マリア・コリーナ・マチャド
ベネズエラの政治家、ノーベル平和賞受賞者
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経歴

1967年10月7日、カラカスで心理学者兼元テニス選手の母コリーナ・パリスカと鉄鋼実業家の父エンリケ・マチャド・スロアガが儲けた4人姉妹の長女として誕生。祖先を辿ると、歴史画家として知られるマルティン・トバル・イ・トバルに行き着く[1]。
マチャドはアンドレス・ベロ・カトリック大学で産業工学の学位を取得し、カラカスの高等行政学院 (IESA) で金融学の修士号を取得した[2]。
野党のスマテの政治家として国民議会の議員を務め、2014年のニコラス・マドゥロ政権に対する抗議活動や、2024年のベネズエラ大統領選挙の候補者として、マドゥロの独裁主義の政治に対抗し、公平の選挙と民主化を求めてきた。ベネズエラ大統領選挙では政権側から政治的弾圧を受け、公職追放処分を受けるなど事実上、出馬を阻止された。これをきっかけに主要野党が結集し、政権交代への期待が高まる大きなうねりに発展した[3]。
2018年にはBBCの「100人の女性」に選ばれ[4]、2024年にはサハロフ賞を受賞した。さらに2025年には「世界で最も影響力がある人物」の一覧とされるタイム100の一人にも選ばれた。
2025年、「ベネズエラの民主的権利を向上させるための不断の努力と、独裁政権から民主主義への公正かつ平和的な移行を達成するための闘争に対して」ノーベル平和賞の受賞が発表された[5][6]。一方、マドゥロ大統領は受賞を批判し、マチャドの名前を直接挙げず、ノーベル賞にも触れることなく、「人口の90%が悪魔の魔女を拒絶している」と述べた[7]。マドゥロ大統領は外交戦略の見直しとして、在ノルウェーベネズエラ大使館を閉鎖させたが、閉鎖は受賞への反発が原因とみられる[8]。
受賞を受けて、マチャドはノルウェーのオスロで行われる授賞式に出席することを2025年12月5日に表明[9]。同月10日に行われた受賞式には間に合わず、長女が受賞演説を代読したが[10][11]、翌11日未明にオスロに到着した[10]。アメリカの退役軍人であるブライアン・スターンが率いる救出チームによる協力を受けて、秘密裏にベネズエラを脱出し、オランダ自治領キュラソーを経由した上で入国した[12][13]。
2026年1月3日にアメリカ軍の大規模爆撃でマドゥロ大統領が拘束されたことを受け、マチャドは、野党が2024年の大統領選挙で勝利したと主張するエドムンド・ゴンサレスが大統領に就任するよう求めた。ゴンサレスは国家を再建する用意はあるとし、今後数時間が鍵になるだろうと述べている[14]。
同月9日、ノーベル研究所は、マチャドがドナルド・トランプ米大統領に「賞を譲りたい」と発言したことを受け、名指しを避けつつ「ノーベル賞は取り消すことも分け合うことも他者に譲渡することもできない」とする声明を発表した[15][16]。
同月15日にはトランプ大統領とホワイトハウスで会談し、平和賞のメダルを譲渡した[17]。16日、ノーベル賞委員会は「メダルや賞状が他人の手に渡ったとしても、受賞者が変わることはない」との見解を改めて示した[18][19]。なお、トランプ大統領はマチャドについて、マドゥロ大統領を拘束したあとには「彼女が指導者となるのは非常に困難だろう」と述べ、デルシー・ロドリゲス暫定大統領と連携する姿勢を示している[20]。
政策・思想
自由市場・小さな政府・個人の自由を重視する「リベラル(自由主義的)」な政治理念を掲げている[21][22]。英国のマーガレット・サッチャーや米国のロナルド・レーガンの経済政策をモデルとし、国家の肥大化を抑制して市場原理と市民の活力を重視する立場に立っている[23]。
与党との対立姿勢
マチャドは長年、与党・ベネズエラ統一社会党 (PSUV) およびチャヴィズム体制[注 2]を「国家権力の私物化」として批判してきた[24]。マドゥロ政権を「暴力と検閲に基づく不法支配」と呼び、野党指導者や市民活動家の逮捕に強く抗議している[25]。2024年の選挙期間中には、公職選挙法を根拠に出馬資格を剥奪されたが、これを「独裁の証」として国際的圧力を求める運動を展開した[26]。また、議会演説では「我々の闘いは政権交代ではなく、体制の終焉である」と発言し、非暴力的手段による体制転換を訴えている[21]。この強硬な反チャヴィズム姿勢から、支持者からは「民主主義の象徴」と称賛される一方、政権側や一部左派勢力からは「急進的」「分断的」との批判も受けている[27]。
経済政策
マチャドは「大衆資本主義 (capitalismo popular)」の理念を掲げ、国民が財産を所有し、国家の干渉を受けずに経済活動できる社会を目指すとしている[22]。国営石油公社PDVSAを含む国営企業の民営化、為替自由化、補助金の段階的撤廃など、市場原理の回復を重視しており、外国投資の拡大を通じた経済再建を訴えている[24]。また、国家主導の経済構造を「特権階級による搾取」と批判し、透明性のある企業統治と競争政策の導入を求めている[21]。ただし完全な市場放任を志向しているわけではなく、独占防止や公共サービスの維持など、国家による最低限の監督責任は必要だと述べている[22]。
社会政策
社会・文化政策では、リベラルな人権政策を支持している。同性婚の合法化や医療用マリファナの使用を容認し[25]、妊娠中絶についても「レイプや母体の生命が危険な場合など、例外的な合法化の議論は可能である」と発言している[26]。信仰面ではカトリックの背景を持つが、「宗教的信条を政策に持ち込むべきではない」と明言している[26]。教育・医療・司法改革にも積極的であり、特に司法の独立と腐敗撲滅を重視している[28]。
外交・安全保障
外交政策においては、現政権(ニコラス・マドゥロ政権)を「権威主義体制」として厳しく批判し、民主主義と法の支配を国際社会の支援によって回復することを最優先目標に掲げている[29]。国際的制裁の解除条件として、自由選挙の実施、政治犯の釈放、人権監視の受け入れを求めており、場合によっては国際的な人道介入を支持する姿勢を示している[27]。また、ラテンアメリカ諸国との自由貿易協定や欧米との経済再統合を目指しており、民主主義陣営との連携を重視している[22]。
評価と批判
マチャドの政策は、自由主義者や民主化支持層から高く評価されているが、一方で新自由主義的・急進的との批判も存在する[25][27]。 一部の社会主義系団体は、民営化方針が格差を拡大すると懸念しているが、彼女は「真の包摂は国家依存から個人の自立への転換である」と反論している[24]。
ノーベル平和賞の受賞への評価と批判
2025年ノーベル平和賞の受賞に対してはベネズエラ野党議員からは賛同デモがあった一方、マチャド氏の平和賞受賞に疑問を投げかける市民の声も発生している。
政治的立場の総括
総じて、「自由市場と民主主義の擁護」「小さな政府」「人権と多様性の尊重」を基調とする自由主義的改革派の政治家である[22]。 彼女の運動は反チャヴィズム勢力の中核であり、2020年代以降のベネズエラ政治の転換点を象徴する存在とされる[21][28]。
政見
マチャドは何度も、最も尊敬する政治家としてマーガレット・サッチャーを挙げており[30][31]、石油会社PDVSA含むベネズエラ国営企業の民営化を支持している[32][33]。ベネズエラ危機における国際的制裁を支持し[32]、マドゥロを大統領の座から排除するための外国の軍事介入を主張している[34][35][36]。他方、同性結婚の合法化への賛成を表明している[37]。
反共主義のマドリード憲章に署名した一人であり[38][39]、アメリカ大統領ドナルド・トランプへの支持も表明している[40][41]。2025年のカリブ海へのアメリカ海軍の展開の際には第2次トランプ政権を称賛した[42]。
パレスチナ問題に関しては、10月7日の攻撃の後、イスラエルへの連帯を表明し[43]、イスラエルがエドムンド・ゴンサレスを次期大統領として、また以前にはフアン・グアイドを暫定大統領として支持したことにも謝意を表している[44][45]。また、2008-09年のガザ紛争が理由で2009年に断交したイスラエルとの外交関係を回復することを訴えている[45]。