ダラー・プリンセス

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ダラー・プリンセスDollar princesses ドルのプリンセス)、時としてダラー・ダッチェス (Dollar duchesses ドルの公爵夫人) は、19世紀後半から20世紀前半にかけて一挙に増加した、称号を持つ欧州の王侯貴族に嫁いだ英語版アメリカ合衆国籍の富裕層の女性を指す語である。

ブレナム宮殿の外廊でくつろぐコンスエロ・ヴァンダービルトと義理の従弟ウィンストン・チャーチル、1902年。ウィンストンの母レディ・ランドルフとコンスエロの2人の米国人花嫁のもたらした潤沢な持参金が、経済的没落に瀕していた英国のマールバラ公爵家を救った。

定義と事例

彼女たちは大抵、新興成金の産業資本家の娘であり、家族の社会的な承認欲求から、莫大な持参金を付けられ、大英帝国を始めとする欧州諸国の、高貴な称号を持つ男性たちの花嫁となり大西洋を渡った。こうした政略結婚は、米国が獲得しつつあった経済的富と、米国では手に入らぬヨーロッパの伝統的特権との交換、一種の贈与交換として機能した。『称号を持つアメリカ人(Titled Americans)』(1915年)という書籍に拠れば、金ぴか時代進歩主義時代に、アメリカ人女性とヨーロッパ貴族男性の縁組は合わせて454組あった[1]アメリカ議会図書館は発行したある解説書の中で、この時期の「イギリス貴族院議員の3分の1以上が米国人の女子相続人を妻に迎えていた」と主張している[1]。英国の『スペクテイター』誌は「6人の公爵」を含む102名の「爵位ある英国人貴族」が米国人女子相続人と結婚していると報じた[2]

著名なダラー・プリンセスには以下のような人物がいる。

欧州においてダラー・プリンセスは、米国籍に限らず、貴族称号を持つ男性と結婚した資産家平民女性を指す語として使用される場合があった[10]

  • 後にサイレント映画スターとなるエリー・マリー・タウロウ英語版は、富裕なノルウェー人画家フリッツ・タウロウの娘で、1903年、ドイツ系スウェーデン貴族フレーリヒ家スウェーデン語版出身のオペラ歌手ルイ・フレーリヒと結婚した際、デンマークの新聞に「ダラー・プリンセス」と報じられた。しかしタウロウ家はノルウェーの名家であり、貴族との通婚によって社会的身分の上昇を図る必要はなかったため、この報道は不正確だった[10]

フィクション

ミュージカル『ダラー・プリンセス』の楽譜、1908年、リーズ大学図書館蔵

ダラー・プリンセスの語は彼女たちが多く出現した時代のフィクションにおいて頻出し、例えばジョージーナ・ノーウェイ英語版の『トレガーセン(Tregarthen)』(1896年)においては次のように言及される[11]

コンヴェントリーでの生活は独り身の男性でも高くつきますから、アルジャーノン様の借金はなかなか全額返済できませんし、他方で独身の若い女性たちもみな、断言できますが、みな惨めなほど貧乏なのです。そしてまた誓って本心ですが、マダム・エリーズからの請求書を伯爵[である貴方]に送り付ける仕事は本当に私にとって不本意なのです!信じてくださいね。こうなると私たちは貴方のためにアメリカ人のダラー・プリンセスを探さねばなりません。彼女たちは[貴族の]称号を欲しがっていると言いますし、そうでないと私たちも困ります。

ヘンリー・ジェイムズの『黄金の盃英語版』(1904年)において、米国人の富豪で美術品収集家のアダム・ヴァーヴァーと一人娘のマギーは帝国主義者のように欧州の美術品を奪い取る「略奪者」と形容され[12]、ヴァーヴァーはイタリア人の没落貴族アメリーゴ公爵を「ここヨーロッパでしか得ることのできない蒐集品の一つ」として収集し、マギーと彼を結婚させ[13]、マギーはダラー・プリンセスの1人に納まる。

オーストリア人作曲家レオ・ファルのドイツ語オペレッタ『ダラー・プリンセス英語版』(1907年)はファルの出世作となった。同作の英語版ミュージカル『ダラー・プリンセス英語版』(1909年)はジェローム・カーンによる歌曲の追加等を経て完成し、英米で上演された。

1920年に刊行された英国のある小説の書評には、「あらすじは至って単純で、アメリカ人の粗野な『ダラー・プリンセス』とランカシャー出の可憐な令嬢の2人の若い資産家女性が、先祖代々の信仰を守る農業経営者の若い準男爵の愛をめぐって争う話が中心である」とある[14]

イーディス・ウォートンが生涯最後に着手し、未完となった小説『バッカニアーズ英語版』(1938年)は、ダラー・プリンセスたちを中心人物に置いている[5]

ジュリアン・フェロウズ製作の英国ドラマシリーズ『ダウントン・アビー』(2010年 - 2015年)の主要人物の1人であるグランサム伯爵夫人コーラ・クローリーは、莫大な持参金で同伯爵家を経済破綻から救ったダラー・プリンセスであり、アメリカ人女優エリザベス・マクガヴァンによって演じられた。

2020年代に入っても、英語圏のロマンス小説では金ぴか時代のダラー・プリンセスを主人公とするシリーズが刊行されている[15]

引用・脚注

参考文献

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