News Gothic

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News Gothic(ニュース・ゴシック)は、モリス・フラー・ベントンが設計し、1908年に所属先のアメリカン・タイプ・ファウンダーズ (ATF) から発表されたサンセリフ書体である[1]。同じくベントンが設計したFranklin Gothicとプロポーションや構造が似ているが、より軽いウェイトで設計されている。

ベントンによる他のサンセリフ体と同様に、News Gothicはグロテスク様式に基づいており、2階建ての小文字の「a」や「g」を持つなど、当時のセリフ体の本文用書体に似た特徴を備えている。また、小文字「t」の頂部が平らに切り落とされている点や、大文字「Q」のテールがボウルの完全に外側に位置している点も特徴的である。字形はコンパクトで、ディセンダーは浅い。他のグロテスク・サンセリフ体と比べてウェイトがやや軽く、字形が開いているため、堅苦しさが和らぎ、ヒューマニスト的なトーンを生み出している。

20世紀の大部分において、News Gothicは新聞や雑誌の出版に広く用いられた。モノタイプ社やインタータイプ英語版社の熱間活字鋳造機(ホットメタル)用の母型が供給され、両社ともこのファミリーに新たなウェイトを追加した[2]。また、見出し用としてコンデンス(長体)やエクストラ・コンデンスのスタイルも設計された。

「ゴシック (Gothic)」とは、主に20世紀初頭のアメリカやカナダでサンセリフ体を指して用いられた用語である。イギリスでも「グロテスク (grotesque)」と併用されていた。ドイツでは「グロテスク (grotesk)」という用語が用いられていた。日本では現在も「ゴシック体」として一般的に用いられている。

コールドタイプにおける複製

ATFが多数の関連する「ゴシック」書体に対して用いた名称を解説した戦後のガイドライン(推定1958年頃)。当時の新書体であったNews Gothic Boldを紹介している[3]

ベントンの自伝的ノートには、彼が同フォントファミリーに貢献したデザインとして以下のものが挙げられている[4]

  • News Gothic
  • News Gothic Condensed
  • News Gothic Extra Condensed

また、ATFの1923年の見本帳には以下の書体も掲載されている[5]

  • News Gothic Extra Condensed Title(見出し用書体)

Franklin Gothicと同様に、同活字鋳造所は後にラインナップを拡充し、さらに2つのバリエーションを追加した。

  • News Gothic Bold(1958年) - ジョン・L・“バド”・レンショーによるデザイン。ただし、インタータイプ英語版社はすでに鋳造活字(ホットメタル)版で太字のNews Gothicをリリースしており、後にモノタイプ社も同様にリリースした[6]
  • News Gothic Condensed Bold(1965年) - フランク・バルトゥスカによるデザイン。モノタイプ社とインタータイプ社からも同バージョンがリリースされた。

モノタイプとインタータイプの両社はオブリーク(斜体)バージョンをリリースしている。マック・マグリューの報告によれば、ATFのアーカイブには1912年当時のオブリーク用制作図面が保管されていたものの、「製造の記録はない」という[2]

ほぼすべてのコールドタイプ製造業者が、異なる名称で独自のNews Gothicを提供していた[7]

デジタル版

News Gothicの代表的なデジタル復刻版数種の比較

アメリカン・タイプ・ファウンダーズ (ATF) 社の事業を継承してデジタル書体を制作している企業が現存しないため、News Gothicはさまざまな提供元により多様なバージョンでデジタル復刻されている。

Benton Sans英語版は、Font Bureau英語版社がNews Gothicを基に大幅に拡張したフォントファミリーであり、ワイド体や極太ウェイトなどの特色が追加されている。全80スタイルを擁し、News Gothic系の中では最も包括的なデジタル版の一つである[8]。『ニューズウィーク』、『フォーチュン』、『ボストン・グローブ』、サザビーズなどで採用されている[9]

News Gothicの名でリリースされたデジタル版にも様々な特徴があり、オリジナルデザインにはないウェイトが追加されたり、需要の少ないウェイトが省略されたりすることが多い。例えば、ビットストリーム社のリリース版は、Extra-condensed(極細幅)スタイルを含む珍しいものである[10]URW++英語版社のバージョン(Fontsite社からも販売)は、1種類の字幅のみだが幅広いウェイトを揃えており、全ウェイトにイタリック体が用意されている。一方、ライノタイプ社のバージョンには、Light(細字)やCondensed(細幅)スタイルが存在しない[11][12]モノタイプ社による復刻版(その一部は多くのマイクロソフト製品に同梱されている)は、CondensedスタイルはあるがExtra-condensedはなく、他社のいくつかのバージョンに比べて文字間隔が広く取られている。アドビ、モノタイプ、ライノタイプ、ビットストリームの各社が独自のバージョンを提供している。なお、ビットストリーム版のNews Gothicは、パラタイプロシア語版社のドミトリー・キルサノフによって2005年にキリル文字が、2009年にギリシア文字が拡張され、同社から単独で販売されている[13]

ソフトメーカー英語版社のHamburg Serial[14]は、知名度こそ劣るもののNews Gothicの派生版の一つであり、1階建ての「a」と「g」を持つイタリック体を特徴としている。

News Gothic No. 2は、1984年にD・ステンペルAG英語版社が制作したNews Gothicの拡張版である。他のバージョンにはなかったウェイトがファミリーに追加されている[15]

アドビのSource Sans ProはNews Gothicを基にした単一字幅のデザインであるが、画面表示用に最適化するため純粋なイタリック体 (true italic) を採用し、エックスハイトが大きく設計されている点で異なる。2012年にアドビ初のオープンソースファミリーとして、SIL Open Font Licenseの下で公開された。アドビのトレーニング資料では、やや細身なNews Gothicよりも、ページ全体での文字の濃さ(カラー)が均一になる点が強調されている[16][17]

News Cycleは、ネイサン・ウィリスによるオープンソースの派生版である。1908年当時のNews Gothicの書体見本を基にしており、ラテン文字、ギリシア文字、キリル文字の全グリフが拡張されている。SIL Open Font Licenseの下で提供されているオープンソース書体である[18][19]

類似のデザイン

ライノタイプは自社の類似書体を「Trade Gothic英語版」と称し、一方ラドロー英語版版は「Record Gothic」として知られていた。インタータイプ英語版は同名でこの書体を複製し、1955年に派生書体である「News Gothic Bold」を追加した[2]。ボルチモア・タイプによる複製版は「Balto Gothic」と呼ばれた。一方で、同社がインランド活字鋳造所英語版の「Inland Gothic No. 6」を複製した書体は「News Gothic」という名称で販売されていた。

1916年、ソル・ヘス英語版はNews Gothic Extra Condensed向けに丸みを帯びた代替文字を制作した。この書体はランストン・モノタイプから「Jefferson Gothic」として販売され、ボルチモア・タイプからも「Tourist Extra Condensed」の名称で販売された。1935年には、ベントンがATF向けに同様の制作を行い、この書体は「Phenix」と呼ばれた。

ラドローの「Record Gothic」は当初単なる複製版に過ぎなかったが、1956年から1961年にかけて、同社の専属デザイナーであるR・ハンター・ミドルトン英語版が同ファミリーに以下のような多くの独自デザインを追加した[20]

  • Record Gothic Condensed Italic
  • Record Gothic Extended + Italic
  • Record Gothic Bold + Italic
  • Record Gothic Bold Condensed
  • Record Gothic Bold Extended + Italic
  • Record Gothic Bold Extended Reverse
  • Record Gothic Thinline Condensed
  • Record Gothic Heavy Condensed
  • Record Gothic Light Medium-Extended
  • Record Gothic Medium-Extended + Italic
  • Record Gothic Bold Medium-Extended
  • Record Gothic Heavy Medium-Extended

このようにRecord Gothicは一貫性に欠ける書体ファミリーとなっており、現在に至るまで完全にデジタル化されたことはない[21]

一部のMicrosoft WindowsおよびmacOSに標準搭載されている日本語フォント「游ゴシック体」は、欧文グリフの設計にFranklin Gothicをベースとしている[22]。そのため、同じくベントンが設計した関連書体であるNews Gothicとも類似した印象を持つ。ただし、両書体の間に直接的な系譜関係があるわけではない。

主な使用例

脚注

参考文献

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