大滝詠一が“はっぴいえんど”解散直後に設立した自身のレーベル「ナイアガラ・レコード」が50周年を迎えた2025年 (2025)、それを記念して、1975年5月 (1975-05)にリリースされたナイアガラ・レコード第2弾アルバムである大滝詠一『NIAGARA MOON』[注釈 1]の50周年記念盤が、12インチ・アナログ盤レコードとしてリリースされた。
シュガー・ベイブ『SONGS』[注釈 2]とともに語られてきた、兄弟のような関係にある本作は、『SONGS』の約一か月後に発売され、大滝がプライヴェート・スタジオの福生45スタジオでレコーディングした初のアルバムであり、ノヴェルティ・タイプの楽曲を中心とした初のアルバムである。本作も『SONGS』同様、10年ごとにリイシューされ、リマスタリングやボーナス・トラック、曲順変更などが行われてきた。特に2015年 (2015)の40周年記念盤である『NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-』[注釈 3]では、大滝本人による1995年 (1995)リミックス音源、および当初予定されていた曲順に再構成され、当時のライブ音源である1977年6月20日 (1977-06-20)渋谷公会堂で行われた“ザ・ファースト・ナイアガラ・ツアー”から『ナイアガラ・ムーン』収録の8曲とラフ・ミックスの“Demonstration Rough Mix version”12曲も収録されるという、過去最大の改変が行われた。ただ、その40周年盤以外はアルバム本編の12曲はほぼオリジナル・ミックスのままとなっており、1986年 (1986)に第1期ナイアガラ作品がCD化された際も、他作品にはリミックスなどの手が加えられたが、本作だけはオリジナル・マスターがそのまま使われていた。40周年記念盤でも、2枚組のアナログ盤では1枚目が曲順がそのままのオリジナル・ミックス、2枚目が1995年 (1995)リミックス・ヴァージョンという形が取られ、オリジナルを残そうという意図が感じられた。『EACH TIME』[注釈 4]に代表される、絶えず変更が繰り返される大滝作品の中でも、いささか珍しい作品ともいえる。おそらくは大滝は本作のオリジナル・ミックスに納得していたからではないかと思われる[1]。
今回の『NIAGARA MOON 50th Anniversary Edition』は、CDはなくアナログ盤のみで、ボーナス・トラックもなくオリジナルと同じ12曲を収録。40周年記念盤で大幅な改変と大量の未発表音源を出したこともあるであろう、ストレート・リイシューとなっている。40周年記念盤におけるアナログ盤1枚目のオリジナル・ミックスとの差異は見受けられず、おそらく同様のものと思われる[1]。
よく知られたこととして、大滝には伊藤銀次らの“ごまのはえ”(後のココナツ・バンク)のノヴェルティ・タイプ、大滝のポップス、シュガー・ベイブのメロディ・タイプというナイアガラの三位一体構想があったものの、ごまのはえが解散したため、大滝はノヴェルティ・タイプに回ってシュガー・ベイブとバランスを取ることになった。そのため本作は、結果的にメロディ・タイプのA-1、B-5,6が収録されてはいるが大滝にとっては初となる、ノヴェルティ・タイプのアルバムとなる。前作の『大瀧詠一』[注釈 5]がはっぴいえんどの延長線上的なメロディ・タイプの作風の楽曲も収録していただけに、自身の個性を初めて明確に打ち出したアルバムといえる。結果として、シュガー・ベイブとの対比が鮮明となり、ナイアガラ・レーベルの出発点がこの2作だったことが、象徴的であったと思える[1]。
本作はエレックのロゴ入りジャケットで、裏面の曲順もエレック盤と同じになっている。ディスクはグリーンのカラーディスク仕様。エレック盤に収録のオリジナル歌詞カードを復刻封入。なお、リイシュー・スタッフのクレジットはなし。