アラン・コルバン
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フランス・オルヌ県生まれ。カルヴァドス県のカーン大学卒業。1959年、歴史の教授資格を取得。リモージュのリセで一時教鞭を取った後に、1972年から1986年までトゥールのフランソワ・ラブレー大学で現代史の教授を勤める。1987年から、モーリス・アギュロン(Maurice Agulhon)の後任としてパリ第1大学(パンテオン=ソルボンヌ)の教授に就任し、19世紀史を担当。
「感性の歴史家」
『においの歴史』『音の風景』といった五感をテーマとする著作を多く世に問い、日本では「感性の歴史学」を打ち立てた歴史家として知られるコルバンだが[1]、彼が心性史の路線を歩み始めたのは博士論文の執筆に際してのことである。
1960年代の頭、コルバンは博士論文を準備するに当たって、パリ大学教授での指導教授だったエルネスト・ラブルースの意向を受けてリムーザンの対象地域を割り当てられた。当時「全体史」を志向していたラブルースは、自身の弟子達を下請けとして、フランスの各地域に割り振って研究を行わせたのである。ところがリムーザンは文書も知識も不十分であり、「景況(コンジョンクチュール)」の中長期的なリズムを分析するためのデータを欠いていた。さらにリムーザンにおいて主要な経済収入は漁労や狩猟採集に加え、豚や家禽の飼育に依っていた。この地域はラブルースのモデルを適用するのに不向きだと判断した彼は、次第に家族構成や識字教育、信仰や共同体内における人間関係といった文化史的な側面へと関心をシフトしていく。
こうして経済史のみならず社会史・文化史にも目を向けたコルバンの博士論文は、1975年に『19世紀リムーザン地方における伝統と近代性』として刊行された[2]。以来、彼は先述の五感をテーマとする心性史の著作や、『記録を残さなかった男の歴史』といった史料批判の手法を問い直す著作を発表し続けている。