スティーブン・P・ハッベル

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出身校 カールトン・カレッジ(学士)、カリフォルニア大学バークレー校(博士)
配偶者 パトリシア・アデア・ゴワティ
スティーブン・P・ハッベル
生誕 (1942-02-17) 1942年2月17日(84歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国フロリダ州ゲインズビル
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身校 カールトン・カレッジ(学士)、カリフォルニア大学バークレー校(博士)
配偶者 パトリシア・アデア・ゴワティ
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スティーブン・P・ハッベル(Stephen P. Hubbell、1942年2月17日 - )は、アメリカ合衆国の生態学者。熱帯雨林の研究、理論生態学、および生物多様性の分野で国際的に高い評価を受ける。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)およびジョージア大学の名誉教授であり、スミソニアン熱帯研究所(パナマ)のシニア研究員を兼任する。

生物多様性研究において影響力のある理論である生物多様性と生物地理学に関する統一中立説(Unified Neutral Theory of Biodiversity and Biogeography、UNTB)の提唱者として知られる。またパナマのバロ・コロラド島に世界初の大規模森林動態プロットを共同設立し、のちにスミソニアン協会のForestGEO(森林地球観測所)ネットワークへと発展させた。

フロリダ州ゲインズビル生まれ。生化学者を目指していたが、ホンジュラスへの旅をきっかけに生態学へと転向した[1]

1963年、ミネソタ州のカールトン・カレッジにて生物学の学士号を最優秀(マグナ・クム・ラウデ)で取得。1969年、カリフォルニア大学バークレー校にて動物学の博士号を取得した[2]

博士号取得後はミシガン大学助教授(1969-1974年)、同准教授(1974-1975年)、アイオワ大学准教授を歴任。その後、プリンストン大学で生態学・進化生物学の教授を務め(1988年着任)、熱帯樹木の個体群生物学研究を続けた[3]。2003年にはジョージア大学植物生物学部の卓越研究教授に就任。2007年にUCLAの生態学・進化生物学部に着任し、卓越教授(Distinguished Professor)となった[4]。 妻は進化生態学者のパトリシア・アデア・ゴワティ(Patricia Adair Gowaty)で、同じくUCLAの卓越教授である</ref>。

学術的業績

統一中立説(UNTB)

ハッベルの中心的業績は、2001年にプリンストン大学出版局から刊行した著書 "The Unified Neutral Theory of Biodiversity and Biogeography" において発表した生物多様性と生物地理学に関する統一中立説(UNTB)である[5]

この理論は、生態系コミュニティにおける種の多様性と相対的な種の豊富さを、従来のニッチ(生態的地位)理論によらず、確率的過程(ランダムウォーク)によって説明しようとするものである。

中立理論の核心的仮定は、「同一の栄養段階に属する種はすべて中立的、すなわち生態的に等価である」というものであり、出生率・死亡率・分散率・種分化率がすべて一個体あたりで等しいとみなす[6]

この理論は、ロバート・マッカーサーエドワード・O・ウィルソンによる島嶼生物地理学の理論を基盤としつつ、種分化プロセスを組み込むことで、生物多様性(種の豊富さと相対的種の豊富さ)と生物地理学(種-面積曲線)を単一の数理的枠組みで統合した。理論は普遍的な無次元の「基本生物多様性数(θ)」の存在を予測し、この定数と移住(分散)率の組み合わせによって、局所群集から広域的なメタコミュニティまでの種の定常状態分布が決まることを示した[7]

UNTBは発表当初から生態学者の間で激しい論争を引き起こし、ニッチ理論の重要性を再考させる刺激を与えた。批判的な見方も多い一方で、熱帯林の樹木種、バクテリア集団、英国の野鳥、維管束植物など多様な生物群への適用で成功を収めている[8]。2011年には同理論の発表から10周年を記念したレビュー論文が発表され、分散制限・種分化・生態的浮動の重要性を強調する理論として国際的に評価された[9]

バロ・コロラド島プロットとForestGEO

1980年、ハッベルとロビン・フォスター(Robin Foster、現フィールド自然史博物館)はパナマパナマ運河内のバロ・コロラド島(Barro Colorado Island)に、成熟した熱帯林を対象とした50ヘクタールの森林動態研究プロットを共同設立した[10]。このプロットでは、直径1センチメートル以上のすべての樹木を5年ごとにタグ付け・マッピング・測定・同定し、その成長・生存・加入を長期的に追跡した。

このバロ・コロラド島プロットは、熱帯林科学センター(Center for Tropical Forest Science、CTFS)の原型となり、現在はスミソニアン協会のForestGEO(Forest Global Earth Observatory)ネットワークに発展している。ForestGEOは76か国以上の拠点を持ち、1万2,000種以上の樹木・700万個体以上が長期的に監視されている[11]

環境政策への関与

1988年、プリンストン大学在職中にピュー慈善財団(Pew Charitable Trusts)のフェローシップを得て、「国立環境研究所(National Institutes of the Environment、NIE)」の創設を目的とする非営利組織「国立環境科学委員会(CNIE)」を設立した。この組織はのちに全国科学・環境評議会(National Council for Science and the Environment、NCSE)となり、環境意思決定における科学的根拠の向上を使命として活動している[12]

主な著作・論文

  1. The Unified Neutral Theory of Biodiversity and Biogeography. Princeton University Press, Monographs in Population Biology, no. 32. 2001. ISBN 0-691-02128-7.
  2. Hubbell, S. P. (1979). "Tree dispersion, abundance and diversity in a tropical dry forest." Science, 203, 1299–1309.
  3. Hubbell, S. P., Foster, R. B., O'Brien, S. T., Harms, K. E., Condit, R., Wechsler, B., Wright, S. J., Loo de Lao, S. (1999). Light-gap disturbances, recruitment limitation, and tree diversity in a neotropical forest. Science, 283, 554–557.
  4. Rosindell, J., Hubbell, S. P., Etienne, R. S. (2011). The unified neutral theory of biodiversity and biogeography at age ten. Trends in Ecology & Evolution, 26(7), 340–348.
  5. Marquet, P., Allen, A., Brown, J., Dunne, J., Enquist, B., et al., including Hubbell, S. P. (2014). On theory in ecology. BioScience, 64, 701–710.

受賞・栄誉

  • アメリカ科学振興協会(AAAS)フェロー(1980年)
  • ピュー保全・環境フェロー(1990年)
  • グッゲンハイム・フェロー(1983年/1984年)
  • アメリカ芸術科学アカデミー フェロー(2003年)
  • W・S・クーパー賞(米国生態学会、2006年)— 『生物多様性・生物地理学の統合中立理論』への授賞
  • 著名生態学者賞(Eminent Ecologist Award、米国生態学会、2009年)
  • 英国生態学会 生涯功績賞(2013年)
  • 国際森林研究機関連合(IUFRO)科学的業績賞(2014年)— アメリカ人として40年以上ぶりの受賞
  • 米国生態学会 インオーグラル・フェロー(2012年)
  • 国際生物学賞(日本学術振興会、2016年)— 「生物多様性の生物学」部門での受賞。第32代受賞者[13][14]

思想・考え方

ハッベルの理論的立場の核心は、種間の生態的等価性(中立性)という大胆な仮定にある。伝統的な群集生態学は、種がニッチの違いによって共存するという「ニッチ理論」を前提としてきた。これに対しハッベルは、同一の栄養段階に属する種はすべて等価であり、種の多様性パターンは競争や捕食といった決定論的なニッチ相互作用ではなく、「確率的な生態的浮動(ecological drift)・分散制限・種分化率」によって生じると主張する。この理論は集団遺伝学における中立理論(木村資生分子進化中立説)の生態学版と位置づけられる[15]

ハッベルはまた、熱帯林の保全においてデータの充実が不可欠であるという立場を一貫して主張してきた。大規模・長期的なフィールドデータなしには、種分布のメカニズムを理解することも、絶滅速度を正確に推計することも困難であると強調する。バロ・コロラド島プロットとForestGEOネットワークの構築は、こうした信念の実践的表れである[16]

さらにハッベルは、生物多様性の保全には次世代が自然と直接触れ合う経験が不可欠であるという教育的・文化的関心も持ち続けており、一般市民が自らの地域の生物多様性を記録する「市民科学」の重要性を訴えてきた[17]

発言

彼の思想の理解を助けるため、キーワードごとに分類した彼自身の説明等の発言を以下に引用する。

生物多様性データの緊急性
地球上の生命の分布について、もっと良質なデータが必要です。どの種が地球のどこにいるのか、私たちは急いで理解を深めなければなりません。情報を集めるには科学者だけでは到底足りないため、市民のみなさんに身近な生物多様性を記録していただく必要があります。また、保全計画の科学的根拠を高めるために、絶滅速度をより正確に推計する方法についても、もっと深く考えることが求められています。何を持っているかわからなければ、それを守ることもできないのです。」
(原文:"We need much better data on the distribution of life on Earth. We need to rapidly increase our understanding of where species are on the planet. We need citizens to record their local biodiversity. There are not enough scientists to gather the information. We also need much deeper thought about how we can estimate the extinction rate properly to improve the science behind conservation planning. If you don't know what you have, it is hard to conserve it.")[18]
自然保護と次世代への継承
「私たちが大切にしている動植物を守る手を打たなければ、それらはやがて消えてしまいます。子どものころ、私はを集めたり岩をひっくり返したりと、いわゆる勇ましくない遊びに多くの時間を費やしました。自然を救う唯一の方法は、次の世代が自然を実際に体験できるようにすることだと思います。野生の自然を見たことがない人は、その欠如に気づかず、失ってしまった豊かさを惜しむこともないのです。」
(原文:"If we don't take steps to preserve animals and plants that we care about, they are going to be gone. When I was a kid, I spent a lot of time doing non-macho things like collecting butterflies and turning over rocks. The only way we're going to save nature is by making sure future generations experience nature. People who have never seen wild nature don't miss it and don't realize how impoverished their lives have become due to its loss.")[19]
生物多様性の広域観測
生物多様性を本当に大きなスケールで研究するよう研究ネットワークを広げることへの動機として、私が強く感じているのは、知らなければ保全できないという事実です。そして今、私たちはまだその知識を持ち合わせていないのです。」
(原文:"One of the motivations I can see for expanding the study of biodiversity to really large scales is that we can't conserve it unless we know it, and we don't know it at this point.")[20]

関連項目

脚注

外部リンク

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