CREB結合タンパク質
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CREB結合タンパク質(CREBけつごうタンパクしつ、英: CREB-binding protein、CREBBP、CBP)またはKAT3Aは、ヒトでは16番染色体短腕の16p13.3に位置するCREBBP遺伝子によってコードされている転写コアクチベーターである[5][6]。CREBはcAMP応答配列(cAMP response element、CRE)に結合する転写因子であり、CBPはCREBを含む多数の転写因子に結合して転写のアップレギュレーションを行う。CBPはアセチルトランスフェラーゼとしての機能も有しており、転写因子やヒストンのリジン残基にアセチル基を付加することができる。CBPによるヒストンのアセチル化はクロマチン構造を変化させ、遺伝子は転写装置がアクセスしやすい状態となる[7][8][9][10]。こうした比較的ユニークなアセチルトランスフェラーゼ活性はEP300(p300)でも観察され、両者はまとめてp300/CBPコアクチベーターファミリーと呼ばれる。これら2つのタンパク質はヒトでは16,000以上の遺伝子と結合することが知られており、また構造的特徴の多くも共通している一方で、近年のエビデンスは両者が異なる生物学的機能を有する遺伝子群の転写を促進している可能性を示唆している[7][11][12]。
一例を挙げると、CBPは大腸がんや頭頸部扁平上皮がんなど広範囲の病態生理への関与が示唆されている。これらの疾患ではCBPとβ-カテニンとの結合ががん細胞の増殖と疾患のaggressivenessを促進していることが示されているのに対し、p300とβ-カテニンの結合は細胞分化やアポトーシスをもたらしている[11][13]。また、CBPはリポジェネシスや糖新生を担う転写因子や遺伝子の活性を調節することで、栄養状況の変化に応答したエネルギー恒常性の維持を可能にし、肝機能調節を補助していることが示されている[6]。CBPは血液腫瘍やその他の固形腫瘍、糖尿病、統合失調症、アルツハイマー病、抑うつ、その他多くの神経疾患の病因にも関与していることが示唆されている[14][15][16][17][18]。
構造
機能的なCBPは2441アミノ酸から構成される[8][18]。CBPはプロモーターエレメントと直接的に相互作用するのではなく、さまざまな構造ドメインが他の転写因子などと複合体を形成することで、タンパク質間相互作用によって特定のDNAエレメント上へもたらされる[8]。

TAZドメイン
CBPには2つのTAZ(transitional adapter zinc finger)ドメインが存在し、それぞれ亜鉛イオンによって安定化された4本のαヘリックスから構成される。TAZ1とTAZ2はどちらも両親媒性アミノ酸配列内の疎水性残基に選択的に結合する。またTAZ1の結合親和性はTAZ表面の正に帯電した残基と、リガンドの酸性残基との相互作用によって強化される[19]。TAZ2はアセチルトランスフェラーゼドメイン(KATドメイン)に近接して位置しているため、TAZ2に結合する因子はアセチル化による調節を受けている可能性がある[19]。
KIXドメイン
KIXドメイン(CREB結合ドメインとも呼ばれる)は、他の転写因子やコアクチベーターとヘテロ二量体を形成するドメインである。3本のαヘリックスと2本の310ヘリックスから構成され、両親媒性配列に対して高い親和性を有する[19]。これらのヘリックスはいくつかの異なるコンフォマーへフォールディングすることで、結合様式にある程度の多様性を維持したまま、調節制御機能の発揮を可能にしている[19]。KIXドメインは転写率の制御を行っており、造血系の分化に重要であることが示されている[8][19][20]。このドメインに結合するタンパク質群にはCREBとMybのように競合的関係にあるものも、MLLとMybのようにアロステリックな協同的結合を行うものも存在する[19]。
ブロモドメイン

ブロモドメイン(BRD)は約110アミノ酸から構成され、アセチル化リジン残基を認識する機能を果たす[8]。4本のαヘリックスから形成される左巻きのヘリックスバンドルとループ領域によって、疎水的な結合ポケットが形成されている[8][19]。CBPのブロモドメインは、アセチル化リジン残基を多く含むゲノム領域に結合する。こうした領域ではヒストンの正電荷の喪失によってDNAに対する親和性が低下しており、転写装置がアクセス可能な開いたクロマチン状態となっている。アセチル化されたp53やSTAT3もCBPのブロモドメインに結合することが示されている[18]。
リジンアセチルトランスフェラーゼドメイン
約380残基からなるリジンアセチルトランスフェラーゼ(KAT)ドメインは、非常に重要かつ特徴となる領域の1つである。アセチル基転移活性はCBPのリン酸化によって制御されている。このドメインで興味深いのは、ヒストンだけでなく他のタンパク質も同様にアセチル化することができるという点である。CBPのKATドメインの基質として、p53、E2F1–3、GATA1、MyoD、CREBなど100種類以上が現時点で知られている[18]。
核内受容体コアクチベーター結合ドメイン
核内受容体コアクチベーター結合ドメイン(nuclear receptor coactivator binding domain、NCBD)またはインターフェロン制御因子結合ドメイン(IRF-binding domain、IBiD)はCBPのC末端に位置し、標的タンパク質を結合していない状態では複数のコンフォメーションの間を揺れ動いている[19]。標的タンパク質との結合の際にはNCBDは3本のヘリックスへフォールディングし、標的タンパク質の天然変性領域に結合する[19]。この領域に結合するタンパク質としては、甲状腺ホルモン受容体やレチノイド受容体のコアクチベーターであるACTRやそのホモログであるSRC-1のほか、p53、SMADが知られている[19][20]。
相互作用
CBPは次に挙げるタンパク質と特異的に相互作用することが示されている。
- ACTR[19][21]
- AP-1[22]
- APC5[14]
- APC7[14]
- ATF4[23]
- ATR[24]
- BRCA1[24][25]
- C-FOS[21]
- C-JUN[26]
- C-MYB[18][19]
- ChREBP[6]
- CITED2[19]
- CREB[19]
- DDB1 (p127)[24]
- DDB2 (p48)[24]
- DDX3[6]
- DHX9[23]
- DNA2[24]
- E1A[19][26]
- E2F[18][21]
- ELK1[21]
- ER[22]
- ETS1[21]
- FEN1[24]
- FOXO1[6]
- Gal4[22]
- GATA1[18][21][27]
- GR[22]
- HNF1A[23]
- HIF1A[19]
- Ku70[24]
- MDM2[21]
- MLL[19]
- MyoD[18][21]
- NF-κB[7][19]
- p53[19][23]
- p73[23][21]
- PARP1[24]
- PCAF[26]
- PCNA[24]
- POU1F1[23]
- RAR[22]
- RXR[22]
- SRCAP[23]
- SMAD[6][21]
- SRC1[26]
- SREBP1c[6][21]
- STAT1[19]
- STAT2[7][19]
- STAT3[18]
- SUMO[8][19]
- T3R[22]
- TBP[5][26]
- TDG[24]
- TFIIB[5][23]
- TFIIE[5]
- TFIIF[5]
- WRN[24]
- XPA1[24]
- Zta (BZLF1)[23]
機能
CBPは普遍的に発現しており、多くの転写因子のコアクチベーターとして転写活性化に関与している。CBPは、アセチルトランスフェラーゼ活性によるアセチル基の転移、そして転写やクロマチンリモデリングに必要な複合体をリクルートして構築する足場、という2つの重要な機構によって遺伝子発現を調節する。CBPはリン酸化によってアセチルトランスフェラーゼ活性化が高まるが、この過程は細胞周期依存的な調節を受けていると考えられている[18]。また、CBPを介したN-グリコシル化活性によってCBP相互作用タンパク質のコンフォメーションが変化することで、遺伝子発現、細胞成長、分化の調節が行われていることも示唆されている[28]。
p300との差異

多くの科学文献(特に古いもの)では、CBPとp300はCBP/p300として区別されずに扱われていることがある。両者の配列相同性、構造的類似性、結合特性を考えると両者を同一視することには合理性があるものの、近年の研究ではCBPとp300には異なる生物学的機能も存在していることが示されている。
CBPとp300は基質となるヒストンは共通しているものの、ヒストンやアセチルCoAの存在量が乏しい条件下での基質選択性は異なる[18]。また、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスに関する実験では、病原性タンパク質(vIRF)の発現はCBPによってアップレギュレーションされるのに対し、p300によって抑制されることが示されている[12]。p300のホモ接合型ノックアウトマウスは胎生致死となり、神経胚形成の異常や心形成不全がみられる。さらに、こうしたマウスから単離された線維芽細胞は正常な増殖を行うことができず、レチノイン酸受容体を欠いている[7][18]。CBPのKATドメイン欠失変異をホモ接合型で有するトランスジェニックマウスもまた胎生致死となるが、このマウスでは血管新生の低下、そして造血系前駆細胞の増殖の欠如や造血微小環境の変化を特徴とする造血異常を示す[18]。CBPとp300のホモ接合型ノックアウトマウスがどちらも胎生致死となることは両者がともに胚発生において重要な役割を果たしていることを示唆しているものの、両者の表現型の差異はCBPとp300がそれぞれ胚発生の異なる側面を調節していることを意味している。
細胞周期の調節における役割

1990年代後半に行われた研究によって、CBPのアセチルトランスフェラーゼ活性はG1/S期の細胞周期チェックポイントにおいてピークに達することが示された[29]。そのため、この時点にキナーゼ活性を有するCDK2がCBPやp300の翻訳後修飾の重要な調節因子である可能性が示唆され[7]、実際にサイクリンE/CDK2阻害剤の投与によってCBPのKATドメインの酵素活性が阻害されることが明らかにされた[29]。他にも、MAPKやPKA、CAMK4などがCBPをリン酸化することが示されている[7][18]。Ser133は、PKAによるリン酸化によってCBPの転写活性化機能が開始される重要残基である[20][30]。
G1/S期の移行にはE2Fファミリーの転写因子が重要である[31]。これらの転写因子はDNA複製に関与する遺伝子のプロモーター領域内のコンセンサス配列に結合する。CBPとp300はE2Fタンパク質に対しコアクチベーター、アセチルトランスフェラーゼの双方の形で作用し、後者の作用によってE2FのDNA結合親和性が増大する[5][12]。抗CBP/p300抗体のマイクロインジェクションによってS期へ進行する細胞数が有意に減少することからも、CBPがG1/S期の移行時の転写に必要不可欠であることが支持される[12]。
また、CBPは複製起点周辺のヒストンをアセチル化することで、DNA複製過程を促進していると考えられている[12]。ヒストンのリジン残基のアセチル化はヒストンとDNAの間の荷電相互作用を弱め、周辺領域はより開いた、DNA複製装置がアクセスしやすい状態となる。ヒストンH3のリジン18番のアセチル化(H3K18ac)と27番のアセチル化(H3K27ac)は、活発な遺伝子領域と関連したマーカーである[12]。また、CBPは岡崎フラグメントのプロセシングに関与している2つのエンドヌクレアーゼ(FEN1、DNA2)をアセチル化することも示されている[12]。
CBPによって調節されている細胞周期の重要な構成要素には、後期促進複合体(APC/C)もある。この複合体は、"Arc Lamp"、"Platform"と呼ばれる2つのサブドメインに分けられ、サイクリンB、セキュリン、PLK1など細胞周期と関連した構成要素をプロテアソーム分解の標的とするE3ユビキチンリガーゼとして機能する[32][33]。APC/Cを構成する多くのサブユニットのうち、Platformサブドメインに位置するAPC5、そしてArc Lampサブドメインに位置するAPC7の2つのサブユニットがCBPと直接的に相互作用することが示されている[32][33]。RNAiによってCBPとp300を抑制した実験では、通常APC/Cの標的となっているタンパク質の濃度が有意に上昇し、多くの細胞が細胞周期のM期で停止した状態となることが示されている[33]。
CBPとp300は、塩基除去修復、ヌクレオチド除去修復、非相同末端結合などさまざまなDNA修復過程に関与する重要な因子をアセチル化することが示されている[24]。CBPとp300はDNA損傷応答タンパク質のアセチル化に関与し、これらの機能に影響を及ぼす[24]。
疾患における役割
ルビンシュタイン・テイビ症候群
ルビンシュタイン・テイビ症候群(RTS)は、CBPとp300のいずれかの遺伝的変異を原因とする希少遺伝疾患である。CBPの変異を原因とするRTS1型は500種類以上の変異が記載されており、全症例の約55%を占める。一方、RTS2型は約120種類のp300変異を原因とし、診断症例の約8%のみである[34]。こうした変異の大部分は機能喪失変異であることが示されている[12]。RTS患者ではがんのリスクが上昇することが統計的に示されており、約5%が神経堤由来の小児がんと診断される[12]。また、骨格の異常、神経解剖学的欠陥、低知能、注意欠陥、協調運動障害といった精神障害がみられることが多い[22]。
がん
CBPは腫瘍形成のあらゆる段階に関与していることが示されている[8]。細胞の増殖、成長、遊走、アポトーシスの調節に重要な役割を果たしており、がん遺伝子としてもがん抑制遺伝子としてもはたらく場合がある[5]。CBP活性の増大は、乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がん、急性白血病、頭頸部がんやその他幅広いがんとの関連が示唆されている[11][12][18]。一方、最も高頻度でみられる変異はKATドメインに生じるもので、大部分はアセチルトランスフェラーゼ活性の低下や阻害をもたらすものである[12]。
血液腫瘍
CBPヘテロ接合型(Cbp+/-)マウス胚は、髄外造血、骨髄の細胞密度(脂肪との比率)の低下、造血系の分化の異常を示す[18]。生後1年までに、こうしたマウスでは白血病やその他の血液腫瘍の発生率が上昇する[26]。また腫瘍細胞のシーケンシングでは、野生型アレルの喪失によるヘテロ接合性消失が生じている[18]。こうした実験結果の説明の1つとして、CBPが造血幹細胞の自己複製に関与していることが考えられている[18]。
急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群と診断された患者では、CBPに機能獲得型変異が生じている場合があることが示されている[12]。この変化は、KAT6A(MOZ)、KAT6B(MORF)、KMT2A(MLL)といった遺伝子とCREBBP遺伝子との間での染色体転座によって生じたものである[12]。いずれのケースでも融合タンパク質ではCBPのC末端が失われており、KAT6AやKAT6Bとの転座では双方のタンパク質のアセチルトランスフェラーゼドメインが維持された融合タンパク質が形成されてリジンアセチルトランスフェラーゼ活性が非常に高くなる可能性がある[12]。
固形腫瘍

CBPの変異は、頻度は比較的低いものの、肺がんでも同定されている[21]。呼吸上皮における腫瘍形成の初期段階ではCBPの発現が上昇するとともに、AP-1やサイクリンD1といったCBPの転写活性との関連が知られている因子も発現が上昇する。これらの過剰発現は、肺での腫瘍形成に好都合な下流のシグナル伝達イベントを引き起こしている可能性がある[21]。
大腸がんや頭頸部がん(頭頸部扁平上皮癌)においては、CBPとβ-カテニンとの結合と重症度が関連している。β-カテニンは、古典的Wntシグナル伝達経路に関与する重要な因子である[11][13]。CBPとβ-カテニンとの結合は、がん幹細胞集団の存在、免疫細胞の浸潤の低下、転移の可能性など、よりアグレッシブながん形質と関連した遺伝子群の転写をもたらす[13]。β-カテニンとCBPとの結合を阻害し、p300との結合は遮断しない低分子であるICG-001を用いて行われた実験では、発がんの減少、そして細胞分化やアポトーシスの増加が観察されている[11][13]。
アンドロゲン受容体(AR)やエストロゲン受容体(ER)によって媒介されるホルモンシグナルの増大は、それぞれ前立腺がん、乳がん症例と関連している[11]。CBPは、コアクチベーターとアセチルトランスフェラーゼの双方の形でARやERと相互作用することが知られている。CBPのアセチルトランスフェラーゼ活性の阻害は、これらの受容体の発現を低下させることでシグナルを減少させ、腫瘍形成を抑制することが示されている[11]。
代謝の恒常性
エネルギー恒常性は個体の生存に必要不可欠であり、グルコースと脂質のバランスに依存している[6]。代謝活性の異常と関連した疾患には、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患などがある。過剰な栄養はグルコースやインスリンの濃度の上昇を介してリポジェネシス(脂質の合成)を促進し、絶食はβ酸化(脂質の分解)と糖新生(グルコースの合成)を促進する[6]。
食餌誘発性肥満マウスでは、過剰発現したSREBP-1cがChREBPと協働してリポジェネシスを高めていることが観察される。SREBP-1cとChREBPはどちらもリポジェネシスに重要な転写因子であり、またどちらもCBPによってアセチル化されることで転写活性が高まる[6]。また脂質合成の増大に応じて、高分子を細胞外へ搬出して貯蔵する必要が生じる。MTPはリポタンパク質の組み立てと分泌を担うタンパク質であり、MTPをコードする遺伝子のプロモーターにはRNAヘリカーゼDDX3が結合する。DDX3はCBPと相互作用してHNF4のアセチル化を引き起こし、遺伝子の転写を高めている[6]。
CBPは絶食時のグルコース恒常性の調節にも関与している。低血糖時に放出されるホルモンであるグルカゴンはCREBを活性化し、CREBはCBPを結合してFOXO1の転写を活性化する。FOXO1は、グルコース-6-ホスファターゼやホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼなど糖新生に必要な酵素をコードする遺伝子に対して転写因子として機能する[6]。
神経疾患
CREBは、神経保護作用が示されている[14]。CREBはCBPと結合するため、神経学的経路におけるCBPの役割、そしてその異常がどのように疾患に影響しているのかについての関心が高まっている。CBPの変異に伴う、運動、学習、記憶機能の変化の評価を行うため、多数の動物モデルが作成されている。CBPのヘミ接合型マウスやコンディショナルノックアウトマウス、ドミナントネガティブ変異を有するマウスは、記憶(具体的には長期記憶)と関連した欠陥を示す[22]。KIXドメインにホモ接合型変異を有するマウスは、運動技能の学習や実行に欠陥がみられる[22]。
胎児性アルコール・スペクトラム障害
胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)は、妊娠中のアルコール曝露を原因とするあらゆる疾患を含む分類群である[22]。こうした疾患の症状としては、小脳依存的学習、運動協調や平衡感覚の乏しさが挙げられる[22]。FASDのラットでは、CBP濃度の低下と、ヒストンH3やH4のアセチル化の低下が示されている[22]。
ハンチントン病
ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン遺伝子の変異による変異型ハンチンチン(Htt)タンパク質の合成を原因とする、致死的な進行性神経変性疾患である[22]。この疾患と密接に関連する症状としては、運動機能障害、行動変容、最終的には認知症に至る認知機能障害が含まれる[35]。HDの動物モデルでは、CBP活性の減少と神経のヒストンアセチル化の低下が観察されている[22]。変異型HttはCBPと直接相互作用することが示されており、変異型HttはCBPの分解をもたらす、もしくはCBPのアセチルトランスフェラーゼドメインを直接阻害すると考えられている[14][22]。
アルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)は進行性の神経変性疾患であり、神経炎症をもたらすアミロイドβ(Aβ)プラークやタウ(τ)タンパク質による神経原線維変化の存在に基づいて診断される[22]。ADの原因は明確にされていないものの、CBPはいくつかの機構でADの進行に関与していると考えられている。早期発症型家族性アルツハイマー病の多くの症例では、Aβプラークの形成を担う酵素を構成するタンパク質(プレセニリン1もしくは2)に変異が生じており、野生型タンパク質が存在しない場合にはCBPの活性は低下する[16][22]。さらにADのマウスモデルでは、CBPの重要な機能である神経のヒストンアセチル化の低下が示されている[22]。
CBPの阻害
CBPは幅広い生理過程を制御していることが明らかになっており、CBP活性阻害剤の将来的な治療薬としての重要性はますます高まっている。現時点では、発見された阻害剤のごく一部が臨床試験段階まで進行している。
| 薬剤 | 開発段階 | 疾患、機序、標的領域など | 出典 |
|---|---|---|---|
| A-485 | In vitro/ in vivo | 血液腫瘍、AR陽性前立がん | [36] |
| C646 | In vitro/ in vivo | 固形腫瘍、神経上皮細胞のヒストンアセチル化の低下 | [8] |
| CBP30 | In vitro | 自己免疫疾患 | [8] |
| CCS1477 | Phase 1b/2a | 進行性去勢抵抗性前立腺がん、血液腫瘍 | [10][8] |
| CPI-637 | In vitro/ in vivo | 去勢抵抗性前立腺がん | [37] |
| dCBP-1 | In silico | 多発性骨髄腫 | [38] |
| DC_CP20 | In silico | 白血病 | [8] |
| E7386 | Phase 1 | 固形腫瘍、β/カテニン/CBP相互作用の阻害 | [39] |
| Garcinol | In vitro/ in vivo | 食道がん | [36] |
| GNE-049 | In vitro/ in vivio | 乳がん、前立腺がん | [38] |
| GNE-207 | In vitro/ in vivo | 急性骨髄性白血病、他の血液腫瘍も標的となる可能性 | [8] |
| GNE-781 | In vitro/ in vivo | 急性骨髄性白血病、他の血液腫瘍、前立腺がん、乳がんも標的となる可能性 | [38][8][40] |
| HBS1 | In vitro/ in vivo | 腎細胞がん | [8][41] |
| I-CBP112 | In vitro/ in vivo | CBPのブロモドメインを標的とする | [8] |
| ICG-001 | In vitro/ in vivo | 大腸がん、頭頸部扁平上皮がん | [11][13] |
| KCN1 | In vitro/ in vivo | 神経膠腫 | [8][42] |
| MYBMIM | In silico | 急性骨髄性白血病、CBP/Myb相互作用の阻害 | [8] |
| NASTRp | In vitro/ in vivo | 肺腺がん | [8] |
| NEO2734 | In vitro/ in vivo | 前立腺がん | [8] |
| Nicur | In silico | 消化器がん | [8] |
| OHM1 | In vitro/ in vivo | CBP/HIF-1α相互作用の阻害 | [8] |
| PRI-724 | In vitro/ in vivo | 肝線維症 | [6] |
| PU139 | In vitro/ in vivo | 神経芽腫 | [36] |
| Y08197 | In vitro | 去勢抵抗性前立腺がん | [37] |