一次元の挿し木
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『一次元の挿し木』(いちじげんのさしき)は、松下龍之介による小説。第23回『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリ受賞作。
概要
制作背景
著者の松下は産業機械の設計に携わるエンジニアで、もともと小説家志望ではなく、海外でMBAを取得することを目指して勉強を続けていた。しかし、コロナ禍によって留学の見通しが立たなくなり、留学費用を稼ぐ目的で小説を書き始めている[7]。
執筆活動では、記憶の同期を題材にした時間遡行SFや、インドネシア・カリマンタンを舞台にしたサスペンス、女子高生が新興宗教を立ち上げる物語など、ジャンルの異なる作品を制作しており、多忙のため一時的に創作から離れていた時期もあったが、本作の応募以前にも二度、新人賞へ応募している[7]。
本作では、「あらすじの段階で興味を引く作品」を目指し、DNAをめぐる謎という着想を軸に構想が進められた[7]。一方で、作品の題材となったDNA、考古学、宗教については専門知識がなかったため、執筆にあたって半年ほど関連書籍を読み込み、知識を補いながら制作したという[7]。
『このミステリーがすごい!』大賞への応募は、作品完成時に応募時期が近かったことが理由だったとしている[7]。本人は大賞受賞への自信を持って応募していたが、結果として文庫グランプリ受賞の連絡を受けた際には落胆もあったという[7]。その一方で、「この悔しさをバネにして、次回作に取り組む所存」とコメントしており、以後の創作活動への意欲を示している[7]。
あらすじ
大学院で遺伝人類学を学ぶ青年・七瀬悠は、幼い頃に父を亡くし、母が日江製薬の取締役・七瀬京一と再婚したことで、彼の連れ子であった紫陽と出会う。血のつながりを超えて強く惹かれ合う二人だったが、4年前の豪雨災害の日に紫陽は突然失踪してしまう。以来、悠は心に深い傷を負い、抗不安剤を手放せない生活を送っていた。
そんな中、悠は担当教授の石見崎明彦から、インドで発掘された200年前の人骨のDNA解析を依頼される。そして解析の結果、そのDNAは失踪した紫陽のDNAと一致する。常識では説明できない事態に悠は激しく動揺し、真相を確かめるため石見崎の自宅を訪れる。
だが、石見崎宅で悠は、クローゼットの中から石見崎の遺体を発見する。同時に、研究室に保管されていた人骨も何者かに持ち去られてしまう。さらに通夜の場で、石見崎の姪を名乗る女性・唯から、石見崎の娘で車椅子生活を送る真理が行方不明だと知らされる。
紫陽のDNAと一致した人骨、石見崎の死、そして失踪した真理――複数の謎が複雑に絡み合う中、悠と唯は協力して事件の真相を追うことを決意する。
登場人物
主要人物
- 七瀬 悠(ななせ はるか)
- 神立大学で遺伝学を学ぶ博士課程1年目の大学院生。25歳。息を飲むほどの美青年。中性的な顔立ちで目鼻立ちもくっきりしている。
- 4年前の豪雨で義理の妹・紫陽が失踪しメンタルに不調をきたすが、彼女が生きていると信じて疑わず、捜索を続けている。
- 母親が樹木の会の熱心な信者で勧誘に明け暮れていたことから、地元では周囲から避けられており、紫陽と出会うまでは孤独な日々を送っていた。
- 七瀬 紫陽(ななせ しはる)
- 悠の義理の妹(京一の連れ子)。悠より2つ年下。学校には通っていなかったが、いつも父親の書斎の本を読んでおり頭が良かった。
- 4年前の豪雨災害を境に行方不明となるが、3年前に学会発表で聴講者に交じっているのを悠に目撃されている。
- 石見崎 唯(いしみざき ゆい)
- 石見崎の姪を名乗る女性。20歳。肩まで伸ばした栗色の髪に黒縁眼鏡。行方不明のいとこ・真理を探しており、悠の前に現れ、人骨の謎を追う悠の調査に協力する。
- 両親は整形外科医で、普段は何もしておらず、そのことに劣等感を抱いていると悠に漏らす。
- 石見崎 明彦(いしみざき あきひこ)
- 神立大学の遺伝人類学の教授。悠の担当教官。58歳。口髭に丸顔。好物のチョコレートを控えることができず体重90キロを超過する。日江製薬の元社員。
- 24年前、京一とループクンド湖での人骨の発掘調査を行い、24年の時を経てアモールから送られてきたループクンド湖の人骨の鑑定を悠に依頼したが、不可解な死を遂げる。
- 七瀬 京一(ななせ きょういち)
- 紫陽の父で、悠の義父。日江製薬の主幹研究員兼代表取締役。石見崎の2つ年上で大学も同じだった。24年前、石見崎とループクンド湖での人骨の発掘調査を行っている。
- 4年前に紫陽が失踪しているが積極的に捜索することなく失踪宣告届を出し、空の棺で紫陽の葬儀を執り行い悠の反感を買う。
- 仙波 佳代子(せんば かよこ)
- 分子生物学の世界的権威。世界初のマウスの人工胚を作成した。70過ぎだが艶のある銀髪。24年前、ループクンド湖での発掘調査隊のリーダーを務める。
- 平間 孝之(ひらま たかゆき)
- 東邦ジャーナルの記者。ツーブロックの金髪にネイビーのアロハシャツを着こみ、左腕にはイエローゴールドのロレックス・デイトナをはめている。妻と別れて独り身。
- 小野寺から引き継いだ日江製薬のスキャンダルを追う中で、悠と接触を図り、仙波佳代子の情報と引き換えに京一の所在を聞き出す。
- 牛尾(うしお)
- 謎の男。40代くらい。2メートル近い長身で、黒髪のパーマに光沢のある牛革の山高帽を被り、エレガントなチェック柄のベストとネクタイ姿。
悠の関係者
- 七瀬 楓(ななせ かえで)
- 悠の実母。樹木の会の熱心な信者で勧誘に明け暮れていた。夫である悠の実父と死別し、9年前に京一と再婚したが、その1年後には脳の病気で他界する。旧姓:戸崎(とざき)。
- 亡くなる少し前、紫陽と悠それぞれに宛てた手紙を残し、「ミノタウルス」から身を守るためにと、紫陽に樹木の会から購入した短剣を授けている。
- 古川(ふるかわ)
- 悠のカウンセリングを担当する精神科医の女性。
石見崎の関係者
- 石見崎 真理(いしみざき まり)
- 石見崎の娘。障害があり車椅子生活で介護が必要。石見崎の通夜に姿が見当たらず、行方不明であることが明らかとなる。
- 都内ではなく、何故か茨城の山城公園で石見崎に車椅子を押され散歩していたのを、悠に一度だけ目撃されている。
- アモール・ナデラ
- インド人。元タクシー運転手。54歳。石見崎に24年前にループクンド湖で発掘された人骨のDNA鑑定を依頼し、日本へ送付する。
- 24年前、CCMB(細胞分子生物学研究所)の主任研究員としてループクンド湖での発掘調査隊と共同で人骨調査に携わる。
神立大学
- 新橋 郁恵(しんばし いくえ)
- 石見崎の研究室の学生で、悠の後輩。修士課程2年目。マッチングアプリで出会った同い年の勇太という彼氏がいる。
- 糸原 和幸(いとはら かずゆき)
- 悠と同じ研究棟で働くポスドクの研究員。30代半ば。放射性炭素年代測定で、ループクンド湖の人骨の年代測定を行う。悠のことを御曹司とからかう。
- アデニン、チミン、グアニン、シトシン
- 石見崎の研究室で飼われているハムスター。別の研究室の実験動物であったが、余っていたことから「悠が淋しくないように」との理由で石見崎が連れてきた。
- 名前はDNAを構成する四種類の有機塩基A、T、G、Cから取られた。グアニンは餌の食べ過ぎで亡くなっている。
平間の関係者
- 小野寺 洋一(おのでら よういち)
- フリーの雑誌記者。毛虫のような眉毛に弛んだ頬、襟ぐりの汚れたTシャツにヤニ臭を漂わせる。かつて東邦ジャーナルに所属していた。
- 日江製薬のスキャンダルを追い、京一と樹木の会との関係を取材するが身の危険を感じ、それまでの取材情報の入ったUSBメモリを平間に託し姿を消す。
樹木の会
- 真鍋 宗次郎(まなべ そうじろう)
- 日本有数の新興宗教団体「樹木の会」の創設者兼教祖。故人。亡くなる前に「魂を廻る地から甦る聖母が、すべての生命を強く統合する」と予言を残している。
- 七瀬 弓彦(ななせ ゆみひこ)
- 日江製薬前会長。京一の父親。故人。樹木の会に傾倒しており、生前は真鍋の世界各国の要人や聖地への訪問に同行していた。
仙波家
警視庁
- 黛 良子(まゆずみ りょうこ)
- 石見崎の殺害事件を捜査する女刑事。30過ぎくらい。黒い長髪を後ろで束ね、すらりとした身体と知的で凛とした顔つきをしている。
- 多田(ただ)
- 警部補。黛の先輩。中年の小男で40代後半くらい。身長の割に肩幅が広く、彫りの深い顔。量の少ない脂ぎった髪をワックスで後ろに撫でつけ額を晒している。
用語
- ループクンド湖
- 「神秘と骨の湖」として知られるインドのウッタラーカンド州の高所に実在する氷河湖。24年前、仙波佳代子をリーダーとする調査隊により人骨の発掘が行われる。
- 日江市(ひのえし)
- 茨城県北部に位置する架空の地方自治体。東京から車で2時間ほどの距離。悠の出身地で、日江製薬が研究拠点を構えていた。
- 神立大学(かんだちだいがく)
- 石見崎が教授を務め、悠が博士課程を履修している都内の大学。
- 日江製薬(ひのえせいやく)
- 日江市に拠点を構える製薬会社。高度な製薬技術を持つ。樹木の会との結びつきが強い。
- 樹木の会
- 真鍋宗次郎により創設された新興宗教団体。政界、芸能界、産業界、警察など至る所に息のかかった信者がいて、絶大な影響力を持つ。
- 新明阿(しんめいあ)
- 中国の大手コングロマリット産業。日江製薬の高度な製薬技術を目的に敵対的買収を仕掛けるが、日本政府による庇護でそれを阻止される。
- 山城美術館(やましろびじゅつかん)
- かつて悠の母方の祖父が運営していた日江市にある山城公園の麓に位置する閉館した美術館。左右対称の巨大な両刃の斧と、ミノタウロスの油絵が今でも飾られている。
- 二階建ての白い洋館で、9年前、閉鎖された日江製薬の研究所から拝借したプロジェクターを二階に持ち込み、悠と紫陽が映画を観る「避難所」として使っていた。
- 山城公園
- 日江市で、かつて山城があった区画に設けられた公園。麓の本丸跡へと続く迷路のように入り組んだ道の傍らに、地元の小学生が課外授業で挿し木した紫陽花が植えられいる。
- 日江市応用技術センター
- 日江製薬の研究所跡にある日江市の研究施設。
書誌情報
- 文庫本:2025年2月19日発売[1]、宝島社文庫、ISBN 978-4-299-06404-2
受賞
- 第23回『このミステリーがすごい!』大賞 文庫グランプリ[8][注 1]
- 第11回ミヤボン2025 大賞
- BUN-1グランプリ2025
- 啓文堂書店 文庫大賞2025
テレビドラマ
| 一次元の挿し木 labyrinth of Hortensia and the Minotaur | |
|---|---|
| ジャンル | 連続ドラマ |
| 原作 | 松下龍之介 |
| 脚本 |
高田亮 清水匡 |
| 監督 |
城定秀夫 頃安祐良 日髙貴士 |
| 出演者 |
山田涼介 白石聖 木戸大聖 土居志央梨 和田正人 笠原秀幸 猪塚健太 小橋めぐみ 藤井美菜 田畑志真 堀田真由 松下由樹 吉原光夫 正名僕蔵 小手伸也 鈴木保奈美 佐々木蔵之介 |
| 音楽 | 堤裕介 |
| エンディング | LANA「Truth in the dark」[9] |
| 言語 | 日本語 |
| 製作 | |
| チーフ・プロデューサー | 中間利彦(読売テレビ) |
| プロデューサー |
中山喬詞(読売テレビ) 安部祐真(読売テレビ) 清家優輝(ファインエンターテイメント) 岡田健人(ファインエンターテイメント) |
| 制作 | ファインエンターテイメント(協力) |
| 製作 | 読売テレビ |
| 放送 | |
| 放送チャンネル | 日本テレビ系列 |
| 映像形式 | 文字多重放送 番組連動データ放送 |
| 音声形式 | ステレオ放送 解説放送 |
| 放送国・地域 | |
| 放送期間 | 2026年7月5日 - |
| 放送時間 | 日曜 22:30 - 23:25 |
| 放送枠 | 日曜ドラマ |
| 放送分 | 55分 |
| 回数 | 10(予定) |
| 公式サイト | |
2026年7月5日から読売テレビ制作・日本テレビ系「日曜ドラマ」枠にて放送中[2][5]。主演は山田涼介[2]。
あらすじ(テレビドラマ)
キャスト
主要人物(テレビドラマ)
日江製薬(テレビドラマ)
警視庁(テレビドラマ)
新明阿(テレビドラマ)
日江製薬の買収を進める中国企業。
報道関係者(テレビドラマ)
七瀬家(テレビドラマ)
仙波家(テレビドラマ)
神立大学(テレビドラマ)
その他(テレビドラマ)
スタッフ(テレビドラマ)
エピソードリスト(テレビドラマ)
| 日本テレビ系列 日曜ドラマ | ||
|---|---|---|
| 前番組 | 番組名 | 次番組 |
10回切って倒れない木はない
(2026年4月12日 - 6月14日) |
一次元の挿し木
(2026年7月5日 - ) |
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