仮面山荘殺人事件
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概要
制作背景
東野は、本作の執筆当時、自身の作風が本格ミステリからやや離れつつあった一方で、古典的な「閉ざされた空間」における殺人という題材には依然として強い魅力を感じていた[3]。しかし、どのように非現実的な「密室」を成立させるかが大きな課題であり、山荘という舞台をどのように外界から隔絶させるかについて様々な検討を重ねていた[3]。
その試行錯誤の中で、「物理的に閉ざすのではなく、強制的に閉じ込めればよい」という発想に至り、登場人物たちが監禁されるという設定が生まれた[3]。この着想によって物語は本格ミステリかサスペンスかわからなくなったが、作品の中心となるトリックは比較的自然に導き出された[3]。
本作は執筆に際して大きな苦労を感じることなく書き上げることができた作品であり、作者自身も「まあまあの自信作」であったと振り返っている[3]。しかし、ノベルズ版は初版2万部の後に重版がかからず、商業的には期待したほどの成果を上げられなかったため、東野は「ことのほか売れず、がっかりした」と語っている[3]。
一方で、売上面での結果とは別に、東野は現在に至るまで本作を「面白い作品」であると評価している[3]。
あらすじ
- プロローグ
- ビデオ制作会社社長・樫間高之は運転中、急ブレーキで資産家令嬢・森崎朋美に追突される。朋美は左足首から先を失い義足となり、バレエができなくなった絶望から自殺を図るが、見舞いに来た高之に助けられる。これがきっかけで朋美は高之を気に入り、2人は交際を始める。
- 2年後、婚約した2人は結婚式を数日後に控えていた。しかし、慎重に運転していた朋美が自動車事故で崖から転落死する。結婚式直前で目撃者もいたため、事件や自殺とは考えられず、居眠り運転による事故と結論付けられる。
- 3か月後、朋美の父で森崎製薬社長・森崎伸彦・厚子夫妻の山荘に、親族、秘書、主治医、朋美の親友ら8人が集まる。早世した朋美を偲ぶ内輪のパーティーだった。
- 監禁 1日目
- 深夜、逃走中の銀行強盗 ジン・タグの2人組が山荘に侵入し、穏やかな雰囲気は一変する。外部との接触を絶たれた8人は、警察への連絡を試みる。SOSの文字を書いたり、タイマーで停電を起こして脱出しようとするが、SOSは消され、タイマーは破壊され失敗する。8人の中に、犯人に協力する裏切り者がいた。
- さらに、犯人の一人が何者かにビールに入れられた睡眠薬で眠り込む。そのため、8人のうち7人は鍵をかけられた部屋に閉じ込められ、厚子だけが人質となる。
- 監禁 2日目
- 翌朝、朋美の従姉妹の篠雪絵が背中を刺され死亡しているのが発見される。部屋は内側から鍵がかかっており、雪絵が深夜に強盗犯を入れたとは考えにくい。「後で行く……ドアの鍵をあけて……」というメモの断片が残されていたことから、犯人は銀行強盗ではない可能性が高い。
- 雪絵の日記からは『朋美が死んだ日のページ』が切り取られており、犯人は「朋美の殺害」に関与したか、朋美の復讐を企てている可能性が浮上する。
- 監禁 3日目
- 強盗犯の仲間フジが山荘に到着する。姿も声も出さないフジを「銀行の職員ではないか」と推理したことから、強盗犯たちは7人を殺害して逃走すると言い出す。それを阻止するため、雪絵を殺害した人物を特定する必要に迫られる。
- 伸彦の秘書・下条玲子は、裏切り者は伸彦だと推理する。「雪絵がピルケースに睡眠薬を補充するのを見た伸彦が、雪絵が朋美に睡眠薬を飲ませたと誤解し復讐した」と指摘すると、追い詰められた伸彦は窓から湖に飛び降り自殺を図る。
- その後、森崎製薬の弱みを握った強盗犯たちは皆殺しを撤回し、翌日の夜明け前に出ていくことになる。全員がそれぞれの部屋に閉じ込められ、高之が人質として拘束される。
- 監禁 4日目
- 縛られた高之が思考に耽っていると、飛び降り自殺をしたはずの伸彦が山荘に戻り、これまでの経緯を語り始める。
- 雪絵への復讐のため8人を山荘に集めた伸彦は、2日目の夜に雪絵を殺害した際、雪絵は死に際に「違うんです、でも同罪ですね」と言い残し、日記のページを破り飲み込んだという。その行動から、雪絵は犯人ではなく誰かを庇っていたのではないかと伸彦は言う。
- 犯人ではない雪絵を殺害したことを後悔し自首するという伸彦に、高之は手をかける。高之の過去が脳裏をよぎり、物語は予想外の結末を迎える。
登場人物
8人の宿泊者
- 樫間高之(かしま たかゆき)
- ビデオ制作会社経営。朋美の婚約者。伸彦の人脈で仕事を得ており、経営は順調。朋美の死後も「婚約者」として森崎家と交流がある。
- 森崎伸彦(もりさき のぶひこ)
- 利明と朋美の父。森崎製薬社長。
- 森崎厚子(もりさき あつこ)
- 利明と朋美の母。伸彦の妻。朋美の死を忘れられない。
- 森崎利明(もりさき としあき)
- 朋美の兄。
- 篠雪絵(しの ゆきえ)
- 厚子の姪。朋美の1歳下の従姉妹で、双子のように育った。物静かで温順な美女。大学卒業後、父の学習塾を手伝う。木戸から激しいアプローチを受けるも、生理的に受け付けず拒否している。かつて、朋美の婚約者として紹介された高之に好意を抱き、区切りをつけるためバレンタインデーの翌日にメモ付きのチョコを渡している。
- 木戸信夫(きど のぶお)
- 一正の主治医。父は厚子と一正の従兄。年下の雪絵に惚れ込み、執拗にアプローチする。
- 下条玲子(しもじょう れいこ)
- 伸彦の秘書。メモを取る癖がある。
- 阿川桂子(あがわ けいこ)
- 朋美の親友。小説家。幼少時から朋美とバレエを習っていた。朋美の事故が、親しい人物による睡眠薬などを使った殺人ではないかと疑っている。
強盗犯
- ジン
- 強盗犯。痩せて小柄。頭が切れる。
- タグ
- 強盗犯。大柄で粗暴。
- フジ
- 強盗犯たちのリーダー格。
その他
- 森崎朋美(もりさき ともみ)
- 高之の婚約者。結婚式4日前に交通事故で死亡。2年前に追突事故を起こして以来、運転を避けていたが、結婚式準備のため再開していた。2年前の事故は、朋美のスピード超過と車間距離不保持が原因で、樫間の車に追突。左足首から先を切断しバレエができなくなり、入院中に手首を切って自殺未遂。見舞いに来た樫間を気に入り、交際が始まった。
- 篠一正(しの かずまさ)
- 厚子の弟。雪絵の父で、小規模な学習塾を経営。経営状況は芳しくない。今回の山荘パーティーには不参加。
- 警察官
- 数名。強盗犯逮捕のため仮面山荘へ聞き込みに訪れる。
書誌情報
- 単行本:1990年12月1日発売、トクマ・ノベルズ、ISBN 978-41-9154407-9
- 文庫本:1995年3月7日発売[1]、講談社文庫、ISBN 978-40-6185966-1
- 新装版:2024年6月14日発売[2]、講談社文庫、ISBN 978-40-6535728-6
舞台
NAPPOS PRODUCE版(2019年公演)
2019年9月から10月にかけて、東京・大阪・新潟で舞台化された[4]。[5]
キャスト(舞台2019年)
スタッフ(舞台2019年)
公演日程(舞台2019年)
| NAPPOS PRODUCE版 舞台『仮面山荘殺人事件』(2019年公演)[5] | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 公演日 | 昼の部 | 夜の部 | 開催都市 | 劇場 | ||
| 2019年9月28日 | - | 18:00 | 東京 | サンシャイン劇場 | ||
| 9月29日 | 13:00 | - | ||||
| 9月30日 | - | 19:00 | ||||
| 10月2日 | 14:00 | - | ||||
| 10月3日 | - | 19:30 | ||||
| 10月4日 | - | 19:00 | ||||
| 10月5日 | 13:00 | 18:00 | ||||
| 10月6日 | 13:00 | - | ||||
| 10月11日 | - | 19:00 | 大阪 | サンケイホールブリーゼ | ||
| 10月12日 | 13:00 | - | ||||
| 10月13日 | 13:00 | - | ||||
| 10月19日 | - | 16:00 | 新潟 | 新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ) | ||
NAPPOS PRODUCE版(2023年公演)
2023年9月から10月にかけて、東京・大阪で再公演予定[6][7]。脚本・演出は成井豊[4][6]。
キャスト(舞台2023年)
スタッフ(舞台2023年)
- 脚本・演出 - 成井豊
公演日程(舞台2023年)
| NAPPOS PRODUCE版 舞台『仮面山荘殺人事件』(2023年公演)[7] | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 公演日 | 昼の部 | 夜の部 | 開催都市 | 劇場 | ||
| 2023年10月11日 | - | 19:00 | 東京 | サンシャイン劇場 | ||
| 10月12日 | 14:00 | - | ||||
| 10月13日 | - | 19:00 | ||||
| 10月14日 | 13:00 | 18:00 | ||||
| 10月15日 | 12:00 | 15:00 | ||||
| 10月18日 | - | 19:00 | 大阪 | サンケイホールブリーゼ | ||
| 10月19日 | 13:00 | - | ||||