トレンチ調査 (考古学)
From Wikipedia, the free encyclopedia
トレンチは、遺跡の範囲において調査しない範囲を残しつつ一定の幅で平行に設定されたり、古墳などの調査では縦断するように設定されることがある。多く見られるのが幅2mや1mのトレンチである。近年では、油圧ショベルなどの掘削機が表土をはがすために用いられ、遺構あるいは自然にできた風倒木痕[1]などの坑を短時間に検出することができ、限られた範囲で遺跡の状況を把握するために活用されている。一方、場合によっては遺構が全く検出されないこともある。トレンチによる試掘調査の結果は、本格的な調査を行った場合にどの範囲まで調査すべきなのか、現に調査を行っている遺跡はどのくらいの重要性をもつのか判断する材料になる。
トレンチは、その位置、長さ、大きさ、設定する方向を任意に定めることができるという利点があり、狙ったところへ1本入れることにより、その遺跡の性格についての仮説の是非や調査の戦略をたてる上で大きな効果を期待できる。つまり、期待した遺構、遺物が検出される場合もあれば、全く遺構が検出されないというのも調査の戦略上大きな成果として期待できる。
トレンチを用いた試掘調査は、開発業者のために遺跡の価値や遺跡の全体的な規模を判断するためのサンプル調査という意味あいで行われることが多く、遺跡の保護につながるのかという議論がある。また、トレンチの配置やトレンチによるわずかな表土除去、たとえば5%ほど表土をはがしただけで遺跡の全貌がわかるのか、遺跡を残した先人たちの活動がどのように行われたのかということがトレンチによる試掘調査によって正確に把握できるのかどうか、開発行為は、埋蔵文化財を永久に破壊する行為であり、試掘調査の精度がどれだけ信用できるかといった議論は、埋蔵文化財の保護という観点から、世界的に重大な問題であるといえる。考古学の研究において、ある仮説が誤ったものであるかどうかということさえ証明できないような重大な失敗の数がどれほどの量になるかを見積もることは困難である。しかし、発掘調査期間中に過去の先人たちの活動について相対的で限られた範囲でしかさかのぼって再現できないとはいっても、ある程度の判断の材料になりうるのは確かである。
