TOI-1338 c
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TOI-1338 c(BEBOP-1cとも呼称される)とは、連星系であるTOI-1338の周囲を公転する巨大ガス惑星である。TOI-1338系は、地球からがか座の方向に約1,300光年 (400パーセク) 離れた位置に存在する。TOI-1338 cはTOI-1338系で知られている惑星の中で最も外側を公転する惑星であり、軌道長半径は0.794 au (118,800,000 km) で、公転周期は約216日である。TOI-1338 cの発見は、2009年から2022年にかけてBinaries Escorted By Orbiting Planets(BEBOP)プロジェクトによるドップラー分光法を用いた観測で検出され、2023年に公表された。TOI-1338 cの質量は地球の75.4+4.0
−3.6倍と推定されているが、半径は不明である[6]。
| TOI-1338 c | ||
|---|---|---|
| 仮符号・別名 | TOI 1338 c TOI-1338 (AB) c[1] BEBOP-1c[2] | |
| 星座 | がか座[注 1] | |
| 分類 | 太陽系外惑星 木星型惑星 | |
| 発見 | ||
| 発見年 | 2023年1月25日[2] | |
| 発見者 | BEBOP[2] | |
| 発見方法 | ドップラー分光法[2][1] | |
| 現況 | 確認[1] | |
| 位置 元期:J2000.0 | ||
| 赤経 (RA, α) | 06h 08m 31.9675204416s[3] | |
| 赤緯 (Dec, δ) | −59° 32′ 28.081703112″[3] | |
| 固有運動 (μ) | 赤経: -12.057 ミリ秒/年[3] 赤緯: 34.513 ミリ秒/年[3] | |
| 年周視差 (π) | 2.4752 ± 0.0099ミリ秒[3] (誤差0.4%) | |
| 距離 | 1318 ± 5 光年[注 2] (404 ± 2 パーセク[注 2]) | |
| 軌道要素と性質 元期:BJD 2458300.0(2018年6月30日12:00 UT)[注 3] | ||
| 軌道長半径 (a) | 0.794±0.016 au[2] | |
| 離心率 (e) | 0.037+0.032 −0.026[5] | |
| 公転周期 (P) | 215.79±0.46 日[5] | |
| 軌道傾斜角 (i) | 97.00+6.70 −6.80°(空の面に対して)[5] 9.1+4.8 −6.0°(連星の軌道面に対して)[5] | |
| 近点引数 (ω) | 344.64+25.87 −31.25°[5] | |
| 準振幅 (K) | 5.6±1.0 m/s[2] | |
| TOI-1338の惑星 | ||
| 物理的性質 | ||
| 質量 | 75.4+4.0 −3.6 M⊕ (0.237+0.013 −0.011 MJ)[5] | |
| 他のカタログでの名称 | ||
| TYC 8533-950-1 c、2MASS J06083197-5932280 c、TIC 260128333 c、EBLM J0608-59 c、RAVE J060832.0-593228 c[3] | ||
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発見
TOI-1338 cは、チリのラ・シヤ天文台とパラナル天文台が2009年から2022年にかけて実施したTOI-1338の分光観測によって発見された。この観測は、Binaries Escorted By Orbiting Planets(BEBOP)の一環として行われた[7][2]:705。BEBOPプロジェクトは、太陽系外惑星が主星に及ぼす重力の影響を検出するドップラー分光法を用いて、食連星の周囲を公転する太陽系外惑星を検出することを目的とした掃天観測である[2]:705[8][9]。太陽系外惑星の重力によって主星は地球の視線に対して揺れ動き、地球から遠ざかるにつれて赤方偏移、地球に近づくにつれて青方偏移して見えるようになる[10][11]。
TOI-1338 cの最初の兆候は、2021年にMatthew Standingが主導するチームによって報告された。彼らは、TOI-1338系で観測された200日周期の視線速度変動に気付いた[7]。TOI-1338 cの検出は、2021年から2022年にさらに行われた観測によって確認された[2]:706。TOI-1338 cの発見は、Standingが主導するチームによって公表され、2023年6月12日に科学雑誌の『Nature Astronomy』に掲載された[8][2]。TOI-1338 cは、ドップラー分光法を用いて発見された最初の周連星惑星であり、TOI-1338系は複数の周連星惑星を持っていることが判明した2番目の連星系である[10]。
名称
TOI-1338 cという名称は、主星の名称(TOI-1338)の後に小文字のアルファベットを付けるという太陽系外惑星の命名規則に従っている[12]。この惑星は、TOI-1338系の周囲を公転する2番目の太陽系外惑星として発見されたため、TOI-1338 cと命名された[12]。「TOI」は「TESS Object of Interest」の略で、TESSが惑星のトランジットを確認した際に、その星系に体系的に付けられる[12]。TOI-1338はBEBOPプロジェクトによっても観測されたため、BEBOP-1としても知られており、TOI-1338 cにおいてもBEBOP-1cという名称が与えられている[2]。TOI-1338 cはBEBOPプロジェクトによって発見され、TESSによって観測されなかったため、Matthew Standingらのチームは、BEBOP-1cという名称を好んでいる[2]。
主星と位置

TOI-1338 bの主星であるTOI-1338は、大型の黄白色のF型主系列星であるTOI-1338 Aと、小型の赤色矮星(M型)であるTOI-1338 Bからなる連星系である[13][14]。連星系のうち、TOI-1338 Aは、太陽よりも高温(温度 6030 K)、高輝度(光度 2.1 L☉)、大型(半径 1.32 R☉、質量 1.13 M☉)である[14][13]:4581。もう一方のTOI-1338 Bは、太陽よりも低温(温度 3300 K)、低輝度(高度 0.009 L☉)、小型(半径 0.31 R☉、質量 0.31 M☉)である[14][13]:4581。TOI-1338(またはBEBOP-1、EBLM J0608-59)として知られるこの2つの恒星は、14.6日ごとに互いの周囲を公転しており、平均約0.13天文単位 (19,000,000 km) の距離で互いに離れている[2]:704。
TOI-1338系には、TOI-1338 bとTOI-1338 cという2つの周連星惑星が存在することが知られている[6]。TOI-1338とその惑星系は、南天の星座であるがか座に位置しており、地球から約1,300光年 (400 pc) の距離にある[14]。地球から見ると、TOI-1338の見かけの等級は11.7で、肉眼や小型望遠鏡では観測できないほど暗い天体である[14]。
特性
軌道
TOI-1338 cは周連星惑星であり、2つの恒星の周囲を公転している。そのため、スター・ウォーズに登場する架空の周連星惑星であるタトゥイーンによく例えられる[8][9][11]。TOI-1338 cはTOI-1338系で知られている惑星の中で最も外側に位置する惑星であり、連星系の共通重心から0.79天文単位 (118,000,000 km) 離れた距離を約216日の公転周期で公転している[5][6]。その軌道はほぼ円形で、主星とほぼ同一平面上にある[2]:704[5]:10。具体的には、推定軌道離心率は0.037+0.032
−0.026、主星の連星軌道面に対する傾斜角は9.1°+4.8°
−6.0°である[5]:5, 11。内側を公転しているTOI-1338 bとは異なり、TOI-1338 cの軌道傾斜角は主星の前を横切るほど大きくない[2]。
2つの主星の軌道運動によりTOI-1338 cは周期的な摂動を受けており、軌道は歳差運動を起こしている[2]:704。Standingらによる2023年の研究では、TOI-1338 cの軌道は約119年の周期で交点歳差運動を起こしていると推定された[2]:704。歳差運動に伴い、TOI-1338 cの軌道がやがて地球から観測した際に主星の前面を通過するようになる(トランジットを起こし始める)可能性がある[2]:704。ただし、TOI-1338 cがいつトランジットを起こすようになるかは不明である[2]:704。

物理的特性
2024年時点のドップラー分光法を用いた測定結果によると、TOI-1338 cの質量は地球の75.4+4.0
−3.6倍[6]、すなわち土星の質量の約79%±4%に相当する[注 4]。その質量から、TOI-1338 cは巨大ガス惑星であると推定されている[9][10][16]。しかし、トランジットが観測されていないため、TOI-1338 cの半径は不明である[8][17]。
起源
2024年時点の研究では、TOI-1338系の年齢は 60 ± 3 億年 と推定されており、これは太陽系よりも古い[13]:4581。TOI-1338系の惑星と恒星の同一平面上の軌道は、単一の平坦な原始惑星系円盤から形成されたことを示唆している[5]:11。2023年にGavin Colemanと共同研究者らが行ったシミュレーションでは、原始惑星系円盤の乱流(または粘度)と紫外線照射のレベルが低い場合、TOI-1338に類似した周連星惑星系が1000万年以内に形成される可能性があることが示された[16]:425。これらの条件は、時間の経過とともに原始惑星系物質の減少を抑えるため、周連星惑星が巨大ガス惑星に成長するための時間と物質をより多く得ることができる[16]:419。シミュレーションによれば、TOI-1338系の惑星は当初、主星からより遠い場所で形成されたものの、その後内側へと移動し、現在の位置に至った可能性が高いと考えられている[16]。