ルビンシュタイン・テイビ症候群

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ルビンシュタイン・テイビ症候群: Rubinstein–Taybi syndrome、略称: RTS)は、低身長、中等度から重度の学習障害、特徴的な顔貌、幅広い拇指趾を特徴とする稀少遺伝疾患である[2]。この疾患の他の特徴は、患者によってさまざまである。こうした特徴的症状は16番染色体英語版上のCREBBP遺伝子、もしくは22番染色体上のEP300英語版遺伝子の変異または欠失が原因となっている[3]

別称 Broad thumb-hallux syndrome or Rubinstein syndrome[1]
原因 16番染色体上のCREBBP遺伝子、もしくは22番染色体上のEP300英語版遺伝子の変異または欠失
概要 Rubinstein–Taybi syndrome, 別称 ...
Rubinstein–Taybi syndrome
別称 Broad thumb-hallux syndrome or Rubinstein syndrome[1]
ルビンシュタイン・テイビ症候群に特徴的な顔貌を示す小児
概要
原因 16番染色体上のCREBBP遺伝子、もしくは22番染色体上のEP300英語版遺伝子の変異または欠失
分類および外部参照情報
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この疾患は常染色体顕性型の遺伝形式となるが、多くの場合de novo変異、すなわち親から受け継いだものではなく新たに発生した変異が原因となっている。発生率は125,000–300,000出生あたり1人と推定されている。

臨床像

この疾患の患者の顔貌(A)、幅広い拇指趾(B, C)、両手のX線像(D)

この疾患は、身長や体重の成長の遅れ、小頭症、特徴的な顔貌、幅広い拇指趾を特徴とする。体重に関しては、その後の段階では過体重や肥満となる傾向がある。他にも知的障害停留精巣(男児の場合)、言葉の遅れが大半の患者にみられる[4]

この疾患の患者に全身麻酔を施す際には、頭蓋顔面の異常による気管挿管の困難さや、麻酔時の誤嚥性肺炎や心血管系の機能不全の可能性のため、細心の注意が必要となる[5]

2009年の研究では、RTSの小児は過体重となる可能性が高く、また注意持続時間の短さ、常同行動、協調運動不全がみられる傾向があることが報告されている。この研究では、CREBBP遺伝子の異常が運動技能や学習能力の乏しさと関連しているとされている[6]。他の研究では、長期記憶の欠陥との関連も示されている[7][8]

遺伝学

ルビンシュタイン・テイビ症候群は常染色体顕性型の形式で遺伝する。

ルビンシュタイン・テイビ症候群の多くの症例では16p13.3染色体領域が関わる微小欠失症候群英語版であり、CREBBP遺伝子の変異を特徴とする[9][10]。この染色体領域において欠失している範囲はさまざまであり、そのことが症状のスペクトラム性の説明となるとされている[11]

CREBBP遺伝子は、他の多くの遺伝子の活性制御を補助する、CREB結合タンパク質(CREBBP、CBP)と呼ばれるタンパク質をコードしている。CBPは細胞の成長や分裂の調節に重要であり、また胎児の正常な発生にも必要不可欠である。CREBBP遺伝子の1コピーに欠失のような変異が生じた場合、細胞は正常な量の半分しかCBPを合成することができなくなる。このタンパク質量の減少によって出生前や出生後の正常な発達が妨げられ、この疾患の徴候や症状が表出する[11][12]。またRTS症例の少数では、染色体22q13.2領域に位置するEP300英語版遺伝子の変異が原因となっている。EP300遺伝子にコードされるp300タンパク質の標的となる遺伝子の多くはCBPと重複しているため、同一の疾患となる[3]

CREBBP遺伝子とEP300遺伝子はパラログの関係にあり、各遺伝子にコードされているCBPとp300はp300/CBPコアクチベーターファミリーを構成する。これらのタンパク質はいずれもブロモドメインヒストンアセチルトランスフェラーゼドメインを持ち、さまざまな遺伝子特異的転写因子基本転写因子に結合する[13]。RTS患者由来の細胞株では、複数のヒストンタンパク質、特にH2AH2Bアセチル化が低下しており[14]転写調節機構の問題がこの疾患の原因となっていることが示唆される[15]。CBPとp300の機能は広範囲で重複しているが、特定の遺伝子発現に対してはそれぞれ特異的に影響を及ぼす場合もある[16]。また、これらのタンパク質は転写の開始段階だけでなく伸長段階を促進している可能性もある[17]

一方で、RTSの症状を示す症例の約1/3ではCREBBP遺伝子とEP300遺伝子のどちらも原因とはなっていないようである[3]

この疾患に関する実験的研究を行うためのマウスモデルが作製されている。このマウスはヒトのRTSの臨床症状と同様の症状を示し、将来的な研究のための基盤となっている[18]

診断

ルビンシュタイン・テイビ症候群は臨床症状に基づいて診断が行われ、遺伝子検査によって確定診断となる。しかしながら、症例の30%では遺伝的基盤は明らかにされていない[19]

治療

ルビンシュタイン・テイビ症候群の治癒をもたらす治療法は現時点では存在しないが、患者の症状を管理し緩和する手法は存在する。RTSの症状は多岐にわたるため、各症状を専門とする医師への紹介が行われる。認知機能の発達に問題がある患者に対しては多くの場合、特別支援教育や言語聴覚療法が行われる。心臓、歯科、聴覚、腎臓の異常については、定期検診による経過観察が必要となる。また、患者や家族に対しては遺伝カウンセリングも推奨される[20]

歴史

ルビンシュタイン・テイビ症候群に関する最初の症例報告は、1957年にギリシャの医師Michail、Matsoukas、Theodorouがフランスの整形外科学会誌に発表したものであるとされている[21][22]。1963年、Jack Herbert RubinsteinとHooshang Taybiは、幅広い拇指趾や特徴的顔貌といった共通した特徴を有する複数の症例をもとに、新たな症候群として提唱した[21][23]。1991年から1992年にかけて、この疾患の原因遺伝子が16番染色体上の特定の領域に位置していることが明らかにされ[24][25][26]、1995年にその遺伝子がCREBBPであることが特定された[27][28]。2005年、患者の遺伝子配列のスクリーニングにより、EP300遺伝子の変異もこの疾患の原因となることが明らかにされた[29]

出典

外部リンク

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