一関遊水地
岩手県にある北上川水系の洪水調節施設
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概要
一関遊水地は、1947年(昭和22年)のカスリン台風および1948年(昭和23年)のアイオン台風による甚大な洪水被害を契機として計画された。事業は1972年(昭和47年)に着手され、2026年(令和8年)に完成[2]し、北上川治水計画の重要施設[1]として機能している。
一関市から宮城県北にかけての北上川の狐禅寺(こぜんじ)狭窄部から河口までの約80kmに対し、高低差がわずか10mしかないため、狐禅寺狭窄部により流れが滞留し、一関付近で頻繁に水害を発生していた。特に昭和22年のカスリン台風、昭和23年のアイオン台風による洪水被害は市街地に壊滅的な被害をもたらした。一関遊水地は、それらの被害をきっかけに計画され、洪水時に水を一時的に貯めることで、一関市街地への氾濫を防ぐための施設[1][3]である。
1972年(昭和47年)に事業を開始した「北上川水系河川整備基本方針[4](平成18年11月)」では、狐禅寺地点の基本高水流量13,600m³/sのうち、上流ダム群と一関遊水地で5,100m³/sを調節し、計画高水流量を8,500m³/sに抑える計画としている。このうち、一関遊水地の調節量は約2,300m³/sである。
一関遊水地は、周囲堤と小堤を組み合わせた二線堤方式を採用し、3つの遊水地で構成されている。中小洪水時は周囲堤が市街地、小堤が遊水地内の耕作地への浸水を防ぎ、大洪水時は小堤防内の遊水地内の農地を浸水させることにより市街地への浸水を防ぐ。総面積1,450haであり、釧路遊水地(9,160ha)、渡良瀬遊水地(3,300ha)に続く面積で日本有数の規模[5]となる。
遊水地面積は約1,450haで、全国有数の規模を持つ。平常時は主に農地として利用されるが、洪水時には北上川の流水を受け入れる遊水地として機能する。[1][6] [7]
なお、一関遊水池にある東北新幹線の鉄橋「第1北上川橋梁」(1975年12月竣工)は、日本の鉄道橋の中では最長の3870 mを誇る。
経過
- 1947年(昭和22年)9月 カスリン台風襲来。磐井川両岸の堤防決壊。一関市において死者100名。
- 1948年(昭和23年)9月 アイオン台風襲来。磐井川流域で土砂崩れ739か所両岸の堤防決壊。せき止められた土砂が土石流となり、下流の堤防が決壊。死者・行方不明者473名。
- 1972年(昭和47年) 北上川治水事業計画を発表
- 1974年(昭和49年) 反対同盟結成
- 1976年(昭和51年) 反対同盟解散
- 1983年(昭和58年)10月 周囲堤着工
- 1998年(平成10年)8月 周囲堤の高さがアイオン台風の水位を超えていたため、外水被害から市街地が守られる。内水被害は発生。
- 2002年(平成14年)8月 カスリン・アイオン台風に次ぐ規模の台風が発生したが、外水被害から市街地が守られる。内水被害は発生。
- 2006年(平成18年)周囲提完成。
- 2011年(平成23年)6月 北上川、衣川の堤防完成。
- 2020年(令和2年)12月 地役権保障に関する協定締結。
- 2023年(令和5年)12月 小堤、水門完成。
- 2024年(令和6年)2月 一関市北上川治水地権者会解散。7月、9月洪水時に水門の緊急操作で農地浸水を防ぐ。
- 2025年(令和7年) 磐井橋陸閘完成。
- 2026年(令和8年) 地内湛水地の掘削完了。7月、供用開始[8][9]した。
目的
一関遊水地には次の三つの目的がある。[1]
- 北上川本川の洪水調節
- 一関市街地および平泉町市街地の洪水防御
- 中小洪水時における遊水地内への氾濫防止
洪水時には北上川の流量ピークを低減し、下流域への負担を軽減する役割を担う。
施設
遊水地 一関遊水地は3つの遊水地で構成される。 名称 面積 第1遊水地 約820ha 第2遊水地 約470ha 第3遊水地 約160ha 合計面積は約1,450haである。
周囲堤 遊水地の周囲には「周囲堤」が築かれており、一関市街地や平泉町市街地を洪水から防御する。第1遊水地では周囲堤と小堤を組み合わせた「二線堤方式」を採用している。
水門 主要施設として、 「大林水門」 「長島水門」 「舞川水門」 の3基が設置されている。
排水施設 周囲堤整備後に発生する内水被害へ対応するため、 「前掘排水機場」 「平泉排水機場」 「吸川救急内水排水施設」 などが整備されている。
治水計画上の位置付け
北上川水系河川整備基本方針では、狐禅寺地点における基本高水流量13,600m³/sに対し、上流ダム群と一関遊水地によって5,100m³/sを調節する計画となっている。このうち一関遊水地単独で約2,300m³/sを調節する能力を持つ。計画高水流量は8,500m³/sに低減される。
関連河川改修
事業効果
2002年(平成14年)7月洪水を対象とした国土交通省の試算では、周囲堤等の整備によって浸水面積および浸水戸数が大幅に減少したとされる。 また、2007年(平成19年)洪水においても、整備効果により浸水被害の軽減が確認されている。[10]
歴史的意義
一関遊水地は、北上川上流域における治水計画の中核施設である。北上川は一関・平泉地区で地形的狭窄部を形成しており、大洪水時には上流域に広く氾濫する性質を持つ。一関遊水地は、この地形的特性を利用して洪水を一時的に貯留することで、下流域の堤防嵩上げや河道拡幅への依存を減らす役割を担っている。
そのため一関遊水地は、「北上川上流治水の要」とも位置付けられる大規模洪水調節施設であり、北上川水系全体の治水安全度向上に大きく寄与している。



