サヤインゲン銀河

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すばるHSCが撮影した銀河 J0113+0106
すばるHSCが撮影した銀河 J1155−0147
すばる望遠鏡のハイパー・シュプリーム・カム(HSC)が撮影したサヤインゲン銀河の例。上がJ0113+0106、下がJ1155−0147

サヤインゲン銀河(サヤインゲンぎんが、:Green bean galaxy) (GBGs) はクエーサー電離エコーと見られる、非常にまれな天体の一種の総称である[1][2][3]。 Mischa Schirmerとその同僚のR. Diaz、K. Holhjem、N.A. Levenson、C. Wingeらによって発見された[1]。 発見論文の段階では、彼らは赤方偏移がz=0.2–0.6くらいの位置にある銀河全体に超高輝度な狭帯線領域(NLRs)をもつタイプ2のセイファート銀河を複数発見したと報告していた[1]

ハワイマウナケア山の頂上にある口径3.6mカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡で撮影されたサーベイ画像を精査していたSchirmerは、rフィルターで強く光っている異常な天体に気付いた。これは、強い輝線スペクトルを持つ天体であることを示唆している[1][4]。実際に、この色の特徴はグリーンピース銀河(GPs)と呼ばれる、市民科学プロジェクトのギャラクシー・ズーで発見されたコンパクトな星形成銀河の特徴と似ていた。しかし、GBGとして知られた天体はGPよりはるかに大きかった[1][5]

GBGの存在は非常にまれで、平均して13億光年四方の立方体の中に1個の頻度でしか見つかっていない[1]。 サヤインゲン銀河というニックネームは、色はグリーンピース銀河と似ているものの、グリーンピース銀河より大きいことからつけられた[1]。 ほとんどのGPにある恒星間ガスは活発な星形成で生じた紫外線によって電離されているのに対して、GBGにあるガスは活動銀河核による硬X線により電離されている。GBGの希少さは、この現象自体が非常に起こりにくいことに加え、起こったとしてもその持続期間が非常に短いことによる[1]

GBGは、ギャラクシー・ズーのボランティアが発見したハニーの天体と呼ばれる天体である、クエーサーの電離エコーと考えられているもう1つの天体と関係があるとされている[6]。 しかしGBGは、ハニーの天体の仲間として「voorwerpjes」と呼ばれている数多くのその他のクエーサーの電離雲と比べて、その光度、大きさ、ガスの質量において10倍から100倍も異なっている[7]。 voorwerpjesは、その明るい状態を2万年から20万年ほど持続させるとされている[7]

GBGの形成メカニズムについては現在も研究が行われている。1つの仮説として、巨大なガスのアウトフローが超高輝度クエーサーの寿命の最終段階で生まれ、その後たとえばAGNフィードバックと呼ばれているようなプロセスを経て急速に活動を停止させるというものが提唱されている[8]。 この説は、かつて非常に活発だったクエーサーから漏れ出ていたX線が、光速が有限である以上クエーサーの停止後も周囲のガスには一定期間届き続け、電離エコーを起こすというものである。

サヤインゲン銀河のリスト (SDSSの第8期データリリースによる)
番号 SDSSでのID 注釈、別カタログでの表記
0011237679077517557845GALEX 全天カタログ (ASC)では J002016.43-053127.1
0021237676441460474246GALEX ASCでは J002434.84+325842.5
0031237666091128914338GALEX ASCでは J011136.63+225357.5
0041237666340800364769NEDでは以前に8件が参照
0051237680284389015833GALEX ASCでは J015930.73+270303.4
0061237650371555229774NEDでは以前に2件が参照、そこにはチャンドラX線観測衛星の2010年のカタログも含む
0071237661386529374363GALEX ASCでは J134709.11+545311.0
0081237662236402647262GALEX ASではC J135155.51+081608.7
0091237665442062663827NRAO VLAスカイサーベイ英語版(NVS)ではJ144110+251702
0101237655742407835791NEDでは以前に1件が、ヒクソン・コンパクト銀河群のようなコンパクトグループとして参照
0111237662306730639531GALEX ASCでは J150420.75+343958.6
0121237667968032637115NVSSでは J150517+194450
0131237669699436675933NVSSでは J205057+055014
0141237680191506678389NVSSでは J213542-031432
0151237680306395415794GALEX ASCでは J220216.57+230904.8
0161237656538051248311プロトタイプのGBG J2240-0927、GALEX ASCでは J224024.09-092748.5
0171237680503434445439SDSS J230829.37+330310.4

VLT/XSHOOTERを用いたサヤインゲン銀河J2240-0927の分光観測

発見報告時にはチリにある超大型望遠鏡(VLT)の多波長(300–2500 nm)中分解能分光器であるXSHOOTERで、サヤインゲン銀河J224024.1-092748 (以降 J2240)の分光詳細観測が行われた[1]。このスペクトルは、UVB領域(中間紫外線、波長315–280 nm)とVIS領域(可視光線)、NIR領域(近赤外線、波長0.75–1.4 μm)で取得された。 論文中では、銀河中心部から±4.5 kpcを積分した領域のスペクトルと、電離雲を中心に7.6 kpc以内の領域を積分したものが比較され、両方とも際立って類似していることが明らかになった[1]

クエーサーの電離エコーの放射特性の解明

サヤインゲン銀河J224024.1−092748 (J2240)

2015年3月に、王立天文学会月報から「サヤインゲン銀河SDSS J224024.1--092748におけるクエーサーの電離エコーの放射特性の解明」と題された論文が出版された[9]

この研究では、サヤインゲン銀河は赤方偏移z ~ 0.3の範囲において最も[O III]輝線で明るいタイプ2の活動銀河核であるとする一方、赤外線での輝度は低いことを指摘している。そしてこれらのガスは最近起こったAGNの活動で放たれた高エネルギーの光子で電離されていると示唆したうえで、この天体がクエーサーの電離エコーであることを支持している。 さらに、J224024.1-092748による解析で、この天体が非常に高輝度なクエーサーが弱い活動銀河核へ変化していく様子の化石的記録であるとしている[9]

AGN電離エコーと熱的エコー、電離欠損

関連項目

出典

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