リブロポート
From Wikipedia, the free encyclopedia
概要
情報メディアの重要な構成要素である印刷文化の一翼を担い、人文科学・芸術・児童書分野で専門的特色を生かすために設立され、セゾングループの情報発信機能としての役割も果たした[1]。書籍出版のほか、トレヴィル刊行書籍の発売、セゾングループ関連事業として展示会カタログの製作、「白いカレンダー」の発売、西友のKidd's STA-TIONのデザイン開発・版権管理等を行った[1]。
2003年7月に日販傘下となった全国展開の書店チェーン「リブロ」と同系列であり、堤清二による肩入れが大きく、堤のもとでの西武百貨店・パルコなどのグループ全体の経営が傾いたことで、セゾンの出版事業は、セゾン美術館(1999年閉館)と併せ、1998年8月に停止された。
主な刊行書籍
リブロポートは美術・写真系関連の出版で顕著な業績を残し、他にも世界史などの人文科学系や社会科学系など複数のジャンルで全850点近くを出版。書籍は堅牢な造本、瀟洒な装幀で高い評価を得ていた[2]。
児童書
1980年4月に『仔牛の春』を処女出版した。同書は翌年にボローニャ国際絵本原画展に入賞し、1989年にはアメリカのクロニクルブックスより英語版が刊行された[1]。作者の五味太郎はその後リブロポートから絵本27冊等を出版し、最も関わりの深い著者となった[1]。
1980年11月に英語版からの翻訳で出版された『どろぼう夫婦』の作者、児島なおみはその後日本では、事業停止するまでリブロポートからのみ絵本を上梓したが、1985年12月に出版された『クリスマス・ソング・ブック』は10万部を超えるベストセラーとなっている[1]。
人文科学書
1982年10月に創刊の『歴史と社会』は発刊と同時にジャーナリズムの話題になり、多方面からの期待と支持を得た[2]。また1985年10月発行された『クリフォード・ギアツの経済学』は1986年に発展途上国研究会奨励賞を受賞。1986年3月発行の『ラクダの文化誌』は同年サントリー学芸賞を受賞した[2]。
芸術書
アメリカを代表する画家、アンドリュー・ワイエスの画集を1981年3月に刊行し、その後3冊の画集とビデオを出版。1990年にはセゾン美術館で「ワイエス展」が開催され、その図録も製作している[2]。写真集ではハンス・ベルメール、イリナ・イオネスコ、ヘルムート・ニュートン、ブラッシャイなど、シュルレアリスム・20世紀絵画集では、アンディ・ウォーホル、エゴン・シーレ、ピエール・クロソフスキー、バルテュス、ピエール・モリニエなど、現代日本画集では野又穫、鈴木英人、丸尾末広、山本タカト、正子公也などがある。また海外映画・日本映画双方の映画関連書籍も多く出版された。
セゾングループ史
堤清二がセゾングループについて、社外の学者や評論家に自由に分析してもらい、客観性が認められれば、ただ創業者を顕彰しているような社史と違って、経営史の資料としても使ってもらえるのではないか、という期待のもとに[3]、全6巻の社史が編纂されている[4]。セゾングループ史編纂委員会事務局長には、グループ各社を客観的に見ることが出来る人という条件で、ジャーナリスト出身の尾崎勝敏に託され、編集協力は外部のアルク出版企画に依願された[3]。また専属の編集員には、入社したばかりの、まだ無名だった車谷長吉が就任した[3]。
執筆者には、経営学と経済学の『セゾンの歴史』は由井常彦教授を中心に若手の柳沢遊、田付茉莉子、橋本寿朗、小山周三[5]、マーケットへの訴求を焦点にした『セゾンの発想』の巻では上野千鶴子、中村達也、田村明、橋本寿朗という気鋭の社会学者、経済政策、都市計画、経済史の専門家などのほか、文芸評論家の三浦雅士が参加した[4]。『零の修辞学』と名付けられた現代の特徴の分析の巻では、多木浩二、内田隆三を主査に、生井英考、伊藤俊治、片木篤、森下みさ子、山田登世子、吉見俊哉、大島洋、松田行正が、「空洞化する『ゲーム領域』を覆う巨大な力とはなにか」という問題意識を共有した[4]。現代を思想的に分析してセゾングループに迫るという巻は、『トランスモダンの作法』という題名になり、哲学者今村仁司教授を中心に篠原資明、中岡成文、野家啓一、鷲田清一といった、現代知を代表するような若い学者が集まった[4]。
その他
異色なものでは、堤清二が資料を提供し、由井常彦らに分析させた研究評伝『堤康次郎』(編著、1996年)がある。
セゾングループには、「トレヴィル」という美術書の出版部門(1985年 - 1998年)もあった。トレヴィルが刊行する画集など図版本や美術書は、リブロポートが販売した。トレヴィルの書籍には、古書価として高値で取引される美術書が複数あるほか、一部は中公文庫、ちくま学芸文庫、河出書房新社などで改訂再刊された。トレヴィルの出版事業は、エディシオン・トレヴィル(東京都渋谷区)が引き継いでいる。
主なシリーズ出版
- 『冒険の世界史』 - 一部はちくま学芸文庫・中公文庫で再刊
- 『ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ』 - モンス・デジデリオほか全10巻(揃いでの古書は高価)
- 『リブロの絵本』 - 18年間で120点余りを刊行
- 『シリーズ民間日本学者』 - (1986年 - 1995年)に、40数点を刊行
- 『社会科学の冒険』 - 24点を刊行
- 『Music today : biannual series for music & arts』- 季刊、現代音楽誌。no.17(1992年) - 『Music today quarterly = 今日の音楽』の後続誌。
- セゾングループ史
- 由井常彦 編『セゾンの歴史 上巻 変革のダイナミズム』リブロポート〈Serie SAISON 1〉、1991年6月。ISBN 978-4845706242。
- 由井常彦 編『セゾンの歴史 下巻 変革のダイナミズム』リブロポート〈Serie SAISON 2〉、1991年6月。ISBN 978-4845706259。
- セゾングループ史編纂委員会 編『セゾンの活動 年表・資料集』リブロポート〈Serie SAISON 3〉、1991年11月。ISBN 978-4845706266。
- 上野千鶴子ほか 著 セゾングループ史編纂委員会 編『セゾンの発想 マーケットへの訴求』リブロポート〈Serie SAISON 4〉、1991年11月。ISBN 978-4845706273。
- 多木浩二、内田隆三 責任編集『零の修辞学 歴史の現在』リブロポート〈Serie SAISON 5〉、1992年6月。ISBN 978-4845706280。
- 今村仁司 責任編集『トランスモダンの作法』リブロポート〈Serie SAISON 6〉、1992年6月。ISBN 978-4845706297。