ハーグ市電
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| ハーグ市電 | |||
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| 基本情報 | |||
| 国 |
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| 所在地 | デン・ハーグ | ||
| 種類 | 路面電車[1][2][3] | ||
| 路線網 | 14系統(2025年時点)[1] | ||
| 開業 |
1864年(馬車鉄道) 1904年(路面電車)[2][3] | ||
| 運営者 | ハーグ市営交通会社[2][3] | ||
| 路線諸元 | |||
| 軌間 | 1,435 mm[4][5] | ||
| 電化方式 |
直流600 V(路面電車区間) 直流750 V(ランドスタット鉄道区間) (架空電車線方式)[4][5][6] | ||
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ハーグ市電(オランダ語: Haagse tram)は、オランダの事実上の首都であるデン・ハーグ(ハーグ)に路線網を有する路面電車。オランダ初の軌道路線をルーツに持つ歴史の長い路面電車路線で、2025年現在はハーグ市営交通会社(HTM Personenvervoer、HTM)によって運営が行われている[1][2]。
馬車鉄道時代
デン・ハーグ市内の路面電車のルーツは、1864年3月21日に開通し、観光地のスヘフェニンゲンとハーグ市内(ランゲ・ファイデルベルク)を結んだ、オランダ初の馬車路面軌道である。この路線はイギリスの実業家が主導するオランダ軌道会社(The Dutch Tramway Company Ltd.、DTC)によって運営が行われた。一方、1866年にはハーグとデルフトを結ぶ馬車鉄道が開通し、こちらはオランダ鉄道会社(Algemeene Nederlandsche Railroute-Maatschappij、ANRM)が所有した。その後、オランダ軌道会社が所有していた路線については1867年にハーグ軌道会社(Haagsche Tramway Maatschappij)に買収されたが、経営難により1873年にベルギーに本社を構えていたハーグ軌道有限会社(Société Anonyme des Tramways de La Haye、TH)が事業を継承した。また、オランダ鉄道会社(ANRM)についても財政難のため所有路線を一時閉鎖する事態となり、1875年にハーグ軌道有限会社(Société Anonyme des Tramways de La Haye、TH)が継承し近代化の上で運行を再開している[2][3][7][8]。
- 運行開始初日の馬車鉄道(オランダ軌道会社)(1864年撮影)
以降、ハーグ軌道有限会社は両社の路線に加えて新規路線の敷設を積極的に行っていったが、1887年に設立されたハーグ軌道会社(Haagsche Tramweg Maatschappij、HTM)へ継承された。同社はハーグ - デルフト間の路線について、動力を従来の馬から蒸気機関車(スチームトラム)へと同年に変更したほか、1890年からは充電池を用いた電車をハーグ - スヘフェニンゲン間に導入した。しかし、馬車鉄道に代わる軌道区間の主力となったのは架線方式を用いた電車で、1904年から営業運転を開始した。以降、故障が相次いでいた充電池を用いた電車や従来の馬車鉄道を置き換える形で架線による電化が進められ、1907年をもって従来の馬車鉄道は営業運転を終了した[2][3][9][10]。
- 第一次世界大戦前のハーグ市電
第二次世界大戦まで
女性車掌を導入する事態となった第一次世界大戦を乗り越えたハーグ市内の路面電車は1920年代以降路線網を拡大していき、1926年の時点で16系統という大規模な路線網が存在し、その多くがハーグ市内の端にまで路線を伸ばしていた。また、それに先立つ1924年にはデルフトまでの電化が完成し、スチームトラムの営業運転が終了した。そして1927年をもって、路面電車の運営権は新たに設立されたハーグ市が所有するハーグ路面電車合弁会社(N.V. Gemengd Bedrijf Haagsche Tramweg-Maatschappij、GBHTM)へと継承され、事実上の公営化が実施された[2][11][3]。
だが、ウォール街大暴落をきっかけに勃発した世界恐慌により利用客は減少し、路線網の拡張も停滞した。1930年代からはワンマン運転も多数行われるようになり、従来使用されていた付随車の出番も減少していった。しかし、第二次世界大戦の勃発により利用客は急増し、1940年時点の年間利用客が6,000万人だったものが、1943年には1億3,800万人となり、車内に乗車しきれない利用客が路面電車の窓枠や壁にしがみ付く事態となった[2][11]。
戦後の近代化
第二次世界大戦後、モータリーゼーションの進展による自家用車の増加に対抗するため、ハーグ市内の路面電車では近代化の模索が始まった。戦後初期にはオランダ国産の新型電車の導入も実施されたが、本格的な車両の近代化の切り札になったのは、1930年代にアメリカ合衆国で開発された新機軸の路面電車車両であるPCCカーであった。1949年に最初の車両が営業運転を開始して以降継続的な導入が進められ、1965年までにハーグ市電の車両はPCCカーに統一された。その後、1980年代からは電機子チョッパ制御を採用した3車体連接車であるGTL-8形の大量導入が始まり、1993年までにPCCカーは営業運転を終了した[2][11][9]。
一方、施設についても近代化が進められ、1973年に完成したデン・ハーグ中央駅へ高架橋を使って乗り入れる新規の路面電車の電停が1976年に開業し、以降は一部の系統がこの高架橋を経由している。また、運賃の支払いについても従来の車掌を介した業務が廃止され、1965年以降信用乗車方式が用いられている[2][12]。
2000年代以降
2002年に運営事業者の名称が「ハーグ市営交通会社(HTM Personenvervoer N.V.)」に変更されて以降のハーグ市電における大きな事業の1つは、一部区間の地下化(ハーグ・トラムトンネル)である。これはハーグ市内中心部の渋滞対策によるもので、2000年以降工事が開始され、2004年から営業運転を開始している。また、2006年にはハーグを含めたランドスタット地域を結ぶ都市間鉄道網であるランドスタット鉄道(RandstadRail)が営業運転を開始した事に合わせ、オランダ鉄道の一部区間を転換した区間を含め、ズーテルメールを始めとした近隣都市を結ぶ系統が導入されている[2][11][9]。
- 2004年に開通した地下区間(トラムトンネル)(2008年撮影)
車両については2000年代以降超低床電車(アヴェニオ、ティナなど)の導入が進められ、従来のGTL-8形の置き換えが実施されている[2][11][9][4]。
系統
2025年現在、ハーグ市営交通会社(HTM)が運営する路面電車およびライトレール(ランドスタット鉄道)の系統は以下の通り[1][13][14][15]。
| 系統番号 | 起点 | 終点 | 解説 |
|---|---|---|---|
| 1 | Scheveningen Noord | Delft Tanthof | |
| 2 | Den Haag Kraayenstein | Leidschendam | |
| 3 | Den Haag Loosduinen | Zoetermeer Centrum | ランドスタット鉄道 |
| 4 | Den Haag De Uithof | Lansingerland-Zoetermeer | ランドスタット鉄道 |
| 6 | Den Haag Leyenburg | Leidschendam Noord | |
| 9 | Scheveningen Noord | Vrederust | 10号線と経由区間が異なる(デン・ハーグ中央駅を経由) |
| 10 | Scheveningen Noord | Vrederust | 9号線と経由区間が異なる ラッシュ時のみ運行 |
| 11 | Scheveningen Haven | Station Den Haag HS | |
| 12 | Den Haag Duindorp | Station Den Haag HS | |
| 15 | Station Den Haag Centraal | Nootdorp | |
| 16 | Station Den Haag Centraal | Wateringen | |
| 17 | Statenkwartier | Wateringen | |
| 19 | Leidschendam | Station Delft | ランドスタット鉄道 |
| 34 | De Savornin Lohmanplein | Lansingerland-Zoetermeer | ランドスタット鉄道 ラッシュ時のみ運行 |
車両
現有車両
- GTL-8形 - 1980年代以降導入が実施された3車体連接車。2025年現在は後継となる超低床電車への置き換えが進められている。また、1両に関しては2014年以降車内で食事が味わえるイベント用車両「ホフトラム(Hoftrammm)」として運行している[1][2][11][9][16]。
- アヴェニオ - シーメンスが展開する超低床電車。ハーグ市電へ導入されるのは4車体連接車で、70両が使用されている[1][2][11][17]。
- レギオシタディス - アルストムが展開していた、鉄道線と路面電車路線の直通運転(トラムトレイン)に適した車両。2006年から運行している都市間鉄道系統「ランドスタット鉄道」のうち、ハーグ市内へ直通する系統を中心に使用されており、2006年から2011年にかけて72両が導入された[1][9][6][18][19]。
導入予定の車両
- ティナ - シュタッドラー・レールが展開する超低床電車。そのうちハーグ市電向けの車両は3車体連接車で、2022年に56両 + オプション44両という最初の発注が実施され、2025年以降納入が行われている[5][20]。
過去の車両
ハーグ市電で使用されていた車両の一部は、ハーグ公共交通博物館を始めとした各地の博物館で保存されている[21]。