タイ王国の同性結婚
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| LGBTの権利シリーズの一部 |
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タイ王国の同性結婚(タイおうこくのどうせいけっこん)について概説する。タイにおいて同性結婚は2025年1月23日に合法化された[1][2][3][4][5] 。タイは、東南アジアでは初めて、世界全体で見た場合38番目に同性婚を合法化した国家となった。
セター・タウィーシン政権および主要野党の支持によって結婚平等法が2023年11月に国民議会に提出され、2024年3月27日に人民代表院(下院)で400対10で、6月18日には元老院(上院)で130対4で可決された[6]。同法は8月12日に国王ラーマ10世の裁可を得て9月24日の政府官報で公布され、その120日後の2025年1月23日に施行された[7][2]。 結婚平等法は、結婚を男女間にのみ成立すると規定していた民商法を改正して条文の「男女」「夫と妻」という語を「個人」「配偶者」に置き換え、同性カップルが子供を養子縁組することを許可した[8]。
タイでは、それまで同性間の法的な結びつきはどのような形態も認められていなかった[9][10]。 結婚平等法の制定以前にも、同性間のパートナーシップや同性婚の法案が何度か国会に提出される動きはあったが、可決されなかった。世論調査によれば、国民の大多数が同性婚の法的承認に賛成している[11][12]。
前史
1928年5月、タイのメディアは、バンコクで2人の女性が結婚した話を報じた。結婚の一か月後、カップルの一方が射殺されたという[13]。
同性間のパートナーシップ法制化の動き
2012年12月、インラック・シナワット首相率いる政府はシビル・パートナーシップの形で同性カップルに法的承認を与える法律を立案するための委員会を設立した[14]。2013年2月8日、法務省の権利および自由擁護局と政府の委員会は、委員会の委員長 Viroon Phuensaen が起草した法案についての公聴会を実施した[15]。翌2014年までに法案は超党派の支持を得たが、同年発生した軍事クーデターなどの政情不安により停滞した[16]。
2014年下半期、法案が「シビル・パートナーシップ法」(タイ語: พระราชบัญญัติคู่ชีวิต)として、軍事政権によって任命された国会に提出されるとメディアが報じた。法案は同性カップルに異性間の婚姻の権利の一部を認めるものであったが、下限の年齢を異性婚の17歳から20歳に引き上げていたことと、養子縁組の権利を削除していたことで批判された[17]。
2017年、政府当局は同性間のパートナーシップ法制定を求める6万通もの署名を集めた嘆願書に対し好意的に反応した。権利および自由擁護局の Pitikan Sithidej 長官が嘆願書を受け取り、なるべく早く法案が通過するよう「できる限りのことをする」と確認した[18]。法務省は2018年5月4日に「同性生活パートナーシップ登録法案」と題した法律の草案についての議論を開始した。この草案では、同性カップルは「生活パートナー」として登録することができ、婚姻の権利の一部が認められることになっていた[19][20][21]。法案は11月12日から16日にかけて公聴会で議論され、回答者の98%が法案を支持したと報じられている[22][23]。政府は2018年12月25日に法案を承認した[24][25][26]。2020年7月8日には、2019年総選挙を受けて新たに発足した政府が新たな法案を承認して国会に提出した[27][28]が、年内までの可決には至らなかった。
2023年2月14日、バンコクのドゥシット区が、タイの自治体で初めて同性カップルにパートナーシップ証明書(タイ語: ใบรับการแจ้งชีวิตคู่)を発行した。証明書は法的強制力はないが、関係性の証明書として使用できる。ドゥシット区は、この証明書を使用して、結婚を望んでいる同性カップルがどれほどいるかを概算するとも発表した[29][30]。
憲法裁判所の判決
2011年9月、タイ国家人権委員会と性的多様性ネットワークはタイ政府に対し同性婚法案を提案し、タイ政府に対し法案の支持を求めた[31][32]。2013年9月、ゲイの政治グループの代表 Natee Teerarojjanapong が男性パートナーとの婚姻登録を試みたが拒否されたとバンコク・ポストが報じた[33]。その後の数年間で他の同性カップルの数組も同様の試みを行っている[34]。
2020年2月14日、女性同士のカップルがバンコクで婚姻登録を試みたが拒否され、中央少年・家庭裁判所に異議を申し立てた[35]。彼女たちは、結婚を男女間のみに成立すると規定した民商法1448条が憲法に違反しているとし、婚姻登録を受理するか、憲法裁判所が憲法判断を行うよう訴えた[36]。この当時の民商法1448条は以下の通りであった[35]
婚姻は男女とも満17歳以上でなければ成立しない。ただし、裁判所は、適切な理由がある場合には、17歳未満の者の婚姻を認めることができる。
2021年11月17日、憲法裁判所は、民商法1448条は合憲とする判決を下した。裁判所は、同性カップルは「自然の理に反しており生殖することができず、そのような人々は奇妙な行動や身体的特徴を持つ他の動物と変わりない」と述べた。判決では、LGBTの人々は異なる「種」であり「繊細な人間関係を築くことができないため、切り離して研究される」必要がある存在だと言及されている[37] 。この文言はLGBT活動家たちによって「性差別的で屈辱的」と批判された[38]。判決は以下のように記している。
結婚とは、それぞれの社会の規範・伝統・宗教・法律の下で、男女が共に生活し、子孫を残すために夫婦関係を築くことである。したがって、結婚は男女の間にのみ許されるものである。
結婚平等法による同性婚合法化
2020年6月、野党・前進党の Tunyawat Kamolwongwat 議員は国会に同性婚を合法化する法案を提出した[39]。7月2日に法案に対するパブリックコメントが開始された[40][41] 。
2022年6月、同性婚についての2つの法案が第一読会を通過した。これらの法案は、前進党が提出した結婚平等法案(民商法を改正してあらゆる性別のカップルに結婚を認めるもの)と、政府が提出したシビル・パートナーシップ法案(シビル・パートナーシップを結婚とは別のカテゴリーとして導入し、結婚したカップルに与えられる権利の一部を認めるもの)を含んでいる[42][43][44] 。
数回にわたって修正が加えられたものの、どちらの法案も2023年の総選挙前に議会が解散されるまでに可決に至らなかった。
2023年11月、タイ貢献党のセター・タウィーシン首相は、政府が結婚平等法案を承認したことを発表した[45]。12月21日に国会での審議が開始し[46]、政府の法案以外に野党の前進党と民主党が提出した3つのバージョンの法案も審議された[47][48]。全4法案は369対10という大差で12月21日に可決され[49] 、人民代表院(下院)は2024年のさらなる審議の前に15日間で4法案を1つにまとめるための臨時委員会を設立することを承認した[8]。2024年3月27日、人民代表院は第三読会で400対10(棄権2、無投票3)で統一法案を可決した[50][51] 。法案は4月2日、元老院(上院)でも147対4で第一読会を通過した[52][53]。5月29日、臨時委員会の委員長は6月18日に元老院が法案を採決する予定であると述べた[54][55]。その6月18日、法案は修正なしで元老院の最終読会で可決された[56]。8月12日に国王ラーマ10世の裁可を得て、9月24日に官報で公布された。法律は2025年1月23日に施行された[57][58]。ペートンターン・シナワット首相は法律の公布を歓迎するコメントをSNSで発表した[59]。
結婚平等法(タイ語: พระราชบัญญัติสมรสเท่าเทียม)の制定により、タイは東南アジアで初めて同性婚を合法化した国家となった。改正された民商法1448条は下記の通りである[60]。
結婚は、両当事者が18歳に達している場合にのみ行うことができる。ただし、裁判所は、適切な理由があれば、18歳未満の者への結婚を許可することができる。[注釈 1][注釈 2]
法律の施行を前に、バンコク・プライド・パレードのリーダーである Ann Chumaporn は、バンコク都庁と共同して合同の結婚式を2025年1月23日(合法化当日)に実施すると表明した[62]。1,448人(改正される民商法1448条にちなむ)の同性カップルが参加することを目的としたものである。活動家たちは他の県のコミュニティにも同じような合同の結婚式を開催するよう呼びかけた[63] 。シナワット首相は数組の同性カップルをタイ政府庁舎に招いて結婚を祝福し、インスタグラムに「2025年1月23日は、すべての人の愛が名誉と尊厳をもって法的に認められる、私たち全員が歴史を作る日となるであろう」と投稿した[64]。
内務省によると、合法化当日の1月23日に、1,754組以上の同性カップルが結婚した[65][66]。そのうち約650組がバンコクのカップルであった[34]。2025年5月19日、国王ラーマ10世とスティダー王妃が初めて同性カップルの王室主催の結婚式を執り行った。これに先立って2月1日、国王夫妻は結婚登録のお祝いとしてカップルにブーケと贈り物を下賜していた[67]。
同性婚合法化後の統計
合法化から2026年1月までの約1年間にタイでは26,287組の同性カップルが結婚しており、これは同期間の結婚全体の約10%にあたる。そのうち24%が男性同士の、76%が女性同士のカップルの結婚であった[68]。
世論

タイの世論調査では、同性婚の法的承認が一貫して支持されている[69][70][71]。2019年のYouGovの世論調査では、回答者1,025人のうち63%のタイ人が同性間のパートナーシップ法制定に賛成し、11%が反対、27%が無回答であった。支持率は年代によって異なり、18~34歳の69%が賛成(10%が反対)、35~54歳の56%が賛成(33%が反対)、55歳以上は55%が賛成(13%が反対)であった。大学の学位を取得した者は66%が賛成(10%が反対)であったのに対し、そうでない者は57%が賛成(12%が反対)であった。
高所得層の支持率も68%(反対は7%)と高く、低所得層は55%(反対派13%)であった。そして女性は68%が賛成し(7%が反対)、男性は57%が賛成(14%が反対)であった[72]。
2022年の国立開発行政研究院による調査では、80パーセントのタイ人が同性婚に賛成している[73]。同年6月から9月にかけての米ピュー研究所の調査では、60%が同性婚に賛成(「強く賛成」24%「どちらかといえば賛成」36%)で、32%が反対(「強く反対」18%「どちらかといえば反対」14%)であった。支持率は仏教徒の間では68%と高く、一方でイスラム教徒の間では14%と低かった。この支持率は、調査を行った東南アジアの6か国の中ではベトナムの65%に次ぐ高さであった[11]。
同性婚法案が国会に提出された前後の時期である2023年10月31日~11月14日に行われた政府の調査では、96.6%が法案に賛成していた[12][74]。反対意見は主に、タイでは少数派であるイスラム教徒に集中していた[75]。