ティモシー症候群
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ティモシー症候群1型の最も顕著な特徴は合指症(1000-3000人に1人[3])とQT延長症候群(先天性は5000-7000人に1人[4])がともにみられることである。他の症状としては徐脈性不整脈(94%)や心奇形の一つである動脈管開存症(59%)、自閉スペクトラム症(評価可能なほど長く生存した患者の80%)などがある[5]。鼻が扁平化するといった顔面奇形は約半数に認められる[5]。ティモシー症候群1型の小児はエナメル質の形成に乏しいために歯が小さく[6]、虫歯になりやすい[5]。これらの症状により平均寿命が2.5歳とかなり致命的であるが[5]、なかには20代中盤から後半まで生存する例も多数報告されている[7]。
ティモシー症候群2型は従来の1型と大部分は同様の症状を示す。2型の1型との違いは合指症が見られないことや関節過可動性のような筋骨格系の異常があること、股関節の形成不全を起こしやすいこと、などがある。ティモシー症候群2型の患者には額や舌の突出といった顔面奇形も認められる[8]。
病態生理学

ティモシー症候群には従来の1型と2つ目のタイプである2型という2つの型が存在する。どちらもカルシウムチャネル Cav1.2をコードするCACNA1C遺伝子の変異によって起こる。ティモシー症候群のCACNA1Cにおける変異はチャネルの電位依存的な不活性化による閉鎖を遅らせ、細胞の興奮性を高めることで症状を来す[7]。
ティモシー症候群の両タイプはCANA1Cの変異により起こるが、これらの変異は1型ではエクソン8Aの、2型ではエクソン8の変異が原因である。エクソン8とエクソン8Aはどちらかしか存在しえない。エクソン8Aは心臓、脳、消化管、肺、免疫系、平滑筋などに高発現している。エクソン8はこれらの領域に発現しているうえ、その発現量が約4倍もエクソン8Aより高い[7]。
ティモシー症候群1型においてはG406R(406番目のグリシンのアルギニンへの変異)が発見されている。Cav1.2は6回膜貫通の膜貫通領域が4つ連なった24回膜貫通の単量体一つでイオンチャネルを構成している。各6回膜貫通部分はN末端側からS1~S6と順に名付けられており、G406は最もN末端側の膜貫通領域のS6の細胞内側に存在する。この位置のグリシンは保存されており適切な電位依存的な不活性化に重要であるようである[5]。ティモシー症候群2型の変異も同様で、G406R変異が別のスプライシングの形式のチャネルにおいて起こったものである。2型で発見されている変異にはG406から少しN末端側にある部分のG402S(402番目のグリシンのセリンへの変異)もある[8]。ただし、G402S単独での変異ではティモシー症候群の症状がなく単に不整脈が起きただけの症例もあり、G402S変異のみではティモシー症候群発症には至らないと考えられている[11][12]。G406R変異によるチャネル機能への影響はティモシー症候群の2タイプで同一である[8]。これらの変異により適切な電位依存的な不活性化が欠如すると内向き電流が延長することで心筋における活動電位で脱分極が長引き、QT延長症候群や不整脈の原因となる。エクソン8はエクソン8Aよりも心臓でより発現しているため、ティモシー症候群2型の患者は1型の患者よりも心臓への障害が悪化する[7]。
患者で発見された変異と同一の変異を持つブタのモデルからカルシウムの過負荷状態が心臓の拍動の伝播を遅くすることによりリエントリー性不整脈の基盤になっているということが明らかになった[13]。CaMKIIの自己リン酸化がナトリウム電流を減少させ、これにより伝導を遅くしていると考えられる[13]。
ティモシー症候群は常染色体顕性遺伝により遺伝するものの、発症したときの致死率の高さから両親の片方に変異がありそれを受け継いで発症するケースは稀である。そのため、多くのティモシー症候群の患者は出生前に生殖細胞で変異が生じたことによって罹患していると考えられている[7]。このような発症形式はde novo変異(新生変異)と呼ばれる[14]。
診断
治療
プロプラノロールを含め交感神経β受容体遮断薬は心臓のリズムを維持するペースメーカーとともに治療として望ましいと考えられている。カルシウム電流に異常をきたす、というティモシー症候群の特徴から、カルシウム拮抗剤が治療薬として想定されるが、L型カルシウムチャネル阻害薬の臨床試験によるとそこまで効果的でないと考えられている[15]。
