コンパス座デルタ星
From Wikipedia, the free encyclopedia
| コンパス座δ星 δ Circini | ||
|---|---|---|
| 星座 | コンパス座 | |
| 見かけの等級 (mv) | 5.075[1] (Hp: 5.03 - 5.17[2]) | |
| 変光星型 | EA[2] | |
| 位置 元期:J2000.0 | ||
| 赤経 (RA, α) | 15h 16m 56.8959099600s[3] | |
| 赤緯 (Dec, δ) | −60° 57′ 26.120078136″[3] | |
| 視線速度 (Rv) | -17.80 km/s[3] | |
| 固有運動 (μ) | 赤経: -4.085 ± 0.112 ミリ秒/年[3] 赤緯: -3.758 ± 0.136 ミリ秒/年[3] | |
| 年周視差 (π) | 1.4345 ± 0.1231ミリ秒[3] (誤差8.6%) | |
| 距離 | 3,689 ± 206 光年[注 1] (1,131 ± 63 pc[4]) | |
| 絶対等級 (MV) | -5.2[5] | |
コンパス座δ星の位置(赤丸)
| ||
| 物理的性質 | ||
| 半径 | Aa: 9.256 ± 0.091 R☉[6] Ab: 5.326 ± 0.091 R☉[6] | |
| 質量 | Aa: 20.00 ± 0.50 M☉[6] Ab: 11.41 ± 0.24 M☉[6] Ac: 18.7 M☉[7] | |
| 表面重力 (log g) | Aa: 3.806 ± 0.007 cgs[6] Ab: 4.043 ± 0.014 cgs[6] Ac: 4.2 cgs[7] | |
| 自転速度 | Aa: 150 ± 9 km/s[5] Ab: 141 ± 20 km/s[5] Ac: 126 ± 31 km/s[5] | |
| スペクトル分類 | O8 V[8] (O8 IV[7] + O9.5 V + B0.5 V([5]) | |
| 光度 | Aa: 1.528+0.267 −0.228×105 L☉[6] Ab: 2.183+0.502 −0.409 L☉[6] | |
| 有効温度 (Teff) | Aa: 37,500 K[6] Ab: 30,400 ± 400 K[6] Ac: 28,000 K[7] | |
| 色指数 (B-V) | -0.077[9] | |
| 色指数 (V-I) | -0.06[9] | |
| Aa-Ab系 | ||
| 軌道要素と性質 | ||
| 軌道長半径 (a) | 34.7 R☉[7] | |
| 離心率 (e) | 0.05868 ± 0.0048[6] | |
| 公転周期 (P) | 3.902493 ± 0.000025 日[6] | |
| 軌道傾斜角 (i) | 77.80 ± 0.19 度[6] | |
| AaAb-Ac系 | ||
| 軌道要素と性質 | ||
| 軌道長半径 (a) | 10.64 au[7] | |
| 離心率 (e) | 0.415 ± 0.032[7] | |
| 公転周期 (P) | 1,644 ± 3 日[7] | |
| 軌道傾斜角 (i) | 87.7 度[7] | |
| 他のカタログでの名称 | ||
| CD-60 5539, HD 135240, HR 5664, HIP 74778, SAO 253084, WDS J15169-6057[3] | ||
| ■Template (■ノート ■解説) ■Project | ||
コンパス座δ星(コンパスざデルタせい、δ Circini、δ Cir)は、コンパス座にある連星である[7]。見かけの合成等級は5.075と、肉眼でもみえる明るさである[1]。太陽からの距離は、およそ3700光年である[4][注 1]。分光連星かつ食連星で、いずれも高温の3つの恒星からなるとみられる[5][7]。
コンパス座δ星は、西にみえる13等のG型星との二重星として、19世紀から観測されているが、この2つの恒星は見かけだけの関係であると考えられる[10][11]。
20世紀半ばに、南アフリカのラドクリフ天文台による観測で、時期によって視線速度が大きく変わることがわかり、その後、古い乾板の分析と1年半に及ぶ監視の結果、視線速度曲線が描かれ、軌道要素が求められて、分光連星であることが明らかとなった[12]。
ヒッパルコス衛星による観測で、光度曲線が得られると、分光観測からわかった軌道周期と同じ周期で、2度の光度低下を示すことがわかり、コンパス座δ星がアルゴル型の食連星でもあることが示された[9][2]。
紫外線天文衛星IUEによる紫外スペクトルが得られると、主星と伴星の視線速度をはっきり分けることができ、更に、軌道位相に応じた線輪郭の分析によって、第3のスペクトル成分が存在することも示され、コンパス座δ星が分光三重連星であることがわかった[13][5]。後に、この第3星はVLTの近赤外線干渉撮像装置(PIONIER)によって分解され、北西-南東方向に3.8ミリ秒離れており、等級差は1.7等と報告された[1]。
コンパス座δ星は、二重星であることが先にあり、元々のコンパス座δ星がコンパス座δ星A、見かけの伴星がコンパス座δ星Bとなっていたので、分光三重連星は、主星がコンパス座δ星Aa、伴星がコンパス座δ星AbとAcで、コンパス座δ星AaとAbの対が食連星、離れた第3星がコンパス座δ星Acとされる[10][1]。
特徴

コンパス座δ星Aのスペクトル型は、全体としてはO8 V型に相当する[8]。個別の恒星では、主星のコンパス座δ星Aaのスペクトル型がO8 IV、伴星のコンパス座δ星Abのスペクトル型がO9.5 V、コンパス座δ星Acのスペクトル型がB0.5 Vと推測され、いずれも高温高光度の恒星である[7][5]。
コンパス座δ星AaとAbの対は、周期3.90日で、離心率が0.06と円に近い軌道を公転し、軌道長半径は太陽半径の35倍くらいとかなり接近している[7][6]。また、この2星は食連星でもあり、食の減光の深さと継続時間から、より詳しい系の情報もわかっており、軌道傾斜角が約78度、質量はAaが太陽の20倍、Abが太陽の11.4倍、半径はAaが太陽の9.3倍、Abが太陽の5.3倍程度と見積もられている[6]。
コンパス座δ星Acは、コンパス座δ星AaとAbの対の周りを、約1644日周期で公転しており、軌道長半径はおよそ10天文単位、離心率は0.4程度でだいぶ細長い楕円軌道をとる[7]。質量は、コンパス座δ星Abよりも大きいとみられ、干渉計で得られた主星系との等級差と合わせて、コンパス座δ星Acもまた連星である可能性が指摘されている[7]。
星周領域
コンパス座δ星は高温度星で、強力な恒星風が出ていることが期待され、それが星間物質と相互作用すれば、衝撃波が形成される[4]。実際に、コンパス座δ星では、赤外線天文衛星IRASの遠赤外線(波長60 μm)と水素のHα線の掃天観測で、バウショックの構造が検出されており、恒星から13分程離れた位置に、厚さ200天文単位程度の層ができている[4]。