CD38

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CD38(cluster of differentiation 38)は、CD4細胞CD8細胞B細胞NK細胞など多くの免疫細胞(白血球)の表面に存在する糖タンパク質である[5]。cyclic ADP-ribose hydrolase 1としても知られる。細胞接着シグナル伝達カルシウムシグナリングにも機能する[6]

PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
記号CD38, ADPRC1, ADPRC 1, CD38 molecule
概要 PDBに登録されている構造, PDB ...
CD38
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

4TMF, 1YH3, 1ZVM, 2EF1, 2HCT, 2I65, 2I66, 2I67, 2O3Q, 2O3R, 2O3S, 2O3T, 2O3U, 2PGJ, 2PGL, 3DZF, 3DZG, 3DZH, 3DZI, 3DZJ, 3DZK, 3F6Y, 3I9M, 3I9N, 3OFS, 3RAJ, 3ROK, 3ROM, 3ROP, 3ROQ, 3U4H, 3U4I, 4CMH, 4F45, 4F46, 4OGW, 4XJS, 4XJT, 5F1K, 5F1O, 5F21

識別子
記号CD38, ADPRC1, ADPRC 1, CD38 molecule
外部IDOMIM: 107270 MGI: 107474 HomoloGene: 1345 GeneCards: CD38
EC番号2.4.99.20
遺伝子の位置 (ヒト)
4番染色体 (ヒト)
染色体4番染色体 (ヒト)[1]
4番染色体 (ヒト)
CD38遺伝子の位置
CD38遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点15,778,275 bp[1]
終点15,853,232 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
5番染色体 (マウス)
染色体5番染色体 (マウス)[2]
5番染色体 (マウス)
CD38遺伝子の位置
CD38遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点44,025,895 bp[2]
終点44,069,717 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 トランスフェラーゼ活性
hydrolase activity, acting on glycosyl bonds
NAD(P)+ nucleosidase activity
加水分解酵素活性
NAD+ nucleotidase, cyclic ADP-ribose generating
NAD+ nucleosidase activity
phosphorus-oxygen lyase activity
identical protein binding
細胞の構成要素 integral component of membrane

細胞内膜で囲まれた細胞小器官
cell surface
エキソソーム
細胞核
細胞膜
basolateral plasma membrane
secretory granule membrane
生物学的プロセス B cell receptor signaling pathway
response to cytokine
エストラジオールへの反応
response to interleukin-1
低酸素症への反応
response to retinoic acid
positive regulation of cytosolic calcium ion concentration
response to progesterone
female pregnancy
negative regulation of apoptotic process
ヒドロペルオキシドへの反応
positive regulation of transcription, DNA-templated
positive regulation of cell growth
positive regulation of B cell proliferation
positive regulation of vasoconstriction
長期抑圧
apoptotic signaling pathway
ホルモンへの反応
negative regulation of transcription, DNA-templated
シグナル伝達
positive regulation of insulin secretion
negative regulation of bone resorption
NAD metabolic process
positive regulation of cell population proliferation
negative regulation of neuron projection development
artery smooth muscle contraction
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001775

NM_007646

RefSeq
(タンパク質)

NP_001766

NP_031672

場所
(UCSC)
Chr 4: 15.78 – 15.85 MbChr 4: 44.03 – 44.07 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス
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ヒトでは、CD38は4番染色体英語版に位置するCD38遺伝子にコードされている[7][8]。CD38はCD157英語版パラログであり、その遺伝子もまた4番染色体(4p15)に位置している[9]

歴史

CD38は1980年にT細胞の表面マーカー(CD抗原)として初めて同定された[10][11]。1992年、CD38はB細胞、単球、Nk細胞の表面マーカーとしても記載された[10]。また同時期に、CD38は単に細胞種のマーカーであるわけではなく、B細胞とT細胞の活性化因子であることが発見された[10]。1992年にはCD38の酵素活性も発見され、カルシウムの放出を誘導するセカンドメッセンジャーである環状アデノシン二リン酸リボース(cADPR)やニコチン酸アデニンジヌクオチドリン酸英語版(NAADP)の合成能を有することが示された[10]

組織分布

CD38は形質細胞に最も高頻度でみられ、NK細胞、B細胞とT細胞、そしてその他のさまざまな細胞種の順に続く[12]

機能

CD38は受容体もしくは酵素として機能する[13]。受容体としては、CD38はT細胞表面のCD31に結合し、これらの細胞を活性化してさまざまなサイトカインの産生をもたらす[13]。CD38の活性化はTRPM2英語版チャネルと協働し、細胞体積の調節などの生理的応答を開始する[14]

CD38は多機能酵素であり、NADからADPリボース(97%)とcADPR(3%)への合成を触媒する[15][16]。CD38はNAD濃度の主要な調節因子であると考えられている。そのNAD分解活性はADPリボシルシクラーゼとしての機能よりもはるかに高く、100分子のNADのADPリボースへの変換につき1分子のcADPRが生成される[15][17]ニコチン酸が酸性条件下で存在する場合には、CD38はNADP+をNAADPへ加水分解する[15][18]

これらの反応産物は、細胞内のCa2+濃度の調節に必要不可欠である[19]。CD38は細胞表面の細胞外酵素として存在するだけでなく、細胞膜内面で細胞質基質に向かって同様の酵素機能を果たす[20]

CD38は、cADPRの産生によって、脳内での神経伝達物質の放出を制御している、もしくは影響を及ぼしていると考えられている[21]。脳内のCD38は親密さをもたらす神経ペプチド英語版であるオキシトシンの放出を可能にする[22]

CD38と同様に、CD157もADPリボシルシクラーゼファミリーのメンバーであり、NADからcADPRの形成を触媒する。ただし、CD157の触媒活性はCD38よりもかなり弱いものである[23]SARM1英語版もNADからcADPRの形成を触媒する酵素であり[20]、CD38よりもはるかに効率的にcADPR濃度を上昇させる[24]

臨床的意義

CD38の機能喪失は、免疫応答不全、代謝異常、そしておそらく自閉症と関係した社会性記憶障害などの行動変容と関係している[19][25]

内皮細胞上のCD31はNK細胞上のCD38に結合し、これらの細胞を内皮に接着させる[26][27]。また、白血球上のCD38は内皮細胞上のCD16英語版に結合し、白血球の血管壁への結合、そして血管壁の通過を可能にする[9]

サイトカインIFN-γグラム陰性菌細胞壁の構成要素であるリポ多糖は、CD38のマクロファージ上での発現を誘導する[27]。IFN-γは単球上でのCD38の発現も強力に誘導する[19]TNFは気道の平滑筋細胞上にCD38を誘導し、cADPRを介してカルシウムシグナルを誘導することで異常な収縮を高めて気管支喘息を引き起こす[28]

CD38は細胞の活性化のマーカーであり、HIVの感染、白血病、骨髄腫[29]、固形腫瘍、2型糖尿病、骨代謝の異常、そして一部の遺伝疾患と関係している。

CD38は気道収縮の過敏性反応を高める。CD38は気管支喘息患者の肺で増加しており、気道平滑筋の炎症応答を増幅している[16]

CD38発現の上昇は慢性リンパ性白血病の予後不良のマーカーであり、疾患の進行の加速と関係している[30]

CD38はインフルエンザ感染時に形質細胞様樹状細胞英語版(pDC)でアップレギュレーションされていることがin vivoで示されており、CD38を遮断することでpDCによるI型インターフェロンの産生が妨げられることin vitroで示されている[31]

臨床応用

CD38阻害剤は、気管支喘息の治療薬となる可能性がある[32]

CD38は白血病の予後マーカーとして利用されている[33]

ダラツムマブはCD38を標的とする薬剤であり、多発性骨髄腫の治療に利用されている[34][35]

CD38は赤血球の表面でも弱く発現しており、ダラツムマブは輸血前検査に干渉する場合がある。赤血球抗原に対する不規則抗体のスクリーニングアッセイや直接抗グロブリン試験では、ダラツムマブの使用によって偽陽性の結果が出る場合がある[36]。赤血球をジチオスレイトール(DTT)による前処理を行うか、DaraExなどの抗CD38抗体中和試薬を用いることで防ぐことができる。

阻害剤

老化研究

CD38の増加は、加齢に伴うNADの減少との関係が示唆されている[51][52]。CD38特異的阻害剤であるCD38-IN-78cで処理した老齢マウスでは、加齢に伴うNADの減少が防止された[53]。CD38ノックアウトマウスではNAD濃度は2倍となり、また加齢に伴うNADの減少に対する抵抗性を示し[54]、主要器官(肝臓、筋肉、脳、心臓)でNAD濃度が劇的に上昇する[55]。一方、CD38過剰発現マウスでは、NADの減少とミトコンドリア機能不全がみられる[54]

加齢に伴うCD38発現の上昇とNADの減少は、主にマクロファージによるものであると考えられている[56]。マクロファージの細胞老化はCD38の発現を高める[56]内臓脂肪やその他の組織に対する加齢に伴うマクロファージの蓄積は、慢性炎症の原因となる[57]。炎症性転写因子であるNF-κBとCD38は相互に活性化しあう[56]。老化細胞からの分泌物はマクロファージでのCD38の高レベルでの発現を誘導し、加齢に伴うNADの減少の主要な原因となる[58]

脳におけるNADの減少はアストロサイトミクログリアでのCD38の増加が原因である可能性があり、神経炎症神経変性につながっている可能性がある[21]

出典

関連文献

外部リンク

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