ジプシーの歌 (ブラームス)
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曲目(作品103)
ブラームスは、親交のあったウィーンの商人フーゴー・コンラートの家を幾度なく訪れていた[注 3]ころ、ブダペストのロツアフエルギーから出版された25曲からなるハンガリー・ジプシーのピアノ伴奏付き民謡集を入手しており[7][8]、このうち15曲を選んでコンラートが子どもたちのハンガリー人乳母2人の助力により[9][注 2]、ドイツ語に翻訳した歌詞[10]を携えて、1887年夏[8]、避暑に訪れていたスイスのトゥーンで[11]、うち11の歌詞に作曲を始めた[8]。そして、同年12月に完成したのが『ジプシーの歌』作品103である[8]。翌1888年に初演された[4][注 4]。
ブラームスは作品103以前に、自分が取材したジプシー民謡を基にオーケストラと4手のピアノのための『ハンガリー舞曲』を作曲しており、その出来栄えは当時のハンガリーの音楽家たちが嫉妬するほど優れたものであった[13]。作品103は、その『ハンガリー舞曲』に声楽的に対応する歌曲集である[14]一方、ブラームスの同じ四重唱曲集である『愛の歌』作品52と『新・愛の歌』作品65に対応する、エキゾチックな歌曲集でもある[15]。
11曲はいずれもジプシー音楽の特徴である4分の2拍子で、全曲共通してジプシーの感傷や情熱を表現しているが、各曲の持つ性格によって異なる技巧が駆使されていて、それぞれにおいて豊かな音響的色彩を放っている[8][7]。
のちに、出版社(ジムロック[16])の依頼により8曲を抜粋してブラームス自身がアルト独唱用に編曲した[13]。8曲は最初の7曲に最後の11曲目を加えたもので、こちらの方が多くの声楽家に演奏されている[17]。
合唱曲として歌われることも多く[18]、日本でも1965年に福永陽一郎により男声合唱に編曲されている[13]。
- 第1曲 He, Zigeuner, greife in die Saiten(おい、ジプシー、弦をかき鳴らせ) - イ短調、アレグロ・アジタート(allegro agitato)[16][19][20]
- 第2曲 Hochgetürmte Rimaflut(高く波打つリマの流れ) - ニ短調、アレグロ・モルト(allegro molto)[21][19][20]
- 第3曲 Wißt ihr, wann mein Kindchen(僕の彼女が一番美しいのは、いつなのか知ってるかい) - ニ長調、アレグレット(allegretto)[21][22][20]
- 第4曲 Lieber Gott, du weißt(神さま、あなたはご存じですね) - ヘ長調、ヴィヴァーチェ・グラツィオーソ(vivace grazioso)[22][23]
- 第5曲 Brauner Bursche führt zum Tanze(日焼けした若者がダンスをリードする) - ニ長調、アレグロ・ジョコーソ(allegro giocoso)[21][22][23]
- 第6曲 Röslein dreie in der Reihe(3つ並んだ赤いばらが) - ト長調、ヴィヴァーチェ・グラツィオーソ(vivace grazioso)[24][23]
- 第7曲 Kommt dir manchmal in den Sinn(ときどき思い出して) - 変ホ長調、アンダンティーノ・グラツィオーソ(andantino grazioso)[25][26]
- 第8曲 Horch, der Wind klagt in den Zweigen(聞け、風が枝の間で嘆くのを) - ト短調、アンダンティーノ・センプリーチェ(andantino semplice)[25][26]
- 第9曲 Weit und breit schaut niemand mich an(誰もわたしを見ていない) - ト短調、アレグロ(allegro)[25][26]
- 第10曲 Mond verhüllt sein Angesicht(月がその顔を覆う) - ト短調、アンダンティーノ(andantino)[25][27]
- 第11曲 Rote Abendwolken ziehn(赤い夕雲が流れる) - 変ニ長調、アレグロ・パッショナート(allegro appassionato)[28][25][27]
ブラームスにおいては、ポピュラーな8曲を取り出した場合に第1曲・第2曲以外の大半の曲調が、ジプシー音楽に多用される短音階(典型はハンガリー音階)でなくむしろ長音階によって作曲されているのが特徴的である(これらの曲を「愉快なナンセンス」と評したという)[28]。
独唱版
ブラームス自身が四重唱用の原曲の中から第1曲から第7曲までと第11曲の計8曲を独唱用に編曲したもの[29]。独唱版は1889年の4月または5月に出版された[9]。
男声合唱版
1965年に福永陽一郎によって男声合唱に編曲されている[13]。楽譜はメロス楽譜から2001年7月10日に出版されている[30]。
4つのジプシーの歌(作品112所収)
『ジプシーの歌』は作品103のほかに、『4つのジプシーの歌』《独: Vier Zigeunerlieder》があり、『6つの四重唱曲』(独: Sechs Quartette)作品112中の後ろ4曲が該当する[8]。4曲は作品103と同様、いずれもコンラートのドイツ語訳の歌詞によるもので、これによりブラームスは、コンラートが翻訳した全部で15のジプシーの詩をすべて作曲したことになる[10]。
コンラートの訳詞による4曲(『4つのジプシーの歌』)は、1891年春にオーストリアのバート・イシュル[注 5]で作曲された[31][32]。そして、先に1888年に作曲していた2曲[33][注 6]と合わせて『6つの四重唱曲』作品112として1891年の11月ころにライプツィヒのペータース社(C.F. Peters)から出版され[32]、初演は非常に好評を博した[36][注 7]。
『ジプシーの歌』は合唱曲として歌われることも多いが[18]、一般的にブラームスの『ジプシーの歌』といえば作品103を指し、『4つのジプシーの歌』《Vier Zigeunerlieder》は作品103ほどには演奏されることがない[8]。
曲目(作品112/3-6)
- 第3曲 Himmel strahlt so helle(天は明るく輝いている) - ニ長調、アレグロ・ノン・トロッポ(allegro non troppo)[34]
- 第4曲 Rote Rosenknospen künden(赤いばらのつぼみが告げる) - ヘ長調、アレグレット・グラツィオーソ(allegretto grazioso)[34]
- 第5曲 Brennessel steht an Weges Rand(いらくさが道端に生えている) - ヘ短調、アレグロ(allegro)[34]
- 第6曲 Liebe Schwalbe, kleine Schwalbe(かわいいツバメさん、小さなツバメさん) - ニ短調、プレスト(presto)[34]