さくら型哨戒艦
海上自衛隊が計画している哨戒艦の艦級
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さくら型哨戒艦(さくらがたしょうかいかん、英語: Sakura-class offshore patrol vessel)は、日本の海上自衛隊では初となる哨戒艦の艦級。令和5年度(2023年度)予算より建造を開始、2025年(令和7年)から順次進水しており、2027年(令和9年)から就役する予定である[1]。
ジャパン マリンユナイテッドが主契約者、三菱重工業が下請負者として選定され[2]、2023年度(令和5年度)予算より建造が開始される[3]。防衛装備庁による2026年3月の年度見積りでは、平均量産単価は125.1億円と見積もられている[4]。
来歴
自衛隊は、平素から広域の常続監視を行う役割を持つ[5]。日本本土防空の一環としての監視は航空自衛隊のレーダーサイトによって常時継続的に行われているのに対し、洋上における警戒監視は、装備と人的資源の制約から時間と空間の双方にギャップが生じており、特定の海域には艦艇や対潜哨戒機が常時展開する以外は、哨戒機が毎日1回見るか、兆候を得た場合に展開するに留まっている[5]。
洋上において、一般的な警備・救難活動については海上保安庁の担当となるが、特に領海と排他的経済水域を航行する外国軍艦の監視は海上自衛隊が担当する必要がある[6]。この任務に従事する艦艇としてはあぶくま型護衛艦やはやぶさ型ミサイル艇が用いられてきたが、中国人民解放軍海軍やロシア海軍の活動が活発化するのに伴い、これらの艦艇だけでは手が足りず、掃海艇や訓練支援艦、補給艦など、本来この種の任務に適しているとはいえない艦艇まで投入せざるを得なくなっていた[6][7]。
この問題に対し、2018年(平成30年)12月18日に発表された防衛計画の大綱(30大綱)および中期防衛力整備計画(31中期防)において、警戒監視に特化した艦艇としての哨戒艦を整備することで、日本周辺海域の警戒監視を強化することが決定された[5][8][9][10][2][注 1]。
防衛装備庁の取得プログラムでは、「本型は主として平素における警戒監視に効果的に対応し得る艦艇として、日本周辺海域の警戒監視を実施するとともに、武力攻撃事態等に際しては、保有する能力の範囲内で沿岸防備等に従事する」ものとされている[4]。
設計

計画当初は排水量1,000トン程度とされていたが、これでは日本周辺海域の常続監視には船型過小と判断されたようで、基準排水量1,900トンとなった[7]。進水時に海上自衛隊が公表した主要要目では、全長95.0メートル、全幅12.0メートル、深さ7.7メートル、喫水4.2メートルとされている[12]。大きさのほかヘリコプター甲板も備えている点などから、海上保安庁のくにがみ型巡視船(1,000トン型PL)やひだ型巡視船(2,000トン型PL)、海外ではイギリス海軍のリバー型哨戒艦バッチ2に近い性格となっている[13][7]。
設計にあたってはステルス性も配慮されているが、もがみ型護衛艦ほどのレベルではない[7]。船体には鋭いナックルが付され、また艦首の甲板の周囲にはブルワークが設けられている[7]。艦橋構造物は一体になり、かなりの大きさを占める[7]。水線下の形状としては巡視船と同様の角型船型を採用、外洋にて低速での常続監視を行うことを考慮して減揺装置も設置される[13][8]。この減揺装置としては、当初は古典的な減揺水槽が用いられるものといわれていたが[13][8]、実際には、金属製の球体をレール上で移動させる方式(カウンターマス式アクティブ減揺装置)とされ、実用化は初となる[14]。艦首はバルバス・バウとされているほか、バウスラスターも設置されており[7]、タグボートの助けを借りず独力で出入港を行えるようになっている[13]。
日本の少子化・高齢化に伴う人口減少社会の到来とともに募集難が続いていることもあって[5]、本型では省人化が重視されており[8][9]、30人の乗員での運用が可能となっている[1]。自動で岸壁に離着岸することを可能にする「自動離着桟機能」や、火災時の消火活動を遠隔で実施することが可能な「統合監視制御装置」といったシステムの導入によって乗員数の削減に努めるとともに[13]、複数クルー制の導入によって可動率を向上させるなどの措置も図られる予定となっている[15][注 2]。
低速航行が重視されたこともあって、機関はCODLAD方式とされており[8]、巡航時にはディーゼル・エレクトリック方式による電気推進、高速時にはこれにディーゼルエンジンによる機械駆動を併用する方式となる[13][7]。主機関としてはIHI原動機ニイガタ16MG28AHXを2基、そして推進電動機を2基搭載し、合計出力18,500馬力を確保している[12]。最大速力は計画段階では約20ノット以上とされたが、進水時に25ノット(約46km/h)に修正された[16]。
装備
電装・兵装
上記の通り、役割を警戒監視に特化して省人化を重視したこともあって、戦闘に使う砲などは最小限に絞り込まれ[9]、兵装は艦首側に30ミリ口径の機関砲を1門備えるのみとなっている[13][7][8]。本型搭載の30mm機関砲は日本製鋼所広島製作所で製作されており、同所が海上保安庁向けに納入している砲とほぼ同様の性能とみられている[17]。
防衛省はコンテナ型に収納された対艦ミサイル発射装置「コンテナ式SSM」の開発を進めており[18]、海上自衛隊では、これを本型にも搭載することを検討している[19]。この装置は90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)、17式艦対艦誘導弾(SSM-2)および12式地対艦誘導弾能力向上型の運用に対応する[19]。
電子機器も比較的簡素であり、民間の大型船舶と同様の航海用レーダー2基のほかは、電子光学センサーや電波方位探知装置、衛星通信装置が搭載されるのみとされた[7]。ただし電磁波情報収集器材を後日装備することが明らかにされている[19]。その後、進水時に海上自衛隊が公表した主要装備では、射撃指揮装置1式、航海用レーダ1式、通信機器1式、電磁波情報収集装置2基、UAVおよびバウスラスター1基とされている[12]。
搭載艇・搭載機
艦尾甲板は「多目的甲板」、その直前の艦橋構造物後部は「多目的格納庫」とされる[13][7]。多目的甲板は、SH-60を含めて海自が保有する各種ヘリコプターの発着艦が行える程度の広さが確保されているが、多目的格納庫は無人航空機(UAV)の搭載を想定したものであり、有人ヘリコプターの搭載には対応しない[14]。海上自衛隊は、小型無人航空機として、アメリカ合衆国のマーティンUAV(現シールドAI)が開発した垂直離着陸(VTOL)式UAVであるV-BATを採用したことを発表しており、本型においても運用が予想され、1番艦の「さくら」および2番艦「たちばな」では後日装備予定と報じられている[16]。また本型の個艦での戦闘能力が乏しいことを踏まえて、攻撃用UAVの導入も見込まれており[14]、『令和8年度概算要求の概要』に盛り込まれた「無人アセットによる多層的沿岸防衛体制(SHIELD)」のイメージ図では、本型から水上発射型UAVが運用されて敵艦艇を攻撃する様子が示された[17]。
格納庫の上方には、各種搭載機材を扱うための12メートル多目的クレーンが設置されており[13][7]、力量は約3トン程度とみられている[14]。
艦尾船体内にはJMUディフェンスシステムズ社が開発した「スリップウェイ式艦尾投入揚収装置」が設置されており、下開き式のハッチが設けられている[14]。この装置は艦の揺れの影響を受けずに複合艇の海面投入・揚収を行えるほか[14]、無人潜水機(UUV)や無人水上艇(USV)のような機材の運用も想定したと見られており[13]、様々な洋上作業に対応可能となっている[8]。
同型艦
上記の通り、本型は旧30大綱に基づいて12隻の整備が計画されている[15]。令和9年(2027年)度までの防衛力整備計画の5か年では10隻を整備予定とされており、おおむね10年後の体制では12隻が示されている[20][21]。
建造予算としてはまず令和5年度(2023年度)予算に4隻分として357億円(1隻あたり約89億円)が盛り込まれた[15]。建造単価は2022年時点で約90億円とされていた[13]。このように要求初年度の建造数が多かったこともあって翌令和6年度(2024年度)予算には盛り込まれなかった[15]。これを受けた『世界の艦船』では、以後は令和7-9年度(2025-27年度)で各2隻を盛り込んでいき、次期計画となる令和10年度(2028年度)で最終の2隻を要求して、整備を完了すると予測していたが[15]、その後、令和7年度(2025年度)予算の主な事業でも哨戒艦の建造は計上されなかった[22]。
運用部隊としては、2隻編成で6個部隊が新たに編成され、地方隊に配備されるものと見られていた[7]。また安保三文書で自衛艦隊の大改編が示された後には、哨戒防備群に配備されるものと見られている[17]。
2024年(令和6年)5月の海上自衛隊訓令の改正により、哨戒艦には「OPV」の記号が付与されることになった[23]。命名規則はミサイル艇(PG)と共通で、鳥の名、木の名、草の名、種別に番号を付したものとされる[23]。
令和5年度(2023年度)計画で建造される4隻は同時に起工、1番艦は6月より順次ブロックをドックにて搭載し、1・2番艦を同時に進水、続いて3・4番艦も同時に進水し、最終的に4隻を令和9年(2027年)3月に引き渡す予定とされていた[24]。
2025年(令和7年)8月29日、防衛省は令和8年度概算要求を発表し、2隻分として287億円を要求した[25]。1隻あたり約144億円の要求であり、令和5年度(2023年度)の1隻あたり約89億円と比較して調達価格が大幅に高騰している。元護衛艦隊司令官・呉地方総監である池田徳宏は、この価格高騰の背景として、各種物価高騰のほか、概算要求の記載の変遷を踏まえて、有事までの活動も含意するようになった可能性を指摘している[17]。その後、令和8年度予算では2隻分として285億円が計上された[26]。
また、防衛装備庁の取得プログラムの分析・評価では、平均量産単価は現行基準見積り94.5億円に対して年度見積り125.1億円、単位事業取得コストは現行基準見積り94.9億円に対して年度見積り125.4億円となり、いずれも事業継続の必要性検討基準に該当した[4]。コスト上昇の主要因として、船体部の直接材料費、武器部の材料費及び人件費の高騰、能力を高めた装備品である衛星航法表示器YPN-3Cの導入、当初の価格積算が正確でなかったことが挙げられている[4]。同評価では、ライフサイクルコスト抑制のための策を検討し、取得計画の見直しを行いつつ、現行の取得計画を進めるとしている[4]。