ヒカゲヘゴ

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ヒカゲヘゴ
自生するヒカゲヘゴ(沖縄県石垣島
保全状況評価
IUCN R
分類PPG I 2016)
: 植物界 Plantae
: 維管束植物門 Tracheophyta
亜門 : 大葉植物亜門 Euphyllophytina
: 大葉シダ綱 Polypodiopsida
亜綱 : 薄嚢シダ亜綱 Polypodiidae
: ヘゴ目 Cyatheales
: ヘゴ科 Cyatheaceae
: モリヘゴ属 Sphaeropteris
: ヒカゲヘゴ Sphaeropteris lepifera
学名
Sphaeropteris lepifera
(J.Sm. ex Hook.) R.M.Tryon (1970)
シノニム

同タイプ異名

異タイプ異名

和名
ヒカゲヘゴ
モリヘゴ
英名
Flying Spider-monkey tree fern

ヒカゲヘゴ(日陰杪欏[1]、学名: Sphaeropteris lepifera[2])は、ヘゴ科多年生木生シダ類である。別名、モリヘゴ[3][1][4]

ヒカゲヘゴやモリヘゴのほかに、アヤヘゴ、カクレヘゴ、タイワンヘゴ、ニワヘゴ、ヒヨケヘゴ、ブチヘゴという和名も知られる[4]。ヒカゲヘゴは日陰に生えるヘゴの仲間の意と考えられるが、実際には日向に生育する[1]

中国名は筆筒樹[5][6]

形態

本種の葉。2回羽状複葉。

幹は直立して高く伸びる[3]。大きくなると高さ 7 m を超え[3][4]、基部は径 20 cm に達する[3]。葉柄基部で幹との間には離層が形成され、幹の表面には逆八の字状の葉痕が残る[3]。この特徴はマルハチと共通する[7]

茎と葉柄基部には鱗片が密生する[3]。鱗片は薄く、長さは 4 cm に達し、基部で幅 2–4 mm、辺縁は毛で終わる[3]。淡褐色からほとんど白色を呈し[3]、縁取りはない[8]。鱗片の脱落痕は小瘤状となるが、剌にはならない[3]

は大きいものでは長さ 2.5 m に達し、淡緑色から緑色[3]葉柄は頑丈で、長さは普通 20 cm[3]。基部は膨らんで径 7 cm を超えるものも見られる[3]葉身は倒卵状長楕円形の2回羽状複葉で、長さは 2–3(–4) m[3]。羽片は大きいもので長さ 80 cm になるが、基部のものは小さくなる[3]。小羽片は大きなもので長さ 10–15 cm、幅 1.5–2.3 cm[3]。小羽片の先端は尾状に伸び、鋭頭[3]。小羽片の軸には多細胞の鋭い毛がある[9]背軸側の軸上には藁白色で、卵状または卵状長楕円形の鱗片と、開出毛がやや密に見られる[3]。裂片は厚く、全縁またはほぼ全縁。背軸面は白色を帯びる[3]

胞子嚢群は小羽片の中肋寄りにつき、包膜を欠いて裸出する[3]。側糸は淡色で胞子嚢より長く、狭い鱗片状のものも見られる[3]

染色体数は 2n = 138[3]2倍体[3][1]

生態

琉球列島では、谷間や林中の斜面、あるいは林縁や草地などの陽光の降り注ぐやや湿った場所に生育する[3]。強光下でもよく育つ[10][3][注釈 1]。樹冠を大きく広げ、遠く離れたところからも、山肌に大きな模様を記したような姿が見つかる[4]

ヘゴは幹が細いまま伸長したあと肥厚するが、本種はある程度の太さに達してから一気に伸長する[3]

分布

日本では奄美大島以南にみられ[10][3][4]南西諸島では最も普通に見られるヘゴ類である[11]

国外では台湾フィリピンなどに生息する[3][1]。2006年初めには、台湾北部で本種の葉が異常に枯れ、さらに腐敗して死亡する萎凋病が報告された[5][6]。その後も台湾各地で萎凋病の発生が確認され、北部地域が最も深刻である[5]。これは子嚢菌類の感染によるものと考えられている[6]。フィリピンでは、バブヤン諸島およびルソン島に知られる[4]

中国大陸南部にも自生し[1]、特に広西チワン族自治区海南省雲南省香港澳門に分布するとされる[2]岩槻 (1992) では、香港の記録は人間が持ち込んだものだろうとしている[3]

分類

本種は1841年、ジョン・スミスによって Enumeratio Filicum Philippinarum[注釈 2]中で、その名前がはじめて言及された[12]。1844年、ウィリアム・ジャクソン・フッカーの著作 Species filicum[注釈 3]中で、スミスに帰属して Alsophila lepifera J.Sm. として正式に記載された[12]。タイプ産地はフィリピンのルソン島[1]

日本では長らくヘゴ科は広義のヘゴ属 Cyathea 1属のみが認識され、本種もコープランドによる Cyathea lepifera とされることが多かった[3][1][4]

分子系統解析の結果、本種はヘゴ科の最も基部で分岐したモリヘゴ属 Sphaeropteris に位置することが示されている[13]。葉緑体全ゲノム配列に基づく分子系統解析でもこれは確かめられている[14]

利用

調理例(梅肉和え)

新葉は食用になる[1]。新芽は80センチメートル程度に成長したものが食用に適し、茹でて灰汁抜きしたあとテンプラや三杯酢、酢の物にして食べる。芯は煮込むと大根のような食感となる。煮たヒカゲヘゴの芯は、八重山諸島では祭りの際に欠かせない食品であり、石垣島などでは水煮したものなどの販売もされている。

観賞用にも栽培され[1]校庭などでも施水さえ続ければ育つ[3]

ヘゴマルハチなどとともに、不定根ヘゴ板としてラン科などの着生植物の栽培に用いられる[11][1]

ギャラリー

脚注

参考文献

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