月6日 |
2016年 10月10日 | ||
| S526 | サルヴァトーレ・トーダロ Salvatore Todaro |
フィンカンティエリ ムッジャーノ造船所 |
1999年 7月3日 |
2003年 11月6日 |
2006年 6月29日 | |
| S527 | シレ Sciré |
2000年 5月27日 |
2004年 12月18日 |
2007年 2月19日 | ||
| S528 | ピエトロ・ヴェヌーティ Pietro Venuti |
2009年 12月9日 |
2014年 10月9日 |
2016年 7月6日 | ||
| S529 | ロメオ・ロメイ Romeo Romei |
2012年 | 2015年 7月4日 |
2017年 5月11日 |
212CD型
2017年、ノルウェーは、ウーラ級潜水艦の後継として212型の発展型を採用することを決定した[7]。2021年には、この発展型は6隻を建造して、4隻をノルウェー海軍が、また2隻をドイツ海軍が取得することとなった[7]。このように両国が共通設計の潜水艦を導入することから、この発展型は212CD(Common Design)型と称されることになった[7][16]。
212CD型は、船体構造を完全複殻構造としたことで、船体のサイズはかなり大型化し、水中排水量は約1,100トン増大した[7]。外殻は傾斜を付された平面的な形態となっており、アクティブ・ソナーの音波を受けた際に、音響信号を上方または下方に角度を変えて反射するようにしてターゲット・ストレングスを低減することを狙っている[7]。
ディーゼル・エレクトリック方式に燃料電池AIPを併用するという機関方式そのものは212A型と同様だが、大型化に伴い、ディーゼルエンジンは2基に増やされた[7]。またヨーロッパ潜水艦として初めて、リチウムイオン二次電池が搭載されることになっている[7]。
装備の面では、非貫通型潜望鏡(光学マスト)の採用が決定されているほか、IDAS対空・対艦ミサイルの搭載も予定されている[7]。