オークビル・プログラム

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オークビル・プログラム: Oakville Program)は、オーストラリアシドニー工科大学にあるオーストラリア吃音研究センター(ASRC)で開発された吃音介入法の一種。音節リズム発話(STS)と言語的フィードバックを組み合わせたアプローチである[1]

本プログラムは、リッカムプログラムなどの早期介入で十分な効果が得られなかった子どもや、比較的重度の吃音を示す子ども、特に6歳〜12歳の学齢期の児童を主な対象としている[2]

治療の目的は、日常会話において吃音がない、あるいはほとんど認められない状態を達成し、その状態を長期的に維持することである[1]

介入は、家庭を主な実施環境とし、保護者が日常的に治療手続きを行い、言語聴覚士がその指導および監督を行う形式で進められる。初期は週1回(約45分)、対面またはオンラインで臨床家と面談が実施され、特定の基準を満たすと、隔週に移行する[1]

治療の中核となる要素には、子どもに対して音節リズム発話(STS:Syllable-Timed Speech)を用いた発話を促すこと、ならびに流暢な発話および吃音発話に対するフィードバックを提示することが含まれる。これらの手続きは、構造化された練習セッション中および日常生活の中で随時実施される[1]

プログラムは2段階で構成されている。ステージ1では日常会話において、吃音がない、またはほぼない状態を達成すること、ステージ2ではその状態を長期にわたって維持することが目標となる[1]

治療期間中は、吃音重症度評価(SR:Severity Rating)を用いて、吃音の程度を定期的に評価する。SRは数値尺度であり、一般に0を「吃音なし」、10を「極めて重度の吃音」とする段階的評価が用いられる。この評価尺度は、保護者および臨床家によって使用されるほか、年齢や理解度に応じて、子ども自身が自己評価として用いる場合もある[1]

オークビル・プログラムにおいて、治療の第1段階から維持段階である第2段階へ移行するためには、2週間おきの面談において、以下の2つの基準を満たす必要がある[1]

  • コンサルテーション中に観察された子どもの発話に対して、言語聴覚士が行う吃音重症度評価(SR)が「0」または「1」であること。
  • コンサルテーション前の1週間において、保護者が記録した日常場面でのSRがすべて「0」または「1」であり、かつ、その7日間のうち少なくとも4日間が「0」であること。

ステージ2への移行には、2回連続の隔週コンサルテーションにおいて達成されること、すなわち少なくとも4週間にわたり良好な状態が維持されていることが条件とされている[1]

吃音重症度評価(SR)や発話サンプルの録音に、SpeechFitアプリなどのデジタルツールが活用されることもある[3]

手法

音節リズム発話(STS)

音節リズム発話(STS)とは、各音節を一定のリズム(ビート)に合わせて発音する発話技法である。各音節の母音の長さをほぼ均等に保ち、メトロノームのような一定のテンポで、一音節ずつ区切る形で発話する(例:「お・は・よ・う」)。音を断続的に切るスタッカート調の発話ではなく、音節間を滑らかにつなぐレガートな発話が用いられる。

STSでは、すべての音節を均等に強調することにより、一時的に吃音が生じにくい発話状態を作り出し、流暢な発話運動の練習を行うことを目的とする。発話時の声の大きさや高さ、イントネーション(抑揚)は、できるだけ自然な状態を維持する。

言語的な強弱(ストレス)の変化が吃音を誘発する要因の一つであるとする理論モデルがあり、STSは音節間の強弱差を抑制することで、吃音が生じにくい発話条件を作る技法とされている。

練習レベルは子どもの発達段階や吃音の程度に応じて調整される。具体的には、保護者のモデル発話を一定のリズムに合わせて復唱する課題、絵本や写真などを用いて対象物や状況を音節ごとに区切りながら描写する課題(例:「い・ぬ・が・は・し・る」)、自由会話の中でリズム発話を用いる課題などが含まれる。これらの練習において、リズムを用いて流暢に発話できた場合には、肯定的な言語的フィードバックが与えられる(例:「今のリズム、とっても上手だったね!」「スラスラ言えたね」)。

STSは、流暢な発話を獲得するために短期間のみ使用される。治療初期には、臨床家がデモンストレーション・模倣・練習を通して、親子にSTSを指導する。その後、STSは練習セッションで使用され、やがて日常会話の中でも時折用いられる。

初期段階では、1日4~6回、1回5~10分のSTS練習が推奨される。吃音の重症度(SR)が下がるにつれて、練習時間に占めるSTSの割合を減らしていき、最終的にはSTSを使わずに自然に話せる状態を目指す[1]

フィードバック

子どもの発話後に、親が言語的または非言語的フィードバックを与える。吃音がない時は賞賛を与え、吃音が出た時には音節リズム発話(STS)を使って言い直すよう促す(例:「リズムでお話ししてみて」)。これは、流暢な発話後、あるいは吃音が生じた直後に行われる。

フィードバックの提示はリッカムプログラムと類似しているが、リッカムプログラムでは言葉を日常の自然な話し方のまま言い直すよう促すのに対し、オークビル・プログラムでは、音節リズム発話(STS)を用いて発話を言い直すよう求める点が特徴である。

親によるフィードバックは、子どもが音節リズム発話(STS)を十分に習得し、吃音重症度(SR)が著しく低下した後にのみ導入される。プログラムの初期段階ではフィードバックは行わず、STSの練習のみが実施される[1]

比較

ウェストミード・プログラムとの違い

ウェストミード・プログラムおよびオークビル・プログラムはいずれも、音節リズム発話(STS)と呼ばれる、音節ごとに一定のリズムで発話する手法を用いる点で共通している。この発話様式は「ロボット・トーキング」などと称されることがある[4]

両プログラムの相違点として、ウェストミードが主としてSTSの反復練習に焦点を当てるのに対し、オークビルでは保護者による言語的フィードバックが介入要素として組み込まれている点が挙げられる。介入では、滑らかな発話に対する賞賛や、吃音が生じた際の言い直しの要求などが体系的に用いられる[1]

オークビル・プログラムは、ウェストミード・プログラム単独での介入において、改善の停滞や治療継続の困難(ドロップアウト)が生じる場合があったことを背景に、リッカムプログラムで用いられているフィードバック要素を取り入れる形で開発されたものである[5][4]

リッカムプログラムとの違い

リッカムプログラムでは、子どもの話し方そのものを変更することは行わず、自然な発話に対する言語的フィードバックを通じて吃音の軽減を図る[6]。一方、オークビル・プログラムでは、STSという発話様式を意図的に導入し、吃音の生じにくい発話を引き出す[1]

介入構造にも違いがあり、リッカムプログラムは主に「構造化された会話(練習タイム)」から開始されるのに対し、オークビル・プログラムでは治療が進むと、セッションの前半をSTS、後半を自然な話し方(フィードバック付き)で行う「ハイブリッドセッション」と呼ばれる形式が用いられる[1]

外部リンク

関連項目

脚注

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