トリロスタン

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トリロスタン(Trilostane)は、ヒトのクッシング症候群コン症候群閉経後乳癌などの治療に使用されてきた医薬品である[2][3][4][5][1]米国では1990年代にヒトへの使用が中止されたが[6]、その後、2000年代にイヌのクッシング症候群の治療薬として獣医学的に使用が承認された[7]。日本では2021年現在でもヒトへの使用が認められている[8]。投与方法は、経口投与である[1]

販売名 Desopan, Modrastane, Modrenal, Trilox, Vetoryl, Winstan
別名 WIN-24,540; 4α,5-Epoxy-3,17β-dihydroxy-5α-androst-2-ene-2-carbonitrile
概要 臨床データ, 販売名 ...
トリロスタン
臨床データ
販売名 Desopan, Modrastane, Modrenal, Trilox, Vetoryl, Winstan
別名 WIN-24,540; 4α,5-Epoxy-3,17β-dihydroxy-5α-androst-2-ene-2-carbonitrile
AHFS/
Drugs.com
monograph
投与経路 By mouth[1]
ATCコード
法的地位
  • US: Veterinary use
薬物動態データ
代謝 Liver
代謝物質 17-Ketotrilostane[1]
消失半減期 Trilostane: 1.2 hours[1]
17-Ketotrilostane: 1.2 hours[1]
識別子
CAS登録番号
PubChem
CID
IUPHAR/BPS
DrugBank
ChemSpider
UNII
KEGG
ChEBI
ChEMBL
CompTox
Dashboard

(EPA)
ECHA InfoCard 100.033.743 ウィキデータを編集
化学的および物理的データ
化学式 C20H27NO3
分子量 329.440 g·mol−1
3D model
(JSmol)
  (verify)
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効能・効果

トリロスタンは、ヒトにおけるクッシング症候群(高コルチゾール血症)、コン症候群(高アルドステロン血症)、閉経後乳癌の治療に使用されている[3][1]。乳癌の治療に使用する場合、トリロスタンは糖質コルチコイド欠乏を防ぐためにコルチコステロイドと併用して投与される[1]

獣医学領域

トリロスタンはイヌのクッシング症候群の治療に使用される。この効能に対するトリロスタンの安全性と有効性は、いくつかの研究で示されている[9][10]。成功は、血液検査の結果と身体的症状の改善(食欲と活動レベルの正常化、および浅速呼吸、口渇排尿の減少)によって評価された[9][10]

禁忌・慎重投与

禁忌

妊婦または妊娠している可能性のある婦人[8]

慎重投与

重篤な腎障害または肝障害のある患者[8]
副腎皮質機能の低下している患者[8]
副腎皮質機能抑制剤を投与中の患者[8]

獣医学領域

以下のようなイヌには投与してはならない。

副作用

重大な副作用は設定されていない[8]

悪心・嘔吐、食欲不振などの消化器症状(7.4%)、AST(GOT)・ALT(GPT)の上昇などの肝機能異常(4.1%)、発疹紅斑瘙痒感などの過敏症状(3.7%)などが発生する[8]

トリロスタンとコルチコステロイドを併用した場合のヒトでの副作用には、胃炎嘔気嘔吐下痢などの消化器系の副作用がある[1]非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、トリロスタンによる下痢の発生率を低下させる可能性がある[1]消化性潰瘍、糜爛性胃炎、胃穿孔吐血下血など、トリロスタン単独またはNSAIDとの併用による深刻な消化器系の副作用が発生する可能性がある[1]。トリロスタンにより、可逆性顆粒球減少症および一過性の口腔内感覚障害が起こる可能性がある[1]

作用機序

トリロスタンは3β-HSDを阻害する。

トリロスタンは、ステロイド生成を阻害する薬剤である[1]。特に3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3β-HSD)を阻害する[1][14]。この作用により、トリロスタンは、プレグネノロン17α-ヒドロキシプレグネノロンデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオールなどのΔ5-3β-ヒドロキシステロイドが、プロゲステロン17α-ヒドロキシプロゲステロンアンドロステンジオンテストステロンなどのΔ4-3-ケトステロイドにそれぞれ変換されるのを阻害する[1]。その結果、トリロスタンは、アンドロゲンエストロゲンプロゲストーゲン糖質コルチコイド鉱質コルチコイドなど、あらゆる種類のステロイドホルモンの産生を阻害する[1]

クッシング症候群やコン症候群におけるトリロスタンの作用機序は、副腎におけるコルチゾールアルドステロンなどの副腎皮質ホルモンの産生を阻害することにある[15][16]。また、トリロスタンは、プロゲステロンの合成を阻害することから、人工妊娠中絶薬としても使用されている[1][17]

トリロスタンはアロマターゼ阻害剤ではないので、アンドロステンジオンテストステロンなどのアンドロゲンがエストロンエストラジオールなどのエストロゲンに変換されるのを阻害しない[1]。しかし、トリロスタンは、それにも拘わらず、アンドロゲン合成を阻害することでエストロゲン合成を阻害する可能性がある[1]

ステロイド合成阻害に加えて、トリロスタンは、エストロゲン受容体との直接的かつ推定上のアロステリックな相互作用を介して、非競合的抗エストロゲン薬英語版として作用することが判明している[1][18][19]。閉経後の乳癌に対するトリロスタンの有効性は、この明らかな抗エストロゲン活性に関連していると考えられる[1][18][19]。また、トリロスタンはアンドロゲン受容体作動薬として作用することが知られている[20]。そのため、男性の前立腺癌患者への使用には注意が必要である[1]

薬物動態

トリロスタンは、肝臓代謝される[1]。トリロスタンの主な代謝物は17-ケトトリロスタンである[1]。トリロスタンから17-ケトトリロスタンへの変換は可逆的であることから、トリロスタンと17-ケトトリロスタンは体内で相互に変換されることが示唆されている[1]。17-ケトトリロスタンはトリロスタンの3倍以上の濃度で循環しており、3β-HSD阻害剤としてトリロスタンよりも活性が高い[1]。トリロスタンと17-ケトトリロスタンの消失半減期はともに1.2時間であり、トリロスタンの服用後6~8時間で血中から消失する[1]。17-ケトトリロスタンは腎臓から排泄される[1]

化学的特徴

トリロスタンの化学名は、4α,5-epoxy-3,17β-dihydroxy-5α-androst-2-ene-2-carbonitrileで、合成アンドロスタンステロイドであり、3α-アンドロスタンジオール英語版3β-アンドロスタンジオール英語版ジヒドロテストステロンのような5α-還元型アンドロスタン類縁体の誘導体である[2]

合成法

トリロスタンは、テストステロンから4段階で合成できる[要出典]

歴史

リロスタンは1970年にスターリング・ウィンスロップ研究所で合成され、1980年より英国で使用され始めた[21]:1。日本でも1985年に使用承認された。

トリロスタンは、1994年4月に米国市場でのヒトへの使用が中止された[22][23][6]。英国でもヒトのクッシング病および乳癌の治療薬として使用されていたが、最終的には英国でも使用中止となった[6][24][25][9]

トリロスタンは、米国では2008年にイヌのクッシング病(副腎皮質機能亢進症)の治療薬として承認された[26]。英国では、米国で承認される前から、イヌ用に処方されていた[11]。また、本剤はイヌの皮膚疾患であるX型脱毛症の治療にも使用されている[22][27][28]

研究

トリロスタンは、閉経前乳癌の治療薬として研究されていた[1]

参考資料

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