ヘリアーネの奇跡
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『ヘリアーネの奇跡』(ヘリアーネのきせき、ドイツ語: Das Wunder der Heliane )作品20は、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトが作曲した〈不正と逆境に対する愛の救済力〉についての全3幕のドイツ語のオペラ。 リブレットは、ハンス・カルトネーカーが着手したものをハンス・ミュラー=アイニゲン(Hans Müller-Einigen)が引き継いで作成した[注釈 1]。1927年10月7日にハンブルク国立歌劇場で初演された[1]。有名な楽曲「彼の許へ赴った」(Ich ging zu ihm)に基づいたヴァイオリンとピアノのための組曲はショット・ミュージック社から出版されている。
21世紀
ドイツ全土で他の作品の初演を何度も成功させた後、コルンゴルトは1924年からこの新しいオペラの作曲を始めた。1927年の初演の前に、コルンゴルトはこれが彼の傑作であると明言した。
《ヘリアーネ》はハンブルクで世界初演され、批評家にも一般聴衆に対しても大きな成功を収めた[2]。そして、その後の数年間でウィーンやベルリンを含む12の劇場で上演された[3]。1928年にブルーノ・ヴァルターの指揮でベルリン国立歌劇場にて上演された際に、音楽が現代的ではないと感じた批評家から否定的な評価を受けたこともあった。それでも、ナチスの台頭によりユダヤ人作曲家の作品が弾圧されるまでは、広く演奏され続けたのである[2]。
ブレンダン・G・キャロルの『ニューグローヴ世界音楽大事典』の記述によれば『ヘリアーネの奇跡』は間違いなくコルンゴルトの最高のオペラである。彼の以前の作品である『死の都』ほどの人気は得られなかったが、業界ではこの作品に対する高い評価があったということに関しては証拠がある。ロッテ・レーマンは、その有名なアリア「彼の許へ赴った」(Ich ging zu ihm)の録音が彼女のお気に入りの1つであると語っていた[4]。
第二次世界大戦後、《ヘリアーネ》はしばらく忘れ去られていた。しかし、21世紀に入ってロンドンでの注目度の高い公演とBBCのプロムスのソプラノ歌手ルネ・フレミングが歌った「彼の許へ赴った」(Ich ging zu ihm)の曲で、フレミングのスタジオ・アルバムに収録されている。
2010年にはカイザースラウテルンでウーヴェ・サンドナーの指揮、演出はヨハネス・ライトマイヤー、舞台装置担当のダニエル・ドヴォルザーク、衣装デザイナーはトール・デルフラーで上演された。 キャストには、サリー・デュ・ランド(ヘリアーネ)、デリック・ローレンス(支配者)、ノルベルト・シュミットベルク(異国の男)、シルヴィア・ハブロエッツ(使者の女)、アレクシス・ワーグナー(牢番)、ハンス・ヨルク・ボック(盲目の断罪官)、アレクサンドル・ポペスク(若い男)、ユン・バイク・ソク、マイケル・マクブライド、ローランド・ゴロール、フベルトゥス・ボーラー、エリック・エルランセン、ミロスラフ・マジ(審査員)、エレナ・ラボレンツ、ガリーナ・プティンツェワ(天使の声)。
2017年9月、フランドル・オペラで上演され、デヴィッド・ベッシュが演出し、指揮はアレクサンダー・ジョエル、クリストフ・ヘッツァーによる舞台装置と衣装。キャストには、オースリン・スタンダイト(ヘリアーネ)、トール・トマソン(支配者)、イアン・ストレイ(異国の男)、ナターシャ・ペトリンスキー(使者の女)、デンジル・デラエール(盲目の断罪官)、マルクス・スイコネン(牢番)が含まれる。
米国初演は、2019年にニューヨークのバード大学で、第30回目のバード音楽祭の一演目として行われた。レオン・ボットスタインは、クリスチャン・ラスが舞台化した上演でアメリカ交響楽団を指揮した。
フランス初演は、2026年1月と2月にストラスブールのラン国立歌劇場で行われる。このプロダクションは、オペラ作曲100周年を記念して上演される。オランダ・ライス・オペラ(Nederlandse Reisopera)の制作により、ヤコブ・ペータース=メッサーが演出を担当する。指揮はロベール・ウサールとなる。装置・照明・映像はグイド・ペッツォルト、衣裳はターニャ・リーベルマン、振付はニコル・ファン・デン・ベルクが担当する。配役はカミーユ・シュノール(エリアーヌ)、ヨーゼフ・ワーグナー(支配者)、リック・ファーマン(異国の男)、カイ・リュテル・パジュラ(使者の女)、ダミアン・パス(牢番)、ポール・マクナメラ(盲目の断罪官)となっている。
登場人物
| 人物名 | 原語 | 声種 | 初演時のキャスト, 1927年10月7日 (指揮者:エゴン・ポラック) |
|---|---|---|---|
| ヘリアーネ | Heliane | ソプラノ | マリア・フッサ (Maria Hussa) |
| 支配者、ヘリアーネの夫 | Der Herrscher, ihr Mann | バリトン | ルドルフ・ボッケルマン (Rudolf Bockelmann) |
| 異国の男 | Der Fremde | テノール | カール・ギュンター (Carl Günther) |
| 使者の女 | Die Botin | アルト | ザビーネ・カルター (Sabine Kalter) |
| 牢番 | Der Pförtner | バス | ヘルマン・マルコフスキ (Hermann Markowski) |
| 盲目の断罪官 | Der blinde Schwertrichter | テノール | グンナー・グラルド |
| 若い男 | Der junge Mann | テノール | ヤン・ベルリク (Jan Berlik) |
| 6人の審査員 | ポール・シュワルツ、ヘルマン・ジーゲル、ユリウス・グットマン、ピーター・クロイダー、ハーバート・タウベルト、アーノルド・グレーヴェ | ||
| 天使の声 | オルガ・シュラム・チェルナー、フランツィスカ・フォン・イッセンドルフ、オルガ・ヴィーゼ、フリーダ・シッブラー、ゾフィー・ボック、エルナ・ホーマン、ヤンナ・マリア・バルス | ||
| 人々 | 合唱 | ||
楽器編成
演奏時間
第1幕:約40分、第2幕:約70分、第3幕:約40分 合計:約2時間30分
あらすじ
時と場所: 名前のない全体主義国家、未知らぬ時代
第1幕
残酷な支配者は国に対して権力を好き勝手に行使するが、妻ヘリアーネの愛を勝ち取ることはできず苦しんでいる。彼は自分が不幸なので、国民が幸せに暮らすことが受け入れられない。ある若い異国の男が最近この地に到着し、人々に喜びをもたらしている。その結果、異国の男は逮捕されてしまい、死刑を宣告され、日の出の時に処刑される予定となっている。支配者は異国の男の行動の理由を知るために彼を訪ねる。異国の男は慈悲を懇願するが、支配者は彼の死刑を断固として実行しようとする。しかし、支配者は人生の最後の夜、異国の男が鎖から解放された状態でいることを許す。夫が去った後、ヘリアーネは異国の男を慰めるために独房にやって来る。ヘリアーネが異国の男に話しかけ、彼の善良さに気づくと、彼女の憐れみと悲しみの感情は愛に変化してしまう。 異国の男はヘリアーネに彼女の美しさを称賛すると、彼女は長い金色の髪を見せる。その後、彼女は素足を露出し、最後に全裸となって彼の前に立つ。彼はヘリアーネに人生の最後の夜に自分に身を捧げてほしいと頼むが、彼女は拒否し、異国の男のために祈ろうと礼拝堂に赴く。支配者は独房に戻り、異国の男がヘリアーネに支配者を愛すように仕向けることができれば、命を救ってヘリアーネを譲ると提案する。ヘリアーネは裸のまま戻って来る。独房で夫の支配者に会ってショックを受ける。支配者は怒りに怯え、異国の男の死刑とヘリアーネの断罪を命じるのだった。
第2幕
支配者とその使者の女(支配者が拒否した元恋人でもある)は、死刑断罪官と高等裁判所のメンバーの到来を待っている。ヘリアーネは、6人の裁判官と盲目の断罪官が到着したときに裁判にかけられることになる。支配者はヘリアーネを異国の男との姦淫で告発する。ヘリアーネは、異国の男の前に裸で立っていたことは否定できないが、想像しただけで実際に異国の男に身を捧げたわけではないと弁明する。支配者は短剣をヘリアーネの胸に押しあて、自殺すべきだと告げる。異国の男が証言のために連れてこられるが、彼はヘリアーネとしばらく二人きりになりたいと言って、話そうとしない。異国の男はヘリアーネにキスをした後、短剣を奪って自殺し、支配者はヘリアーネが嘘をついていることを証明することが不可能になってしまう。支配者は法廷を解散し、ヘリアーネに、彼女は神の前で裁判を受けることになるだろうと告げる。もしヘリアーネが主張するように無実なら、異国の男を生き返らせなければならないと言う。ショックを受けたヘリアーネは裁判を受けることに同意する。
第3幕
群衆が支配者の宮殿の外に集まっている。裁判官たちは盲目の断罪官とともに、異国の男を生き返らせようとするヘリアーネの試みを目撃するために到着する。試練が始まると、伝達者はヘリアーネに反対する群衆を扇動する。ヘリアーネは泣き、嘘をつかず、若い異国の男を愛していたことを認める。支配者はヘリアーネの涙を見て彼女を救いたいと思っているが、それは彼女が自分のものになることが条件である。ヘリアーネは夫をこれまで以上に恨み、この最後の助命の申し出を断る。群衆は彼女を火刑場に引きずり込むと、ヘリアーネはそこで死んでしまう。突然、雷鳴が鳴り響き、全員が驚き慄く。すると、突然、空に星が現れ始め、葬儀の棺から変身した若い異国の男の死体が浮かび上がるのを見て誰もが驚愕する。奇跡的に彼は生きていたのだった。ヘリアーネは衝撃を受けた群衆から離れ、愛するこの異国の男の腕の中に駆け込でいく。怒りのあまり、支配者はヘリアーネの胸に剣を突き刺してしまう。異国の男は民に祝福を捧げ、権力が崩れた支配者を追放する。異国の男はヘリアーネを腕に抱きしめる。愛で結ばれた二人は天国に昇っていくのだった。
主な全曲録音・録画
| 年 | 配役 ヘリアーネ 異国の男 支配者 盲目の断罪官 使者の女 牢番 | 指揮者 管弦楽団および合唱団 | レーベル EAN番号 |
|---|---|---|---|
| 1992 | アンナ・トモワ=シントウ ジョン・デ・ハーン ハルトムート・ヴェルカー ニコライ・ゲッダ ラインヒルド・ルンケル ルネ・パーペ |
ジョン・マウチェリ ベルリン放送交響楽団 ベルリン放送合唱団 |
CD:Decca EAN:0028943663625 |
| 2017 | アンネマリー・クレーマー イアン・ストレイ アリス・アルギリス ヌットハポーン・タンマティ カテリーナ・ヘベルコヴァー フランク・ヴァン・ホーヴェ |
ファブリス・ボロン フライブルク・フィルハーモニー管弦楽団 フライブルク劇場オペラ合唱団 フライブルク・バッハ合唱団 |
CD:Naxos EAN:4945604604109 |
| 2018 | サラ・ヤクビアク ブライアン・ジャッジ ヨーゼフ・ヴァーグナー ブルクハルト・ウルリヒ オッカ・フォン・デア・ダメラウ デレク・ウェルトン |
マルク・アルブレヒト ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団 ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団 演出:クリストフ・ロイ |
DVD:Naxos EAN:0747313558452 |