インド・ヨーロッパ祖語の音韻
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子音
インド・ヨーロッパ祖語には伝統的に以下の音素が再構される。多種多様な印欧諸語にどのようにこれらの音素が写映したのかについては、インド・ヨーロッパ語族の音韻法則(英語版)を参照。
| 唇音 | 舌頂音 | 舌背音 | 「喉音」 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 口蓋化 | 平 | 両唇軟口蓋 | |||||
| 鼻音 | *m | *n | |||||
| 破裂音 | 無声 | *p | *t | *ḱ | *k | *kʷ | |
| 有声 | (*b) | *d | *ǵ | *g | *gʷ | ||
| 有声帯気 | *bʰ | *dʰ | *ǵʰ | *gʰ | *gʷʰ | ||
| 摩擦音 | *s | *h₁, *h₂, *h₃ | |||||
| 流音 | *r, *l | ||||||
| 半母音 | *y | *w | |||||
表は現代の出版物において最も一般的な表記法による。⟨ʰ⟩ は帯気音、⟨ʷ⟩ は唇音化を示す。*y は口蓋化した半母音に対応し、IPAへの転写は [j] である。(円唇前舌狭母音ではない)
破裂音系列
かつては破裂音に無声無気音・無声帯気音・有声無気音・有声帯気音の四つの系列が再構されていた。しかし無声帯気音は破裂音と喉音の子音連続として再解釈されたため、通常の再構には現在三つの系列(伝統的な音声学的説明では「無声・有声・有声帯気」)しかない。
(以下、詳細は「声門化音説(英語版)」を参照。現在は否定的な見解が大勢を占める)
しかしながら、この三系列の対立は子孫言語に見られず(サンスクリット語は無声帯気音系列を含む四系列の対立が見られる)、言語類型論的に稀である。*b が欠けているか、極めて珍しいようなことも一般的ではない。加えて、印欧語の語根には無声音と有声帯気音あるいは二つの有声音が共存することを禁止する制約がある。これらの全てから、一部の研究者は有声音を声門化音・有声帯気音を有声無気音に変更する。声門化の直接的証拠は限られているが、ゲルマン語派における無声子音の並行的改新とバルト・スラヴ語派におけるウィンターの法則を含む間接的な証拠はいくつかある。これらは摩擦音と声門化(一般的な無気有声)音がどちらも破裂音になっている。
唇音化音と舌頂音
PIEの *p, *b, *bʰ は包括記号(英語版)のPでまとめられる。*bの音声的状態については論争があるが、(以下で述べる、*bel- などの少数の疑わしい語根を除いて)語頭には出現しなかったと見られる。一方、語中の *b はおもに西部の諸語派にのみ再構されており、PIEの再構に使用できるのかという有効性について疑問が投げかけられている[1]。
何人かの研究者は*bを含む少数の語根を後の音韻変化の結果としてうまく説明しようとしている。提案されているものは以下のような発展を含む[2]。
- *ml- > *bl-。これは疑問点のある語根である*bel「力、強さ」(>サンスクリット語 bálam, 古代ギリシャ語 beltíōn)をラテン語 melior に見られるmel-と、*méh₂lom (> ヒッタイト語 maḫla-, ラテン語 mālum, 古代ギリシャ語 mēlon)が音位転換する前の形としての仮説的なより早い段階の語根*h₂eml- > *h₂ebl-/*h₂ebōl「林檎」の変化から関連させられる。
- PIEでは *ph₃ は通常 *b を作り出す。例えば、反復現在(reduplicated stem, 訳語を知らない)の語根である *peh₃-「飲む」の*pi-ph₃-はサンスクリット語 píbatiに変化する。
最良の状態を考えても、*b は非常に周辺的な音素のままである。
通常の再構は舌頂音あるいは歯音の *t, *d, *dʰ が同定されている。これらは包括記号Tでまとめられる。
舌背音
(詳細は「ケントゥム語とサテム語」を参照)
伝統的な再構によれば、カール・ブルークマンの『印欧語比較文法の基礎(英語版)』で示されたもののように三系列の軟口蓋音がPIEに再構される。
- 「口蓋化軟口蓋音」(単純に「口蓋化音」とも)*ḱ, *ǵ, *ǵʰ
(*k', *g', *g'ʰ / *k̑, *g̑, *g̑ʰ / *k̂, *ĝ, *ĝʰ のようにも書かれる)
- 「平軟口蓋音(plain velars、定訳を知らない)」(「純粋軟口蓋音(pure velars、定訳を知らない)」とも)*k, *g, *g
- 両唇軟口蓋音*kʷ, *gʷ, *gʷʰ
(*ku̯, *gu̯, *gu̯hのようにも書かれる)⟨ʷ⟩および⟨u̯⟩は軟口蓋での調音に唇音化が加わっていることを示す。
これらの三つの実際の発音はよく分からない。ある近年の説は、「口蓋化軟口蓋音」は実際にはただの軟口蓋音(*[k], *[g], *[ɡʱ])であり、一方で「平軟口蓋音」は口蓋垂音(*[q], *[ɢ], *[ɢʱ][3])あたりの更に後ろで発音されていたと主張する。もし両唇軟口蓋音が単に「平軟口蓋音」が両唇化したものであったとしたら、これらは*[qʷ], *[ɢʷ], *[ɢʷʱ]と発音されたはずだが、仮にサテム諸語が第一に口蓋化軟口蓋音を推移させてから両唇軟口蓋音と平軟口蓋音が合流したとすれば、両唇軟口蓋音が*[kʷ], *[ɡʷ], *[ɡʷʱ]であったとするのは口蓋垂説(uvular theory)においてもかんがえうる。
もうひとつの説は、PIEに軟口蓋音は二系列(平音と唇軟口蓋音)しかなく、口蓋化軟口蓋音はサテム諸語での独自の変化であるというものである。
サテム諸語では口蓋化軟口蓋音(*ḱ, *ǵ, *ǵʰ)がそれぞれの言語で多様な破擦音、もしくは歯擦音になるのと同時に両唇軟口蓋音(*kʷ, *gʷ, *gʷʰ)と平軟口蓋音(*k, *g, *gʰ)が合流するが、一部の音韻論的環境で非口蓋化が発生し、ケントゥム語の写映形がサテム語に見られることをもたらす。例えば、バルト・スラヴ語派とアルバニア語派では(後者は前舌母音が続かなければ)口蓋化軟口蓋音が共鳴音の前で非口蓋化される。サテム諸語においては一般的に平軟口蓋音と両唇軟口蓋音の写映形を区別することができないが、後続母音のu音化などによって、唇音化を喪失した痕跡を持つ単語がある。ケントゥム諸語はそれに対して口蓋化軟口蓋音が平軟口蓋音と合流する一方で両唇軟口蓋音の区別が保存されている。boukólos規則(英語版)として知られる音韻法則によればサテム諸語における非口蓋化と相似しケントゥム諸語は両唇軟口蓋音が *w(もしくはその異音 *u)に隣接したときに非唇音化を見せる。
摩擦音
PIEの唯一の確実な摩擦音である *s は歯擦音であり、その音声的実現は [s] から [ɕ] あるいは [ʃ] の範囲だったと考えられる。*s には有声化した異音 *z があり、*nisdós「巣」のような単語でみられる同化に現れる。これは一部の子孫言語では音素化される。一部のPIEの語根は *s が語頭に出現する異形態を持ち、このような *s は可動的s(s-mobile,定訳を知らない)と呼ばれる。
「喉音」は摩擦音であったかもしれないが、音声的実現に関する合意は存在しない。
喉音
(詳細は「喉音理論」を参照)
音素 *h₁, *h₂, *h₃と「どれか分からない喉音(“unknown laryngeal”、定訳を知らない)」(もしくは *ə₁, *ə₂, *ə₃, /ə/)の意味でも使われる包括記号Hはともに「喉音」を表す。
「喉音」という術語は音声学的描写としてもはや時代遅れであるが、現在でも慣用的に使用されている。
喉音音素の実際の音価は議論の余地があり、*h₂ が口腔内の非常に後ろで調音される摩擦音で、*h₃が後の円唇化を齎していたということが確実に言えるだけであるという慎重な説から、たとえばMeier-Brüggerの *h₁ = [h], *h₂ = [χ], *h₃ = [ɣ] もしくは [ɣʷ] が「すべての場合において正確である(“are in all probability accurate”[4])」という確実な説にいたるまで、正確な音価に関する多彩な提案がなされてきた。ほかの一般的な確実な根拠のない *h₁, *h₂, *h₃ の推測は、 [ʔ ʕ ʕʷ](例:Beekes)である。Simon(2013)はヒエログリフ・ルウィ語の *19 を表す記号が /ʔa/(/a/ と区別される)を表しており、*h₁ の写映形であると主張した。これはありえるが、三つすべての喉音は最終的に声門破裂音として一部の言語でおちつく。
共鳴音
PIEの音韻論において共鳴音は、他の場所だけではなく、音節核としても出現できる(つまり成節子音になる)ものを指す。
PIEの共鳴音は流音・鼻音・介音(*r, *l, *m, *n, *y (或いは*i̯), *w (或いは*u̯)で、包括記号Rでまとめられる。
全ての共鳴音に成節子音として出現するときの異音があり、一般に子音の間、子音前の語頭、子音後の語末の間で現れる。これらは *r̥, *l̥,*m̥, *n̥, *i, *u と表記され、*i と *u は音声的に確実に母音であるといっても、音韻論上は成節子音である。
写映形
(詳細は「インド・ヨーロッパ語族の音韻法則」を参照)
PIEの子音が子孫言語で経験した変化の一部は以下のようなものである。
- ケルト祖語・アルバニア語派・バルト=スラヴ祖語・イラン祖語で有声帯気系列(*bʰ, *dʰ, *ǵʰ, *gʰ, *gʷʰ)が無声無気系列(*b, *d, *ǵ, *g, *gʷ)と合流した。(バルト・スラヴ祖語ではヴィンターの法則のあとにこれが発生した。ケルト祖語は*gʷʰ > *gw, *gʷ > *b を経験したため、*gʷʰ と *gʷの間の区別を保存している)
- ゲルマン祖語はグリムの法則とファーナーの法則を経験した。(無声破裂音が無声または有声の摩擦音に変化、有声無気破裂音が無声化、有声帯気破裂音が摩擦音・非帯気音化)
- グラスマンの法則(Tʰ-Tʰ > T-Tʰ、例:dʰi-dʰeh₁- > di-dʰeh₁-)とバルトロマエの法則 (TʰT > TTʰ、例:budʰ-to- > bud-dʰo-)は早い段階の子孫言語の特定の環境(contexts)における帯気音の振る舞いを記述している。
サンスクリット語とギリシャ語とゲルマン語及びある程度まではラテン語においては、破裂音の三系列(無声、有声・有声帯気)が区別されているため、PIEの子音の再構にとって最も重要である。ゲルマン語は、フェルナーの法則と(特にゴート語を除いた)両唇軟口蓋音の変化が最初期の区別を覆い隠しているが、一方、ゲルマン語はギリシャ語とサンスクリット語が被ったグラスマンの法則よる同化を経験していない。ラテン語もこれら三つの系列の区別を保存するが、*gʰ > /f/ 以外での語頭の有声帯気音の区別は殆ど曖昧であり、語中の多くの区別も崩壊している。他の諸言語は多くの環境で非両唇音化が起こりがちであるから、ギリシャ語は両唇軟口蓋音を再構するのに特に重要である。
アナトリア語派とヘレニック語派は喉音を再構するのに最も重要である。ヘレニック語派は(例えば他の多くの言語で痕跡が消滅している語の始まりなどで)喉音の痕跡を保存する一方、アナトリア語派はおおくの喉音を直截的に保存していて、喉音はほとんどの環境においてそれぞれ区別されている(いわゆる三立写映triple reflex(定訳を知らない))。バルト・スラヴ祖語(英語版)は鋭アクセント式(“acute”, 定訳を知らない)と曲折アクセント式(“circumflex”、定訳を知らない)の母音でそれぞれが区別されているので、喉音の再構に寄与する。古アヴェスター語は喉音語幹を持つ名詞における母音交替が惹き起こした古い特徴(例えば喉音母音連続laryngeal hiatus、喉音帯気化laryngeal aspiration、喉音長音化laryngeal lengthing、全て定訳を知らない)を忠実に保存しているが、古アヴェスター語の資料は不足しているためそれほど再構に役立たない。ヴェーダ語のこれらの保存はこれと比べてあまり忠実ではないが、厖大な資料はしばしば再構に寄与する。
母音
| 長短 | 前舌 | 後舌 | |
|---|---|---|---|
| 半狭母音 | 短母音 | *e | *o |
| 長母音 | *eː | *oː |
PIEにいくつの母音があったのか、更には何を母音であると見做すかについては論争がある。一般に少なくとも四つの分節音が存在したことに合意がなされており、通常これらは *e, *o / *ē, *ō と書かれる。これらの全ては形態論的にさまざまな範囲で条件付けられている。二つの長母音は短母音よりも出現が一般的ではなく、これらの形態論的条件付は特に強く、更に早い段階では長短の対立が存在しなかったかもしれないことを示唆するため、この体系の母音は僅か二つになる(一部の研究者によると、たった一母音であるとすら言うことができる)。
表層的な母音である *i と *u は極めて一般的であり、成節共鳴音である *r̥, *l̥, *m̥, *n̥ も存在するが、これらのすべては成節的な環境で共鳴音 *y, *w, *r, *l, *m, *n と交替する。例えば、*u を持つ PIE *yugóm「yoke(くびき)」は、*w を持つ動詞 *yewg- 「くびきをかける、馬具を付ける、加える(to yoke, harness, join)」に出現する。
同様にPIEの *dóru「木、木材(tree, wood)」には属格単数の *dréws と 与格複数の *drúmos が再構される。一部の著者(例:Ringe (2006))は、非交替音素 *u の弱い証拠と同様に、交替音素 *y に加えて非交替音素 *i を再構する確実な証拠があると主張している。更に、すべての子孫言語は分節音 *a を持っており、また *i, *u, *a には一般に長母音がある。20世紀中盤まで、PIEにはこれらのすべての母音が再構されていた。しかしながら現代的な再構は喉音理論を組み込んでおり、これらの母音はPIEの喉音 *h₁, *h₂, *h₃ として再構され後に変化したものと見做される傾向がある。例えば、PIE *ā としてかつて再構された母音は現在 *eh₂ として再構され、*ī, *ū は *iH, *uH と再構される。(喉音でも述べたが、*H は任意の喉音を指す)
*a には「成節」[H̥](任意の母音に隣接しない喉音)から「a音化する」喉音に続く *e (*h₂e)の間のさまざまな起源が存在する。(これらについては音声的にはPIEで [a] を含んでいたかもしれないが、独立した音素ではなく、*e の異音であったろう)
しかし一部の研究者は、独立した音素 *a が再構されなければならないと主張していて、それはどの喉音にもさかのぼれない。
任意の共鳴子音は複雑な音節核の二番目の部分を形成することが可能であり、全ての母音(すなわち *e, *o, *ē, *ō)について二重母音を形成する(例:*ey, *oy, *ēy, *ōy, *ew, *ow, *em, *en、など)。
PIEが語頭の母音を禁じていたことは一般に合意を得ており、かつての再構で語頭の母音が想定されていた単語はすべて三つの喉音のどれかで始まる単語として再構されている。これらの喉音はヒッタイト語で母音の前を除いて(可能な環境であれば音変化を惹き起こしたあとに)すべての子孫言語で消滅した。
長音化した母音
/a/
PIEは少数の形態論的に孤立した状態にある、 *a(*dap- 「犠牲(sacrifice)」>ラテン語daps, 古代ギリシャ語 dapánē, 古アイルランド語 dúas)や二重母音の最初の部分として同様に孤立した *ay (「左(left)」> ラテン語 laevus, 古代ギリシャ語 laiós, 古教会スラヴ lěvъ)を持つ単語があったことがありえる。*a の音声的状態は頻繁に議論され、Beekesは「それゆえ PIE の音素 *a の根拠はどこにもない(“There are thus no grounds for PIE phoneme *a”)」と結論づけ、彼のかつての研究生であるAlexander Lubotskyも同じ結論に達している。
ヒッタイト語の喉音理論の変化の発見の後は、殆ど全ての先行研究での *a の例が(それまで再構されていた短母音と長母音をそれぞれ齎す)喉音 *h₂ が伴った *e であると帰結することができた。今日まで一部のインド・ヨーロッパ語学者が支持するPIE の音素 *a の可能性に対しては、以下を言うことができる。
- *a は母音交替に参加することがない。(「実際の」PIEの母音である *e, *o, *ē, *ō とちがって他の母音と交替することがない)
- *a は接辞と語末に出現することがなく、非常にかぎられた環境にのみ出現する(通常は語頭の *k のあとで、特にこれが軟口蓋音の /q/ であったかもしれないとすると、a音化した音素の結果であった可能性がある)。
- *a が再構される単語の写映形の出現は通常少数のインド・ヨーロッパ語に限られている。例えば *bʰardʰéh₂「ひげ(beard)」は西部と北部の子孫語派に限られる。このため一部の後期インド・ヨーロッパ祖語の方言的影響、あるいは(感動詞の*way 「悲しいかな!」のような)表情豊かな特性に帰結することが可能であるから比較言語学的分析にとって適切ではない
- *a は他の言語の音声的な *a を借用したものであると主張されてきた。例:セム祖語 *θawru > PIE *táwros「オーロックス」
しかしながら、Manfred Mayrhoferのような他の研究者は *a と *ā の音素は *h₂ とは独立して存在したと主張している。これはこの音素がヒッタイト語の𒀠𒉺𒀸 (al-pa-aš, 「雲(cloud)」と 𒀜𒋫𒀸 (at-ta-aš,「父(father)」) のような喉音の欠在が確認できる写映形が見られる *albʰós「白(white)」や *átta「父(father)」のような再構において存在しているように考えられるためである。
写映形
詳細は「インド・ヨーロッパ語族の音韻法則」を参照。
古代ギリシア語はPIEの初期の母音体系を最も忠実に反映しており、どの音節のPIEの母音も殆ど変化していない。しかし一部の子音特に *s, *w, *y の消失は母音連続における母音の長音化あるいは縮約の引き金を引いた。
サンスクリット語とアヴェスター語は *e, *a, *o がただひとつの母音 *a に合流しており、対応する合流が長母音で起こっている。しかし、(特にアプラウトによる)PIE の長短の違いをギリシア語よりもひときわ忠実に反映しており、ギリシア語と同じ子音消失の問題がない。さらには、*o はしばしばブルクマンの法則から再構され、*e は先行する軟口蓋音の口蓋化から再構される。(インド・イラン祖語(英語版)を参照)
ゲルマン諸語は非語頭音節の *e と *i の合流と同様に *a, *o の長短の合流が見られるが、(特にゴート語の場合は)これらはPIEの母音を再構するのに重要なことにちがいはない。バルト・スラヴ諸語は類似した短母音の *a と *o の合流があり、スラヴ諸語は *ā と *ō の合流がある。
アナトリア語とトカラ語からの証拠は保守的であるから意義深いが、しばしば解釈するのが難しく、トカラ語はとくに、複雑かつ遠大な母音の諸改新がある。
イタリック諸語とケルト諸語はどの母音でも一方的に合流してはいないが、やや使い有用性の低い(特にケルト諸語において、また早期のラテン語にける極端な母音弱化)遠大な母音の変化がある。アルバニア語とアルメニア語は比較的遅い時代に記録されており、他のインド・ヨーロッパ諸語からの烈しい借用があり、複雑かつあまり理解されていない母音の変化があるため、最も有用性が低い。
バルト・スラヴ祖語はPIEの短母音が保存されており、ゲルマン祖語でのもののような *o > *a の変化を経験している。ただし、原初の *o か *a の独自の写映形は、ウィンターの法則故に長音化された母音のような一部の環境で保持されていると提案されている。次いで、早期スラヴ祖語(英語: Early Proto-Slavic)はバルト諸語で保持されている *ō と *ā が合流した。加えて、バルト・スラヴ諸語のアクセントの違いから、後印欧祖語(英語: post-PIE)の長母音がPIEの純粋な長音化された階梯に起源があるのか、あるいは喉音の前での代償延長の結果なのかが識別される。