Wikiwand AI

DeepSeek

中国の人工知能(AI)開発企業 From Wikipedia, the free encyclopedia

DeepSeek(ディープシーク、簡体字: 深度求索; 拼音: Shēndù Qiúsuǒ)は、大規模言語モデルを開発している中国人工知能研究所である。DeepSeekは、中国のヘッジファンド幻方量化英語版中国語版」による資金提供を主に受けており、両者とも浙江省杭州市を拠点とする梁文鋒英語版中国語版によって設立・運営されている。

現地語社名
杭州深度求索人工智能基础技术研究有限公司
ラテン文字名
Hangzhou DeepSeek Artificial Intelligence Co., Ltd.[1]
種類
非公開会社
業種 情報技術 ウィキデータを編集
概要 現地語社名, ラテン文字名 ...
杭州深度求索人工智能基础技术研究有限公司
現地語社名
杭州深度求索人工智能基础技术研究有限公司
ラテン文字名
Hangzhou DeepSeek Artificial Intelligence Co., Ltd.[1]
種類
非公開会社
業種 情報技術 ウィキデータを編集
設立 2023年7月17日(3年前) (2023-07-17)
創業者 梁文鋒英語版中国語版
本社 杭州市拱墅区环城北路169号汇金国际大厦西1幢1201室
主要人物
梁文锋
製品 DeepSeek
ウェブサイト deepseek.com ウィキデータを編集
テンプレートを表示
閉じる
概要 提供元, 種別 ...
閉じる
概要 開発元, 対応OS ...
DeepSeek - AI アシスタント
開発元 DeepSeek
対応OS Android, iOS
ライセンス プロプライエタリ
公式サイト
テンプレートを表示
閉じる

DeepSeekによって開発された大規模言語モデルは以下のライセンスのオープンウェイトで公開されている。Hugging Faceにてダウンロードできる。

  • 2024年以前にリリースされたものは用途制限付きライセンスのDEEPSEEK LICENSE。
  • 2025年以降にリリースされたものは使用・改変・再配布が許諾されたMITライセンス。オフライン環境・オンライン環境を問わず、改変したり自分の好みに合うように回答内容を書き換えることが可能である。その場合は、必ずDeepSeekの名義だけはMITライセンスにより残す必要がある。

沿革

2016年2月、AI愛好家である梁文鋒が、「幻方量化」を共同設立した。彼は2007~2008年の金融危機の際に浙江大学に在学しながら取引を開始していた[2]。2019年までに、彼は「幻方量化」をAI取引アルゴリズムの開発と使用に特化したヘッジファンドとして確立した。2021年までには、幻方量化は取引においてAIのみを使用するようになった[3]

2023年4月、幻方量化は金融事業とは独立したAIツールの研究開発に専念する汎用人工知能ラボを立ち上げた[4][5]。2023年5月、幻方量化を投資家の一つとして、そのラボは「DeepSeek」という独立企業となった[3][6][5]。しかし、短期間での収益化が難しいと予想されたため、ベンチャーキャピタルは資金提供に慎重だった[3]

2024年5月、DeepSeekは高性能かつ低価格の「DeepSeek-V2」をリリースし、中国におけるAIモデルの価格競争の引き金となった。すぐに「AI業界の拼多多」と呼ばれるようになり、ByteDanceテンセント百度アリババグループといった大手テクノロジー企業も同社と競うためにAIモデルの価格を引き下げ始めた。DeepSeekは低価格で提供しながらも、赤字を出している競合他社と比べて収益を上げていた[7]

リリース履歴

以下、Mはmillion(100万)、Bはbillion(10億)、Tはtrillion(1兆)の略。

DeepSeek Coder

2023年11月2日、DeepSeekは初のモデルDeepSeek Coderを発表した。このモデルは研究者と商業利用者の双方に無料で提供されている[8]。ソースコードはMITライセンスで、モデルのウェイトはDEEPSEEK LICENSEでオープンウェイト化されており、DEEPSEEK LICENSEは「オープンかつ責任ある下流利用」に関するライセンス契約が付随している[9]

DeepSeek LLM

2023年11月29日、DeepSeekはパラメータ数を67Bに拡張したDeepSeek LLMをリリースした[10]。このモデルは、当時の他の大規模言語モデル(LLM)と競合するために開発され、GPT-4に近い性能を目指していた[8]。しかし、計算効率やスケーラビリティにおいて課題に直面した。さらに、このモデルを基盤とするチャットボット版DeepSeek Chatも公開された[11]

DeepSeek-V2

2024年5月6日、DeepSeek-V2をリリースした[12]。パラメータ数は236B(アクティブ21BのMoE)に増えた。Financial Timesによれば、同モデルの価格は100万トークンの出力あたり2人民元と、競合モデルよりも安価であると報じられた。ウォータールー大学のTiger Labが提供するリーダーボードでは、DeepSeek-V2はLLMランキングで7位にランクインした[6]

2024年9月5日、DeepSeek-V2.5をリリース。[13]

2024年12月10日、DeepSeek-V2.5-1210をリリース。[14]

DeepSeek-V3

2024年12月26日、DeepSeek-V3がリリースされた。このモデルは671B(アクティブ37BのMoE)のパラメータを持ち、約55日間の学習期間と558万米ドルの費用でトレーニングされた[5]。これは競合モデルと比較して大幅に少ないリソースで実現されている。学習データセットは14.8Tトークンに及ぶものだった。ベンチマークテストでは、Llama 3.1やQwen 2.5を上回る性能を示し、GPT-4oやClaude 3.5 Sonnetに匹敵する結果を出した[5][15][16][17]。DeepSeekが限られたリソースで最適化を実現したことは、中国のAI開発に対する米国制裁の限界を浮き彫りにした[5][18]。The Hillの意見記事では、このリリースを「アメリカのAIがスプートニク・モーメントに達した」と評した[19]

このモデルは、256のルーティングエキスパートと1つの共有エキスパートを含むMulti-head Latent Attention Transformerによる混合エキスパート(MoE)モデルである。各トークンが37B以上のパラメータを活性化する仕組みとなっている[20]

2025年3月24日、DeepSeek-V3-0324 をリリース。[21]

2025年8月21日、DeepSeek-V3.1 をリリース。[22]

2025年12月1日、DeepSeek-V3.2 をリリース。[23]

DeepSeek-R1

2024年11月20日、DeepSeek R1-Lite-Previewがリリースされた。このモデルは、論理的推論、数学的推論、およびリアルタイムの問題解決のためにトレーニングされたものである。DeepSeekは、このモデルがAmerican Invitational Mathematics Examination(AIME)やMATHといったベンチマークにおいてOpenAI o1モデルを上回る性能を示したと主張した[24]。しかし、The Wall Street Journalによれば、2024年版のAIMEから15問を使用したテストでは、o1モデルの方がDeepSeek R1-Lite-Previewよりも迅速に解を導き出したという[25]

2025年1月20日[26]、DeepSeek-R1およびDeepSeek-R1-Zeroがリリースされた[27]。これらはV3-Baseを基盤としており、V3と同様に671Bの総パラメータと37Bのアクティブパラメータを持つ混合エキスパート(MoE)モデルである。また、DeepSeek-R1-Distillと呼ばれる一部のモデルもリリースされたが、これらはR1を基盤としておらず、LLaMAQwenのような他のオープンウェイトモデルに類似しており、R1が生成した合成データでファインチューニングされている。このDeep-Seek-R1は、中国における人工知能技術の発展がすでに米国と大差ないこと、そしてLLMトークンのコストは下げ、人工知能の進歩の道はモデル規模を拡大することだけではないことを象徴している[28]

R1-Zeroは完全に強化学習(RL)のみでトレーニングされており、教師ありファインチューニング(Supervised Fine-Tuning、SFT)は一切行われていない[29]。このモデルはGroup Relative Policy Optimization(GRPO)を使用しており、批評モデルを用いず、グループスコアから基準を推定する仕組みである[30]。報酬システムはルールベースで構成され、主に精度報酬と形式報酬の2種類から成る。

R1-Zeroの出力は可読性が低く、英語中国語が混在する傾向があったため、R1のトレーニングを通じてこれらの問題を解決し、さらに推論能力を向上させた[29]

2025年5月28日、DeepSeek-R1-0528 をリリースした。[31]

2026年

  • 2026年4月24日、DeepSeek-V4-Pro と DeepSeek-V4-Flash をリリースした。パラメータ数はV4-Proが1.8T(アクティブ49BのMoE)、V4-Flashが284B(アクティブ13BのMoE)。[32][33]
  • 2026年7月31日、DeepSeek-V4-Flash-0731 をリリースした。[34]
  • 2026年8月13日、DeepSeek-V4-Pro-0813 をリリースした。[35]
  • 2026年8月17日、DeepSeek-V4-Flash-0731 の需要が高く、サーバーが過負荷に耐えられなくなったため、DeepSeek-V4 のサービス価格を1.5~12倍値上げした。DeepSeek が運営しているサーバーは中国国内での需要が多く、中国国内の業務時間にあたる時間帯は2倍の値段とした。なお、MITライセンスのオープンウェイトのため DeepSeek 以外もサービス提供しているが、DeepSeek 以外が運営しているサーバーの価格は関係ない。OpenCode Go は2026年8月14日の DeepSeek-V4-Flash-0731 の使用量が18Tトークン/日だった。DeepSeek が運営しているサーバーに回していたが、サーバーが耐えられなくなったため、他のサービスプロバイダーに切り替えた。この使用量を捌くには NVIDIA B300 が約1,000枚必要である。[36][37][38][39]
  • 2026年9月10日、DeepSeek-V4.1-Flash をリリースした。ほとんどのベンチマークでV4-Proを上回り、DeepSeek が運営しているサーバーではV4-FlashとV4-Flash-Vision-Expは廃止した。パラメータ数は552Bと増え、そのためV4-Flashよりも価格は高くなった。V4-FlashとV4-Proは入力はテキストのみだったが、V4.1-Flashは入力に画像も使えるようになった。[40]

モデル一覧

さらに見る 名称, リリース日 ...
モデル一覧
名称 リリース日 ライセンス パラメータ数
DeepSeek Coder 2023年11月12日 DEEPSEEK 1B, 5.7B, 6.7B, 33B
DeepSeek LLM 2023年11月29日 7B, 67B
DeepSeek-V2 2024年5月6日 236B-A21B
DeepSeek-V2.5 2024年9月5日 236B-A21B
DeepSeek-R1-Lite-Preview 2024年11月20日
DeepSeek-V2.5-1210 2024年12月10日 236B-A21B
DeepSeek-V3 2024年12月26日 671B-A37B
DeepSeek-R1 2025年1月20日 MIT 671B-A37B
DeepSeek-R1-Zero 2025年1月20日 671B-A37B
DeepSeek-V3-0324 2025年3月24日 671B-A37B
DeepSeek-R1-0528 2025年5月28日 671B-A37B
DeepSeek-V3.1 2025年8月21日 671B-A37B
DeepSeek-V3.2 2025年12月1日 671B-A37B
DeepSeek-V4-Pro 2026年4月24日 1.8T-A49B
DeepSeek-V4-Flash 2026年4月24日 284B-A13B
DeepSeek-V4-Flash-0731 2026年7月31日 284B-A13B
DeepSeek-V4-Pro-0813 2026年8月13日 1.8T-A49B
DeepSeek-V4.1-Flash 2026年9月10日 552B-A8B-A16B
閉じる

DeepSeek-R1の評価と反応

2025年1月20日にリリースされたスマートフォン向けAIチャットアプリは、iOS版がアメリカ合衆国(米国)や日本App Storeの無料アプリランキングで1位を取るなど、大きな注目を集めた[41]。同月27日、DeepSeekは「大規模なサイバー攻撃」を理由に、新規利用登録の一時制限を発表した[42]

米中貿易戦争の影響で強化された最先端AIチップなどの対中輸出規制下において、ハードウェアへのアクセスに制限がある中国企業が開発したモデルを、AIの開発競争における「マイルストーン」と評価する専門家がいる一方で[43]、DeepSeekが公表している開発情報の信憑性などに対しては、米国のAI関係者からは懐疑的な意見も聞かれた[44]。株価で打撃を受けたNVIDIAのCEOのジェンスン・フアンは「優れたイノベーションであり、推論モデルをオープンソース化した」と評価しながらも依然として同社製品はAIで需要が見込めると述べて株式市場の懸念を払拭し[45]、競争相手のOpenAIのCEOのサム・アルトマンも価格性能比で「素晴らしいモデル」と称賛しつつも更に優れたモデルを開発していくと述べた[46]

上記のような成功を受け、DeepSeekの創業者・梁文鋒英語版は、「中国のサム・アルトマン」と称されるようになった[47][48]。中国製AIモデルへの世界的な注目は中国国内でも話題を呼び、李強首相は梁を会談に招いて「中国国民としてとても誇りに思う」と称賛しており[49]、中国全土でDeepSeekの採用が政府に後押しされるようになった[50]

株式市場への影響

競合のモデルに比べて低コストで開発されたというR1の公開を受けて、米国の金融市場ではAI関連株の価格が急落し[51][52]、特にNVIDIA時価総額で失った5890億ドルは1日当たりの減少額では米国企業史上最大の暴落であり[53]日経平均株価も大幅に下落し[54]、「DeepSeekショック」と呼ばれ[54][55][56]、米国のドナルド・トランプ大統領もDeepSeekを「ポジティブに見ている」と評価しつつ「米国のAI企業への警鐘となるべき」と言及する事態となった[57]

問題

検閲

習近平ナレンドラ・モディの独裁性に関して聞かれた際の反応の差異。AIはモディについては詳細に回答する一方、習への言及は避けている。

中国にあるサーバーで動作するR1の公式APIは、中国政府にとって政治的にセンシティブとみなされるトピックに対して検閲を行っていることが確認されている。例としては、1989年の天安門事件ウイグル人への迫害、習近平とクマのプーさんの比較中国の人権問題などに関する質問には答えないようになっている[58][59][60]。上記のような質問に、AIは答えを生成する場合もあるが、回答はすぐに削除され、「Sorry, that's beyond my current scope. Let's talk about something else.(申し訳ありません、それは現在私の範囲外です。別の話をしましょう。)」といったメッセージに置き換わる[59]。統合された検閲メカニズムと制限は、R1モデルのオープンウェイト版では限られた範囲でしか解除できない。中国のインターネット規制当局が定めた「社会主義核心価値観」に触れる場合や、台湾問題が取り上げられた場合、会話はそこで打ち切られる[61]NBCニュースによるテストでは、DeepSeek-R1は台湾を「中国の領土の不可分の一部」であるとし、「我々はいかなる形の台湾独立分離主義活動にも断固反対し、平和的手段によって祖国の完全な統一を実現することを誓う」と述べた[62]。しかし、西側の研究者たちは、文字の置き換えなどのトリックを使うことで、いくつかの話題で正確な回答を引き出すことに成功している[60]。また、尖閣諸島が日本の領土か尋ねたところ、「中国固有の領土」とする中国側の見解による答えが返ってきたという[63]

セキュリティとプライバシー

一部の専門家は、中国政府がAIシステムを外国への影響力行使、偽情報の拡散、監視、サイバー兵器の開発に利用する可能性があることを懸念している[64][65][66]。DeepSeekのプライバシー規約は、収集した情報を「中華人民共和国にある安全なサーバーに保存する」とし、収集対象は「テキストや音声の入力、プロンプト、アップロードされたファイル、フィードバック、チャット履歴、またはその他のコンテンツ」としている。この規約はChatGPTのそれと同等であるが[67]WIREDはこれをセキュリティ面での懸念とした[68]。イタリアやアイルランドの当局はプライバシーへの懸念を表明しており[69]アメリカ国家安全保障会議も安全保障上の影響を精査していると報じられた[70]

実コストと輸出規制

機械学習研究者のネイサン・ランバートは、DeepSeekが報告したトレーニング費用500万ドルに、研究要員、インフラ、電気代などの費用が含まれておらず、過少に報告されている可能性があるとし、実際の運営コストは年間5億ドルから10億ドルに近いと試算した[71]スケールAI英語版アレキサンダー・ワン英語版中国語版CEOは、DeepSeekは米国の輸出規制への違反を隠すため、GPUの数を過少に申告していると主張した[72][73]

軍事利用

中国人民解放軍は、軍事用ロボットドローンなどで、DeepSeekを積極的に採用する動きを推し進めているとされる[74]

他社AIへの蒸留

2026年2月23日、AnthropicはDeepSeek・Moonshot・MiniMaxが大規模な蒸留攻撃をしたと発表した。約24,000の不正アカウントを通じて1,600万回以上のやり取りを行っていたという[75][76]。これは自社モデルAIを高めるためにClaudeを不正利用したと非難している。DeepSeekが政治の反体制派、党首、権威主義に関する質問など、政治的にデリケートな質問に対する検閲を回避できる代替案を生成するタスクを確認しており、中国政府に都合が良い回答をさせるためにDeepSeekを訓練させていたのではとAnthropicが発表している[77]

脚注

外部リンク

Related Articles

Timelines

Top Qs

Fact Checks