コリトラプトル

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コリトラプトル学名Corythoraptor)は、中華人民共和国江西省贛州市から化石が産出した、後期白亜紀に生息したオヴィラプトル科英語版に属する獣脚類恐竜[1]。タイプ種コリトラプトル・ジェイコブシCorythoraptor jacobsi)が知られている[1]。中国南部から産出した白亜紀のオヴィラプトロサウルス類としては7番目の属であり、同地域から産出したフアナンサウルスとの近縁性が系統解析から示唆される[1]。現生のヒクイドリと同様に発達した鶏冠を収斂進化で獲得しており、繁殖用のディスプレイや体温調節など複合的な機能を有したと推測されている[1]

コリトラプトルの化石は中華人民共和国江西省の贛州市に位置する贛州駅英語版付近の建設現場で発見された[2]。産出層準は上部白亜系南雄層であり、カンパニアン階からマーストリヒチアン階と推定されている[2]。発見されたホロタイプ標本JPM-2015-001は同国の遼寧省錦州市に位置する錦州古生物博物館に所蔵された[2]。ホロタイプ標本は頭蓋骨と下顎を伴うほぼ完全な骨格であり、Lü et al. (2017)の骨格図には尾椎肩甲骨烏口骨胸骨・左遠位腓骨などを除くほぼすべての体骨格が図示されている[2]

タイプ種コリトラプトル・ジェイコブシはLü et al. (2017)により命名された[2]。属名は頭部に発達した鶏冠が存在することを反映している[2]。タイプ種の種小名はアメリカの古脊椎動物学者ルイス・L・ジェイコブスへの献名である[2]。ジェイコブスはLü et al. (2017)の筆頭著者である呂君昌や共著者である小林快次李隆濫(リー・ヨンナム)の博士課程指導教官であり[2]、また呂、李、ジェイコブスの3名は小林が所属する北海道大学総合博物館の招聘教授でもあった[1]

特徴

頭蓋骨

頭蓋骨の復元(左)と頭部の復元(右)

コリトラプトルは現生ヒクイドリのものに類似する高い鶏冠を頭部に有しており、その厚さは2ミリメートルで、おそらくその骨はケラチン質で被覆されていた。鶏冠はヒクイドリのものよりも含気化しており、薄い骨の壁によって区分された複数のチャンバーが存在する。このため、鶏冠は非常に柔軟になり、頭突きをはじめとする衝撃に耐えられなかった可能性がある[2]

コリトラプトルの眼窩は比較的大型であった。鼻骨は高度に含気化しているようである。前上顎骨の下部には不規則に分布する孔が存在しており、おそらくこれは血管を通す孔であり、オルニトミムス科と同様にケラチン質の鞘が嘴全体を被覆したことを示唆する。前上顎骨の腹側は大きく破損しており、これは前上顎骨が軽量で、おそらく含気化していたことが窺える。また、は存在しなかった[2]

体骨格

ホロタイプのブロック
ホロタイプのスケッチ

コリトラプトルには12個の頸椎が存在し、そのうち第6頸椎と第11頸椎が最長である。第5頸椎から第12頸椎までは各椎骨の中央部に側腹腔が存在する。側腹腔は第5頸椎において直径約4.8ミリメートルの円形に近く、第6頸椎で長さ約5ミリメートルの楕円形である。前側の関節面は強く窪み、後側の関節面はやや凸である。前側の関節面はほぼ正方形であり、後側の関節面よりも幅広である。肋骨は椎骨に癒合している。神経弓も含気化しており、複数の小型のチャンバーが密集している[2]

コリトラプトルの胴椎は前側の6個の胴椎しか保存されていないため、全体で胴椎が何個であったのかは定かでない。胴椎は頸椎よりも短いが、第2胴椎と第3胴椎は側腹腔がより大型である。前側の関節面は僅かに窪んでおり、後側の関節面はほぼ平坦である。仙椎は後側の2個のみが保存されており、いずれも滑らかで丸みを帯びており、側腹腔が小型である。最後側仙椎の肋骨は頑強であり、骨盤腸骨に位置する寛骨臼後部の突起に接触する。尾椎は前側の5個が保存されており、そのうち前側の3個が完全である。前後の関節面はいずれも平坦である。前側2個の尾椎において側腹腔は小型かつ長く、より後側の尾椎である程度大型化している。ナンカンジアと同様に、最初の椎骨を除いて椎骨には3個の孔(前関節突起および横突起と関節するinfraprezygapophyseal fossa、横突起の基部に存在するinfradiapophyseal fossa、および側腹腔)が存在する。神経弓はナンカンジアのものに類似する[2]

復元図

上腕骨はほぼ完全に保存されており、前肢全体の長さの約27%を占め、手を除けば48%を占める。他のオヴィラプトル科恐竜と同様に、上腕骨は弱く捻じれている。肩付近の三角筋稜は短く、上腕骨長の約31%に亘って伸びる。遠位端は拡大しており、発達した顆が存在する。尺骨は上腕骨よりもわずかに短く、手を含めた前肢全体長の26%を占め、あまり発達しない肘頭英語版を特徴とする。橈骨は尺骨よりもわずかに短くかつ細く、ヘユアンニアの橈骨と同様に頭側に湾曲しているため、尺骨と橈骨との間に空隙が生じている。中手骨の近位端は互いに近く圧縮されている。第I中手骨は最も短く、僅かに下側で窪んでいる。第II中手骨は第I中手骨よりも41%長く、シャフトの直径が全長の13%に達してやや頑強である。第III中手骨は第II中手骨とほぼ同程度の長さであるが、68%細い。指骨は長く頑強であり、最も長い第I指は第II中手骨よりも72%長く、また第III指が最も小型である。末節骨は弱くカーブしており、第I指から第III指にかけて曲率と大きさが減少する[2]

コリトラプトルは竜盤類であり、骨盤の形状も竜盤類型である。コリトラプトルはノミンギアを除く新しい時代の他のオヴィラプトル科恐竜と同様に恥骨が頭側に窪み、また他のオヴィラプトル科恐竜と同様にobturator processが坐骨の中腹に位置していてその形状が三角形である。大腿骨は腸骨よりも長く、後肢全体長の30%を占める。大転子は大型で、小転子は大転子に癒合していた可能性がある。第四転子が存在すると予測される位置には41x15ミリメートルにおよぶ筋痕が存在しており、キチパチカーンと類似する。脛骨は大腿骨よりも19%長く、発達した脛骨稜英語版が脛骨長の約半分に沿って走る。足は後肢全体長の29%を占める。趾骨の本数は第I趾から順に2本、3本、4本、5本である。この中で第III趾が最も長く、第IV趾は第II趾よりもわずかに長い。後肢の末節骨はややカーブしている[2]

分類

コリトラプトルはオヴィラプトル科英語版の恐竜である。系統解析ではフアナンサウルスと共に分岐群に置かれ、またキチパチやZamyn Khondt oviraptorid、リンチェニアオヴィラプトルと近縁とされた。後期白亜紀の華南ではオヴィラプトル科が高い多様性を持っており、3つの異なるオヴィラプトル科の分岐群に代表される。以下はLü et al. (2017)に基づいてオヴィラプトル科の類縁関係を示すクラドグラムであり、太字の種は華南に生息したものを指す[2]

 オヴィラプトル科英語版 

Nankangia jiangxiensis

Yulong mini

Nomingia gobiensis

Oviraptor philoceratops

Rinchenia mongoliensis

Zamyn Khondt oviraptorid

Citipati osmolskae

Corythoraptor jacobsi

Huanansaurus ganzhouensis

Tongtianlong limosus

Wulatelong gobiensis

Banji long

Shixinggia oblita

Khaan mckennai

Conchoraptor gracilis

Machairasaurus leptonychus

Jiangxisaurus ganzhouensis

Ganzhousaurus nankangensis

Nemegtomaia barsboldi

"Ingenia" yanshini

Heyuannia huangi

なお、コリトラプトルを同じユニットから化石が産出したバンジジュニアシノニム(新参異名)とする見解も存在する[3]。Cau (2024)は、前上顎骨のsubnarial processが涙骨の棒状部分に重なることや、前上顎骨のsubnarial ramusが分岐しないこと、鶏冠が含気化していること、鶏冠の後背側が頭蓋天井英語版と比較して急激に高くなることといった特徴がバンジとコリトラプトルとの間で共通することを指摘した[3]。この一方でCau (2024)は両者を区別する形質状態(相対的な鶏冠の大きさや頭蓋骨に占める窓の割合)が個体成長に応じて変化することに触れ、加えてバンジの長い外鼻孔が未成熟のコエルロサウルス類に広く見られるものであることを指摘した[3]

Hao and Xu (2026)では、本属はフアナンサウルスのジュニアシノニムと判断された[4]

古生物学

古環境

出典

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