シチメンソウ

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シチメンソウ
東与賀海岸のシチメンソウ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ヒユ科 Amaranthaceae
亜科 : アカザ亜科 Chenopodioideae
: マツナ属 Suaeda
: シチメンソウ S. japonica
学名
Suaeda japonica Makino
和名
シチメンソウ(七面草)
ミルマツナ(水松々菜)
サンゴジュマツナ(珊瑚樹松菜)

シチメンソウ(七面草; 学名Suaeda japonica Makino)は、塩湿地環境に生育する塩生植物である。晩秋に紅紫色となり「海の紅葉」と呼ばれることもある[1]

朝鮮半島日本に分布し、日本では本州島の瀬戸内海沿岸及び九州島の北西部、都道府県別では広島県福岡県佐賀県長崎県大分県にみられるが、群生は有明海沿岸の福岡県・佐賀県域に限られる[2][3]

河口・内湾の塩性湿地で生育する。満潮時に冠水、干潮時に潟地となるようなところに群落を作り、塩分に対する強い抵抗性と適応性がある[2][3]

形態・生理的特徴

高さ約20 - 50センチメートルで、上部で枝分かれしている[2][4][5]。葉はこん棒状で多肉質であり柄はない[4][5]。一般的に8月下旬から9月下旬にかけて葉の付け根に花がつく[6]。初めは緑色であるが、秋になると紅紫色に変わる[4]。東与賀海岸(佐賀県)の場合、紅く色づくのは10月下旬から11月上旬ごろ[7]種子はらせん状に巻いているが本体であり、発芽の時はこの部分が伸びるのが特徴である[4]

生態・繁殖

シチメンソウは2種類の種子を作り子孫を増やしていく。紅葉した果実の中で種子形成が始まり、11月下旬から12月上旬に種子が形成される[8]。この種子には軟実種子と硬実種子がある。それぞれの種子は渦巻き状で中心部は子葉、外側が幼根である。軟実種子は干潮時に親株から落ち、発芽して潟地に根を差し込み満潮時に備えて幼個体を定着させる。硬実種子は海中を漂い海水に浸された上で湿地で発芽する。軟実種子は親株を普通は軟実が多く硬実は少ない[8]

保全状況・群生地

シチメンソウ
席毛島(韓国・仁川広域市)のシチメンソウ群生地

佐賀県では準絶滅危惧種[9]、長崎県では絶滅危惧IA類[10]に選定されており、環境省では絶滅危惧II類に指定されている[注釈 1][9]。局地的には多産であっても、生育環境の悪化により絶滅が危惧されている[9]

生育環境は海岸、河口の砂泥地(塩湿地)であり、海岸・河川の開発、自然還移などが生存の脅威となる[9]

日本国内のシチメンソウの分布地は、本州の瀬戸内海沿岸や、福岡県、大分県、佐賀県、長崎県などの九州北西部である[2]。佐賀県では、東与賀海岸(東よか干潟)、福富町六角川河岸、鹿島市塩田川河口、鹿島川河岸、有明町の本庄江の河岸などにある[11]

中国では遼東(リャオトン)半島一帯、朝鮮半島西海岸一帯に分布するとされている[11]韓国では、生物圏保護区・世界遺産「韓国の干潟」指定地である順天湾朝鮮語版の干潟に群生地がある[12]

現在、日本におけるシチメンソウの群生地は有明海沿岸の佐賀県域と福岡県柳川市に限られている[13]。日本国内最大の群生地としては、佐賀県佐賀市東与賀海岸(東よか干潟)が挙げられ、堤防に沿い長さ1.6 km、幅10 m[注釈 2]の規模で分布している[13][14]。他佐賀県内では六角川河岸にも生育しているが、その生育面積は減少傾向にある[14]

長崎県諫早市諫早湾に面した小野島海岸には、かつて日本国内最大の群生地があった。ただし、1990年に論文で否定されるまでの間、長らくハママツナと誤認されてきた。報道でも紅葉するハママツナの群落と伝えられ、色づく晩秋には訪れる人があった。小野島海岸のシチメンソウは、諫早湾干拓事業によって1997年4月に潮受け堤防が閉め切られ、調整池内となった水域で塩分濃度が低下したことで、2000年ごろには大半が消失し、群生地は失われた[13][15][16][17]

東与賀海岸における保全と景観利用

東与賀海岸のシチメンソウの群生地は、1987年(昭和62年)5月23日、昭和天皇全国育樹祭のため来県した折にシチメンソウを観覧したことで注目され、知られるようになった[7][13]。その後地元住民の有志により「シチメンソウを育てる会」が発足、種の採取・散布などの保全活動、海岸に漂着するごみの定期的な清掃活動が行われてきた[7][13][18]

なお、東与賀海岸には耐震化した海岸堤防が建設され、1998年に完成している。これによってもとの群生地は消失したが、工事に先立って保護区を設けて新たな群生地が作られている。これは、建設省筑後川工事事務所が専門家に保全を依頼したもので、新堤防の海側に保護区を設置し、播種をして生育させたものである[19]

東よか干潟ビジターセンター「ひがさす」は、干潟に関する展示のほか、2階にパノラマ展望台が設けられ、自然環境や生物の学習・研究および干潟の活用の拠点として利用されている。ここでは、生物やシチメンソウを観察するワークショップを事前申込制で提供している[20][21]

毎年晩秋、10月下旬から11月上旬の時期に紅葉するシチメンソウは、東与賀海岸の秋の風物詩となっており、この時期には観光客が多く訪れる。そして、干潟よか公園とひがさす芝生広場周辺で「シチメンソウまつり」が開催され、シチメンソウ群生地の案内のほか、地元物産の販売、ステージイベントなどを通して地域振興の場となっている[7][18][22]

類似種・分類

類似種

分類

類似種を含め分類上「アカザ科」と書かれている資料もあるが、APGによる新しい分類ではアカザ科はヒユ科に含まれることとなった[26][27]

命名・語源

七面草(シチメンソウ)の名は、七面鳥の顔色のように、初め緑でのちに紫に色変わりすることが由来とされている[4][5][28][29][30]。また別名として、水松々菜(ミルマツナ)[30][31]、珊瑚樹松菜(サンゴジュマツナ)[32]とも呼ばれる[29]。日本の植物学者である牧野富太郎は、ミルマツナと名付けたとされる[28]。ミルマツナは水松松菜で、葉の様子がミルに似ていることを意味する[29]。一方、サンゴジュマツナは紫色に葉が変わることに由来する[29]

脚注

参考文献

外部リンク

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