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ヤマユリ

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ヤマユリ(山百合[3]、学名: Lilium auratum)とはユリ属の多年生植物。

概要 ヤマユリ, 保全状況評価 ...
ヤマユリ
ヤマユリ(大阪府・2007年7月)
保全状況評価
NOT EVALUATED (IUCN Red List)
分類(APG IV)
界 : 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
目 : ユリ目 Liliales
科 : ユリ科 Liliaceae
属 : ユリ属 Lilium
種 : ヤマユリ L. auratum
学名
Lilium auratum Lindl. (1862)[1]
和名
ヤマユリ[2]
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形態

地上の茎は直立し、草丈は1 - 1.5メートル (m) [4][5]。地下の鱗茎は扁球形で、黄色をおびた白色、10 cm程の大きさである[4]。鱗茎の上と下には根が生えている[6]。葉は深緑色をした広披針形で先は尖り、短い葉柄がついて互生する[4]。

茎の先に1 - 数個、ときに20個ほどの白い花を横向きに咲かせる[4][7]。花は6つある花被片が、外に弧を描きながら広がって、花径は15 - 18センチメートル (cm) になり[7]、ユリ科の中でも最大級であり、その重みで茎全体が弓なりに傾くほどである[4]。花被片の内側中心には黄色の太い筋があり、紅褐色の小さな斑点が散らばる[4]。ヤマユリの変わりものには様々な呼び名がつけられていて、花被片の中央に太い赤色があるものを「紅筋」、斑点が少ない純白の花を「白黄」、花被片の斑点が黄色のものを「白星」という。褐色の花粉が出て、花の香りは日本自生の花の中では例外的ともいえるほど、甘く濃厚でとても強い[4]。発芽から開花までには少なくとも5年以上かかる。よく「1輪1年」といわれ、株の年数が経って古いほど多くの花をつけ、大きな鱗茎になっている[3]。風貌が豪華で華麗であることから、「ユリの王様」と呼ばれる。

花粉は網目模様が良く目立つものでササユリのものに似ている。

花後にできる果実は蒴果で、長さ6 cmほどの円筒形で3室に分かれている[8]。中には種子が約300個ほど入っていて、熟すと果実が3裂して、風に揺らされて散布される[8]。種子は有翼で種の周りを翼が囲んでいる。全体に褐色であるが、翼部分は色がやや淡い。宮崎県産の個体の観察では、翼部分込みの大きさは長さ10.4±0.5mm、幅8.0±0.5mm、厚さ0.7±0.2mmであった[9]。

根系はひげ根、球根より下に生える下根、球根の上の茎から生える上根に分けられる。

生態

開花期は夏(7 - 8月)で[5]、同年の秋には朔に種子ができる。冬になると地上部は枯れるが、球根および下根は永年性であり翌年に再び発芽する。

花は強い芳香を放つ。

乾燥と地温の上昇を嫌い半日陰を好む。また傾斜地に多く時に崖のような場所にも生える。また、この性質から斜面の向きでは西側と南側には少なく、東側と北側を好むとされる。一方で土壌への適性は比較的広いようである[10]。

種子は風を受けやすい構造になっており、幾らかの距離を飛ぶ。ヤマユリをはじめ幾つかのユリの種子は上胚軸休眠という休眠状態があり、発芽後に芽が地上に現れるまで時間がかかる。秋に熟して地上に落ちた種は、翌年の夏の高温を感知した後に発芽するが、下胚軸だけを地中に伸ばし先端に小さな球根を作り、一旦成長が止まる[11]。この後さらに冬の低温を感知することで上胚軸の成長が始まり、芽が地上に出てくるという仕組みになっている[12]。このため播種後、芽の確認ができるまでは自然状態では18か月程度かかることになる。実験の結果では高温期は30℃程度、低温期は5℃程度が望ましいことが示されている[13][14]。低温期の温度が高いと発芽率は下がるが、光を与えることで幾らかの補償作用があり発芽率が向上する[13]。

種子繁殖の他に、木子、分球などの栄養繁殖も行う。

分布

東アジア地域の日本列島のみに分布する日本特産種である。日本列島の中でも東北地方から近畿地方にかけての東日本地域を中心に分布する。ヤマユリを欠く西日本には別種の大型ユリとしてササユリが分布する。

北海道や九州には栽培していたものが野生化したものが見られ[3]、観賞用に多く栽培もされる[4][7][8]。日当たりのよい原野、丘陵などに生えていて、夏の里山の植林地などの木漏れ日が当たるところでは、ひときわ目立つ白い花を咲かせているヤマユリが見かけられる[3]。

分類

ヤマユリ内でいくつかの変種を認めることがある。葉の形の広いもの、寒冷地に多い早咲き早生タイプのもの、花の筋が紅色になるもの、花の斑点が乳白色のものなどがある。伊豆諸島に分布するサクユリは別種とする説もあるが、変種とする説もある。

人間との関係

大きな花は観賞価値が高く、切り花や庭植えに使われる。また、球根部はいわゆる「百合根」として食用とすることが可能なユリの一つで、救荒作物的な一面を持つ。現在の用途は観賞用が主である。江戸時代のシーボルトを通じてヨーロッパにも紹介され、現地で高い評価を受けた。明治の開国以後、昭和の中頃まで球根の輸出もよく行われていたという。

ヤマユリは樹林地で育ち粗放的な栽培もできることから、山林の有効活用(アグロフォレストリー)と山村振興などの目的で、ワサビやブルーベリーなどと共にヤマユリも都道府県などの農林系の研究機関でも栽培技術などの研究が行われていた。1990年代くらいまでは比較的多いものの以後は下火となっている。

栽培

ヤマユリは各種のウイルス病に弱いとされ、栽培は健全な球根を用いウイルスを媒介するアブラムシの防除を心掛ける。健全株を育成する方法として組織培養等もあるが、ユリの病気は種子伝染するものは少ないとされており、コストも低く増殖効率も良いことから営利農家では種子繁殖を用いていることが多い。

種子繁殖の場合生態節の通り発芽までに一年半程度かかる。種子に対して疑似的に夏と冬を経験させる恒温設備があると、発芽までの時間を短縮できる。処理温度は40℃程度でも発芽し、温度が高いほど早いというが腐敗も多いという[14]。このため高温期は30℃程度で6週間から8週間程度あるのが望ましい[13]。

地下部の球根を目当てとしたイノシシの掘り起こしと食害を受けやすいとされ、被害が予想される場合は電気柵の設置などを検討する。

農薬は観賞用と球根食用で使えるものが異なり、いずれも登録農薬は少ないので注意する。観賞用の場合は作物分類を「ゆり」、上位分類は「花卉類・観葉植物」を使う。食用の場合は作物分類を「食用ゆり」もしくは「ゆりね」、上位分類は「鱗茎類(根物)」、「鱗茎類」、「野菜類」を使う。

小俣(2007)は切り花用は儲けが少ないが、球根の出荷ならば畑栽培で卸値を1個350円に設定すれば、小型の耕運機と農薬代を差し引いても利益は出るのではないかと試算している[15]。

観賞用

西暦1700年ごろ、江戸時代に発行された博物図鑑『大和本草』によれば、ユリを観賞することが増えてきたと書かれており、一部のユリは品種改良も行われていたようである[16]。なお、江戸時代に品種改良が盛んだった「ユリ」はヤマユリではなくスカシユリのことだったとされている[10]。

ヤマユリはシーボルトの時代以降、ヨーロッパにも紹介しされ人気になった。欧米ではヤマユリにカノコユリなどの他の種を積極的に掛け合わせ、見た目以外にも耐病性や開花時期などを選抜し園芸品種を作り上げていった。前2者の他にもササユリ、オトメユリなども含め、東洋系の品種を掛け合わせて誕生した品種群は the oriental hybrid (東洋系雑種)と呼ばれる。欧米の育種家や園芸家の価値観では「天然種には原種としての価値しかなく、園芸として植えるなら強い園芸品種が望ましい」というものがあるという[10]。

薬用・食用

球根は澱粉に富み、薬用または食用として利用された。『大和本草』によれば、本草学でいう「百合」は皆白いものであると言い、関東ユリ、薩摩ユリなどがあると書かれている。同書にはヤマユリという言葉は出てこないが、分布地から言って「関東ユリ」がヤマユリ、「薩摩ユリ」は鹿児島県などの南日本原産のテッポウユリを指しているものと考えられる。同書では「百合」は薬になるが、苦みがあり食うには堪えないと評価されていた。食用としては「巻丹」と呼ばれるオニユリが優れることが書かれており、食味だけでなく、地中の茎に木子を付けるのではなく葉にむかごを付ける様など、形態面でも百合と巻丹は区別されていたようである[16]。

薬用としての調整法は、秋に種子が成熟した後に、鱗茎を掘り採って水洗いした後、鱗茎の裂片をほぐして天日乾燥させる[4][6]、もしくは湯通しして天日乾燥する[17]。鎮咳、強壮、口腔内や胃粘膜の保護に役立つとされ、民間療法では、温まるときに出る咳や、微熱があり動悸があるときの不眠に、乾燥したユリ根1日量5 - 10グラムを400 ccで煎じて、3回に分けて服用する用法が知られている[17][4]。ただし、寒気や冷えが出ている咳への使用は禁忌とされている[17]。またおでき、打ち身、腫れ物などには、乾燥した百合を粉末にして、酢で練って患部に湿布する民間療法が知られる[17][6]。

大和本草の百合に挙げられているが、実際テッポウユリは苦く食用には適さないのに対し、ヤマユリはオニユリに匹敵する食べやすい種とされている。ヤマユリは他の救荒作物に比べて澱粉の粒が大きいという[18]。ラットを使った実験ではヤマユリ澱粉は芋やトウモロコシはもちろん、救荒作物のヒガンバナと比べても消化されない成分が多い[19]。調理法としてはきんとん、煮物、生のまま天ぷらにするほか、中火で甘煮にして砂糖をまぶしたものはデザートになる[6]。天ぷらにするとホクホクした食感になる[6]。よく煮ると糊状となり、美味で去痰の効果もある[4]。薬用としては中国植物名(漢名)は、金百合(きんひゃくごう)、日本漢名では山百合(さんひゃくごう)とよばれる[17]

本来の分布域から外れる九州大分県の岡城(竹田市)周辺でヤマユリが見られるのは、救荒作物目的に城内に植えられた個体に由来するという。

種の保全状況評価

国際自然保護連合(IUCN)作成のレッドリストでは、本種の保全状況の評価について2026年現在で「未評価」(Not Evaluated, NE)としている。日本の環境省が作成するレッドリスト(植物の最新版は2025年公開の第五次リスト)にも掲載されていない。

都道府県作成のレッドリストでは分布域西側となる東海地方、近畿地方の府県での指定が多い。2026年現在、京都府では絶滅したことになっている。また、岐阜県と三重県で絶滅危惧Ⅰ類、長野県と奈良県で準絶滅危惧種の指定を受けている。滋賀県、大阪府、石川県では情報不足としている[20]。

他のユリやランの仲間同様、盗掘が個体数の減少の一因となっている。遠距離の産地のヤマユリ同士はもちろん、ヤマユリを親とする園芸品種にはヤマユリと交雑可能なものもあり、遺伝子汚染も懸念される。

象徴

花言葉は、「荘厳」である[7]。

以下の自治体の花として指定されている。花が美麗で知名度もある植物であることから、分布地の東日本を中心に採用する自治体は多い。

都道府県
市町村

名称

植物は厳密に標準和名は定められていないが、「ヤマユリ」が事実上の標準和名に相当する代表的な名前とされ、『新日本植物誌』(1983)[24]、『環境庁植物目録』(1988)[2]、『日本維管束植物目録』(2012)[25]ほか、この名前で掲載する図鑑や目録が多い。山に生える百合ということで分布地に因む命名である。

地方名として「ガーラ」「ゴーラ」「ゴロ」などの名前が島根県を中心に中国四国地方に見られる。隠岐の島では「ヤイノミ」「ヤガン」などと呼ばれるという。単に「ユリ」、もしくはこれが訛ったような「ヨリ」「ヨロ」などと呼ぶ地域も多い[26]。標準和名「ヤマユリ」からして昔は珍しい種ではなかったことがうかがえる。他に「ユリ」に産地の地名を付けて呼ぶこともあり、「ヨシノユリ」[17][3]、「エイザンユリ」[17][3]、「ホウライジユリ」[27][3]などはこの系統の名前だという。

紀伊半島周辺ではササユリのことを「ヤマユリ」と呼ぶという[26]。西暦700年ごろに書かれた古事記に出てくる「山由里草」という植物は本種ではなく、ササユリを指しているとされる[10]。

種小名 auratumはauratusの変形で「黄金色の」という意味がある[28]|。華やかな花の雰囲気や鼻の真ん中の黄色い筋を示した命名とみられている。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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