カテプシン

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カテプシン: cathepsin)は、全ての動物やその他の生物にみられるプロテアーゼである。カテプシンファミリーには10種類以上のメンバーが存在し、その多くはリソソームに存在して低pHで活性化される。こうしたメンバーの活性はほぼ完全にオルガネラ内に限られる一方で、カテプシンKのように細胞外で機能するものも存在し、このタンパク質は破骨細胞によって分泌されて骨吸収英語版過程で機能する。カテプシンは哺乳類細胞のターンオーバーに重要な役割を果たしている。

概要 Cathepsin, 識別子 ...
Cathepsin
カテプシンKの構造
識別子
略号 CTP
Pfam PF00112
Pfam clan CL0125
InterPro IPR000668
SMART Pept_C1
PROSITE PDOC00126
MEROPS C1
SCOP 1aec
SUPERFAMILY 1aec
利用可能な蛋白質構造:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
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メンバー

臨床的意義

カテプシンは、疾患への関与が示唆されている生理過程に多く関与している。システインプロテアーゼ型のカテプシンは、薬剤標的として多くの研究が行われている[1][2]

カテプシンA

カテプシンA英語版の欠乏はガラクトシアリドーシス英語版と関係している[10]。転移性メラノーマの病変部位では、原発巣と比較してカテプシンAの活性が有意に上昇している[11]。また、筋ジストロフィーや除神経が生じる疾患の影響を受けた筋肉では、カテプシンAが増加している[12]

カテプシンB

カテプシンB英語版β-セクレターゼ1と同様に機能し、アミロイドβ前駆体タンパク質を切断してアミロイドβを生成している可能性がある[13]。カテプシンBはペプチダーゼC1ファミリーに属し、その過剰発現は食道腺癌やその他の腫瘍と関連している[14]。また、カテプシンBは卵巣がんなどの腫瘍のプログレッションへの関与も示唆されている[3]

カテプシンD

カテプシンD英語版は、フィブロネクチンラミニンなどさまざまな基質を切断しているようである。他の一部のカテプシンとは異なり、カテプシンDは中性のpHでもある程度のプロテアーゼ活性を有している[15]。腫瘍細胞におけるこの酵素の高発現は、浸潤性の高さと関連しているようである。

カテプシンK

カテプシンKは、哺乳類において最も強力なコラゲナーゼ英語版である。カテプシンKは骨粗鬆症に関与しており、この疾患では骨密度が低下し骨折のリスクが高まる。破骨細胞は体内で骨吸収を行う細胞であり、骨基質におけるミネラル以外の主要なタンパク質構成要素であるコラーゲンを分解するためにカテプシンKを分泌する[16]。また、カテプシンKは他のカテプシンとともに、細胞外マトリックスの分解によってがんの転移にも関与している[17]。カテプシンKをノックアウトしたアテローム性動脈硬化マウスは、アテローム病変のサイズが低下することも示されている[18]。培養血管内皮細胞におけるカテプシンKの発現はずり応力によって調節されている[19]。カテプシンKは関節炎に関与していることも示されている[20]

カテプシンV

マウスのカテプシンLはヒトのカテプシンV英語版と相同である[21]。マウスカテプシンLはアディポジェネシス耐糖能障害に関与していることが示されている。カテプシンLはフィブロネクチン、インスリン受容体IGF-1受容体を分解する。カテプシンL欠損マウスは野生型と比較して脂肪組織が少なく、血清グルコース濃度やインスリン濃度は低い。またインスリン受容体サブユニットや、グルコーストランスポーターGLUT4)、フィブロネクチンは増加している[22]

阻害剤

5種類の環状ペプチドが、ヒトのカテプシンL、B、H、Kに対する阻害活性が示されている[23]。カテプシンKやSを標的としたいくつかの阻害剤は骨粗鬆症、変形性関節症慢性疼痛に対する治療薬としての臨床試験段階に到達しているが、カテプシンK阻害剤レラカチブ(Relacatib)、バリカチブ(Balicatib)、オダナカチブ英語版は、有害な副作用のためにそれぞれ第I相、第II相、第III相で試験が中止されている[24]。カテプシンS阻害剤SAR114137は、慢性疼痛を対象とした第I相試験を通過しなかった。2022年、カテプシンL阻害剤オルゴトレルビル英語版(STI-1558)はCOVID-19治療のための第I相試験開始のFDA認可を受けた[25]

カテプシンザイモグラフィー

ザイモグラフィー英語版ゲル電気泳動の一種であり、酵素の基質を共重合したポリアクリルアミドゲルを用いて酵素活性を検出する手法である。カテプシンザイモグラフィーでは、ゼラチンを共重合したポリアクリルアミドゲル中の泳動度の差異によってさまざまなカテプシンの分離が行われる。電気泳動を非還元条件、ロイペプチン添加のもとで行うことで、酵素は不可逆的分解から保護される[26]。まずタンパク質濃度を決定した後、等量の組織タンパク質をゲルにロードし、電気泳動を行う。その後、ゲルを再生(renaturation)バッファーへ移すことで、カテプシンは天然状態のコンフォメーションへと戻される。そして、特定のpHの活性化バッファーへ移し、37 °Cで終夜インキュベーションする。この活性化段階では、カテプシンによるゼラチン基質の分解が行われる。このゲルをCBCを用いて染色すると、ゼラチンが残っている領域は青く染色されるのに対し、カテプシンの活性があった領域はゼラチンが分解されているため染色されず、白いバンドとして可視化される。カテプシンザイモグラフィーはfmol量の成熟カテプシンKを検出することができる[26]。さまざまなカテプシンはその分子量に応じた泳動度に基づいて同定される。また、各カテプシンにはそれぞれタンパク質分解活性が最大となる至適pHがある。一例としてカテプシンKはpH7または8でゼラチンを分解することができるが、カテプシンLやVはこのpHでは活性を示さない。逆にpH4ではカテプシンVは活性を有するが、カテプシンKは活性を示さない。そのため活性化バッファーのpHを調整することで、カテプシンの種類をさらに詳細に同定することができる[27]

出典

外部リンク

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