ホシミドロ属
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ホシミドロ属(ホシミドロぞく、学名: Zygnema)は、接合藻ホシミドロ目に分類される緑藻の一属であり、単にホシミドロ(星水泥)[10]ともよばれる。学名はギリシア語の zygon(2頭の牛をつなぐくびき)と nema(糸)に由来する[11]。藻体は細胞が一列につながった無分枝糸状体であり、各細胞内には2個の星状葉緑体が存在することを特徴とする(図1)。アオミドロ属に比べて細胞が短く、粘質多糖が少ない。湿原から池沼、水田などの淡水環境に比較的ふつうに見られる。大きな属であり、200種ほどが知られている。
| ホシミドロ属 | ||||||||||||||||||||||||
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| 分類 | ||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||
| Zygnema C.Agardah, 1817, nom. et typ. cons.[1] | ||||||||||||||||||||||||
| タイプ種 | ||||||||||||||||||||||||
| Zygnema cruciatum (Vaucher) C.Agardh, 1817[1] | ||||||||||||||||||||||||
| シノニム | ||||||||||||||||||||||||
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| 和名 | ||||||||||||||||||||||||
| ホシミドロ属[8]、ジグネマ属[9] | ||||||||||||||||||||||||
| 種 | ||||||||||||||||||||||||
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約200種 |
特徴
形態
藻体は多数の細胞が単列につながった糸状体であり、分枝しない[1][12](図2)。水中の藻塊は、アオミドロ属のそれに比べて黄緑色または灰青色を帯びる[12]。ときに付着器(仮根)をもち[11][13]、湿土上に生育する種は糸状体のところどころから不規則に伸びた仮根状の突起を形成することがある[12]。特定の条件では、単細胞になることがある[14]。各細胞は円筒形、直径 10–50 µm(多くは 20–30 µm)、長さは直径と同程度から数倍であり、アオミドロ属の多くで見られるような非常に細長い細胞をもつ種はいない[1][14](図2, 3)。細胞壁に囲まれ、しばしば粘液質を伴うが、一般的にアオミドロ属ほど発達していない[1][13]。細胞間の隔壁は平板状[9]。特に決まった分裂細胞はもたず、基本的に全ての細胞が細胞分裂を行って細胞糸が伸長する[15]。
細胞には、ふつう長軸上に並んだ2個(まれに4個)の星状葉緑体が存在し、各葉緑体の中央には1個のピレノイドがある[1][14][9][12](図1, 2, 3)。細胞中央付近、2個の葉緑体の間に1個の核が存在する[1][9][16]。Zygnema circumcarinatum において葉緑体DNA塩基配列が決定されており、逆位反復配列を欠き、他の接合藻に比べて大きい(165 kbp)ことが報告されているが、これは遺伝子間配列の増加によるものと考えられている[11][17]。
生殖
藻体の分断、不動胞子 (aplanospore) やアキネート (akinete) 形成による無性生殖を行う[1][14][9][12]。また、接合胞子に似ているが無性的に形成される単為胞子 (parthenospore) も知られている[14][9]。
接合による有性生殖を行う。生殖期の藻塊は、しばしば黄褐色を呈する[9][12]。接合様式として、ふつうはしご状接合(2本の細胞糸が相対して接合)、一部は側面接合(同一の細胞糸内で隣接する細胞間が接合)を行う[1][14][9][12]。はしご状接合では、対応する接合型(交配型)の細胞糸が相対し、ふつう両方から接合管が伸びて細胞間が連結される[9]。つながった細胞は配偶子嚢、その原形質は鞭毛をもたない配偶子となり、形態的には雌雄の差がない同形配偶子であるが、その行動も同形であるものと、異形であるものがある[1][9]。行動も同形であるものでは、両配偶子が移動して接合管内で合体するが(図3a)、多くの種では行動が異形であり、一方(雄性)のみが移動してもう一方(雌性)の細胞内に侵入してここで合体する(図3b)[1][14][9]。ほとんどの既知種はホモタリック(遺伝的に同一な同じ株内で接合を行う)であるが、一部はヘテロタリック(遺伝的に異なる株間でのみ接合)である[1]。
接合子は厚い細胞壁で囲まれ、接合胞子 (zygospore) とよばれ、球形や楕円形[14][9]。接合胞子の細胞壁は基本的に3層からなり、このうち中層は黄色や褐色、または藍色を呈し、平滑または細点や細孔で装飾されている[14][13][9][18]。接合胞子は乾燥や高温に耐性があり、休眠細胞として機能する[18]。条件が整うと、接合胞子は減数分裂を行い、生じた4核のうち1核のみが残り、発芽して糸状体を形成する[18]。異形配偶を行うものでは、葉緑体は母性遺伝する(雌性配偶子由来の葉緑体のみが残る)ことが報告されている[1][18]。
生態
分類
ホシミドロ属(Zygnema)は、ホシミドロ綱(Zygnematophyceae)、ホシミドロ目(Zygnematales)、ホシミドロ科(Zygnemataceae)のタイプ属(模式属)である。ホシミドロ科には、ホシミドロ属と同様に無分枝糸状であるヒザオリ属(Mougeotia)やアオミドロ属(Spirogyra)が分類されていたが、アオミドロ属は系統的にやや異なることが示され、アオミドロ目、アオミドロ科に移すことが提唱されている[21]。また、ホシミドロ科は単細胞性のメソテニウム科と系統的に分けることができないことが示されている(ホシミドロ科の種とメソテニウム科の種が混ざっている)[21]。多遺伝子に基づく系統解析からは、ホシミドロ属がホシミドロ目の中で最初期分岐群であることが示唆されている[21]。
ホシミドロ属は星形の葉緑体をもつ点で、同じく無分枝糸状のヒザオリ属(葉緑体は板状で1枚)やアオミドロ属(葉緑体はリボン形らせん状)とは異なる[22]。また、アオミドロ属は細胞がより細長く、粘質多糖が発達していることが多い点でも異なる[1][14]。
ホシミドロ属と同様に星形(から球形)の葉緑体を2個もつ属として、ホシミドロモドキ属(Zygnemopsis)、ネオジグネマ属(Neozygnema)、ジゴゴニウム属(Zygogonium)がある[22]。ホシミドロモドキ属は、通常時(栄養期)の形態ではホシミドロ属と区別できないが、接合過程が異なり、配偶子嚢内に灰白色で層状の寒天質が形成され、著しく拡張した接合管内で形成された接合胞子は配偶子嚢内まで広がっている[14][22]。ホシミドロ属に比べてまれである[20]。ネオジグネマ属も配偶子嚢内に細胞残渣が生じるが層状の寒天質にはならない[22]。ジゴゴニウム属は湿土上に生育し、側方に伸びる数細胞からなる仮根状構造があり、細胞壁はしばしば肥厚し層状構造を示し、配偶子嚢内に細胞残渣が残り、接合胞子は接合管内で形成され、縫合線をもつ特異な壁で囲まれる[14][22]。分子系統解析からは、ホシミドロモドキ属はホシミドロ属と比較的遠縁であることが示されている[21][23]。一方、ジゴゴニウム属はホシミドロ属に近縁であり、形態的にも中間的なものが存在することから、両属は合一すべきとする意見もある[23]。ネオジグネマ属に関するDNA情報は報告されていない(2025年時点)[24]。
ホシミドロ属は比較的大きな属であり、約200種が知られている(2025年時点)[25]。日本からは25種ほどが報告されている[22][12]。分類形質としては、おもに有性生殖に関わる形質が重視されており、接合胞子の形成位置(同形配偶/異形配偶)、接合胞子の形、色、壁の装飾などが用いられている[14][13][22][12]。栄養体の特徴はあまり重視されていないが、細胞の大きさや葉緑体の形態も比較的有用であることが示唆されている[19]。
分子系統学的研究からは、ホシミドロ属の種が、接合胞子壁中層が黄褐色である種群と藍色である種群に分かれることが示唆されている[23]。また、接合胞子の形成位置(同形配偶/異形配偶)も系統的に比較的安定した形質であることが示されている[23]。