ウィック回転
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ミンコフスキー空間(4次元時空)の計量は、計量テンソルをdiag(-1,+1,+1,+1)とすると、
となる。一方、4次元ユークリッド空間の計量は
である。ここで、ミンコフスキー空間の時間座標 t を虚数としたとき、すなわち、時間 t を虚軸上の値と制限したとき、ミンコフスキー計量はユークリッド計量となる。逆に、ユークリッド空間上の座標τを虚数としたとき、ユークリッド計量はミンコフスキー計量となる。
物理学では、座標(x, y, z, t) で表現されるミンコフスキー空間上での問題を扱う際、t →-iτと置き換えることで、座標 (x, y, z, τ)で表現されるユークリッド空間上での問題へと変換すると、より簡単に問題が扱える場合がある。このようにして得られたユークリッド空間上での解は、(必要であれば)再びウィック回転され、本来の問題の解が導出される。
統計力学と量子力学の対応
ウィック回転は統計力学を量子力学と対応付ける際にも用いられる。このとき、統計力学における逆温度1/kB T は量子力学における虚時間 と置き換えられる。
まず、温度 T における調和振動子の集団を考える。エネルギー E を持つ調和振動子が実現する相対的確率は、カノニカル分布におけるボルツマン因子の形式でexp(-E /kB T ) と書くことができる。ここで、kB はボルツマン定数である。これより、可観測量 Q の期待値は、規格化定数を省略すると、
と表せる。
次に、ハミルトニアン H のもとで時間 t について発展する基底状態の重ね合わせにおいて、量子的な調和振動子1つを考える。エネルギー E を持つ基底状態の相対的な位相変化はとなる。ここで、は換算プランク定数である。この状態の均一な重ね合わせ
が、任意の重ね合わせ
へと遷移するような遷移確率振幅は、規格化定数を省略すると、
となる。