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体力 (ゲーム)

ゲーム関連の属性 From Wikipedia, the free encyclopedia

コンピュータゲームやテーブルゲームにおいて、体力(たいりょく、英: Health)は対象がゲームから脱落するまでに耐えられるダメージや疲労の最大量を定める属性である。ロールプレイングゲームにおいては、一般的にキャラクターやオブジェクトの体力を示す数値的属性であるヒットポイント(HP)という形式をとる[1][2]。ゲーム内の対象は、プレイヤーキャラクター、ボス、あるいはモブキャラクターなどが該当する。また体力は、ゲーム環境内の破壊可能な要素や、乗り物およびその個別パーツといった無生物に設定されることもある。コンピュータゲームにおいて体力は、分数による数値表記、体力ゲージ、あるいは一連の小さなアイコンなどの視覚的要素で表現されることが多いが、キャラクターの心拍音などの効果音によって表現される場合もある。

薄い赤色の棒グラフで、そのうち39%は濃い赤色で塗りつぶされている。
体力ゲージ、キャラクターの健康状態を表す

システム

コンピュータゲームでは、テーブルトークRPGと同様に対象は通常攻撃を受けることで体力を失う[3][4]。防具や装甲は受けるダメージを軽減する役割を果たす[3]。タンク(英語版)役のキャラクターは、一般的に体力と防御力が高く設定されている[2][5]。多くのゲーム、特にロールプレイングゲームでは、プレイヤーは初期状態では低い体力と防御力で開始するが[6]、必要な経験値を獲得してキャラクターのレベルを上げることで、これらの値を増加させることができる[7][8]。

ゲームデザインにおいて、プレイヤーキャラクター(または操作対象のオブジェクト)が体力を失っていることを明確に示すのは重要であると考えられている。ゲームデザイナーのスコット・ロジャーズは、著書『Level Up! The Guide to Great Video Game Design』の中で、「攻撃を受けるたびにプレイヤーは死に近づくため、体力の減少は明確な方法で示すべきである」と述べている。体力減少の視覚化の例としてロジャーズは、ダメージを受けるたびに鎧が剥がれていく『魔界村』のアーサーや、深刻なダメージを受けるとボンネットから煙が噴き出す『グランド・セフト・オート』シリーズの自動車を挙げている[9]。また歴史家のジョン・ピーターソンは、「ヒットポイントは不確実性と多様性をもたらす」とした上で、「『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では、攻撃の命中がほぼ確実な状況であっても、ダメージダイスが耐久力によるもう一つの生き残るための仕組みを提供し、死を猶予して戦闘のドラマ性を高める別の手段となっている」と解説している[10]。

体力の採用は、開発者が複雑なダメージ判定システムを作る必要がなくなるためゲーム開発のプロセスを簡略化できるほか、コンピュータによるゲーム内の計算処理を簡素化し、プレイヤーにとってもゲームを理解しやすくする[11]。一方で、より複雑でリアリティのあるダメージシステムを採用しているゲームも存在する。『Dwarf Fortress(英語版)』では、体力の代わりにドワーフの身体がパーツごとに分かれており、部位ごとにダメージを受ける仕組みになっている[12]。『Fallout』シリーズではヘルスポイントを採用しつつも、敵の異なる部位にダメージを与えることができ、それがゲームプレイに影響を与える[13][14]。例として、足を負傷すると骨折して移動速度が低下し[15]、腕を負傷すると武器を落とすことがある[13]。また、体力がストーリー上の演出として機能することもある。『アサシン クリード』では、主人公が大きなダメージを受けると正しい記憶から逸脱したとみなされ、ゲームオーバーとなって直前のチェックポイントに引き戻される[16]。

『ゼルダの伝説』や『モンスターハンター』といった一部のゲームでは、プレイヤー側の体力のみが表示される。これは、あと何回攻撃を与えればよいのかをプレイヤーに分からなくすることで、ゲームの予測可能性を低くするために採用されている[17]。対照的に、『ストリートファイター』シリーズなどの他のゲームでは、プレイヤーと対戦相手の双方の体力ゲージが明確に表示されている。これにより、プレイヤーは自身の戦闘戦術がどれほど効果的であるかや、敵を倒すまでにあと何回攻撃する必要があるかを把握することができる[18]。

回復

プレイヤーは、ポーション、食料(英語版)、救急キットといった様々なアイテムを使用することで、キャラクターの体力を回復できることが多い[19]。ロールプレイングゲームでは、医師の診察を受けたり宿屋で休息したりすることでも体力を回復できるのが一般的である[20]。また、多くのゲームには「ライフスチール」や「ライフリーチ」と呼ばれるシステムが採用されており、敵から体力を吸い上げることで自身の体力を回復させることができる[21][22][23][24][25][26]。体力を回復する手法は作品ごとに異なり、ゲームのジャンルに依存する。テンポの速いアクションゲームではキャラクターの体力を迅速に回復させることが重視される一方で、RPGではリアリティを追求するために、より緩やかなペースでの回復手法が特徴となっている[27]。

多くのゲームでは、キャラクターがダメージを受けずにいると自動的に体力が回復する回復システムが採用されている。これにより、困難な戦闘の後に体力を立て直す機会が与えられるため、ゲームの難易度が緩和される。このシステムにより、プレイヤーは不利益を受けることなく危険な箇所を安全に通過できる場合もある[28]。

タッグチーム方式(交代制)の対戦ゲームでは、控えに回っているキャラクターの体力が一部自動回復するシステムが多く見られる[29]。

アーマークラス

一部のロールプレイングゲームにおいて、アーマークラス(Armor Class、略称: AC、防御力などとも呼ばれる)とは、キャラクターに対する攻撃を命中させることがどれほど困難かを示す派生能力値(英語版)である。また、キャラクターの体力に対するダメージ軽減量を表す場合もある。アーマークラスは通常、攻撃を回避する能力や装備している防具など、キャラクターの物理的な防御性能を表現したものである[30][31][32]。アーマークラスは、体力や戦闘におけるゲームバランス調整の一環として利用されるシステムである[33]。アーマークラスは、「ウォーゲームにおける防御的な回避動作とほぼ同等」とされる[30]。

表現

ピクセル化されたハートが11個表示され、そのうち7個半が塗りつぶされている。
『ゼルダの伝説』に類似したハートを用いた体力ゲージ

体力は、多様な方法で表現される[16]。最も基本的な形態としては、分数形式の数値表記や体力ゲージのほか[34]、ハートやシールドといった様々なアイコンが挙げられる[35]。近年のゲームでは、ゲーム展開の緊張感や興奮を高めるために、初期のダメージほど大きく減少し、死に近づくにつれて減少量が小さくなる非線形体力ゲージが採用されることもある[36]。

体力ゲージは、ゲームの他のUI(ユーザーインターフェース)要素と組み合わせて表現されることもある。『Doom』では、画面下部に数値をパーセンテージで表示する体力ゲージに加え、キャラクターの顔グラフィックがメーターの役割を果たしている。主人公がダメージを受けると、その表情は次第に苦痛に歪み、血で覆われていく[37]。また、体力ゲージがキャラクターの一部となっている場合もある。『Dead Space』では主人公のスーツの背中に表示され[38]、『Trespasser』では主人公の胸元にあるタトゥー(刺青)として表現されている[39]。VRゲームである『Half-Life: Alyx』では、プレイヤーの非利き手の甲にゲージが配置されており、体力を確認するにはトラッキングされた自分の手を物理的に見つめる必要がある[40]。キャラクターの状態は音によって伝達されることもある。『Dungeons of Daggorath(英語版)』では、主人公の心拍音が効果音として聞こえ、その拍動の速さは受けたダメージの大きさに依存している[41]。『サイレントヒル』も同様のシステムを採用しているが、こちらは心拍をDUALSHOCKコントローラーの振動を介してプレイヤーに伝えている[42]。

プレイヤーキャラクターの体力ゲージは、ゲームのヘッドアップディスプレイ(英語版)(HUD)において重要な位置を占めることが多い。『ゼルダの伝説』では、画面上のHUDのうち全体の約3分の1を体力表示が占めている[43][より良い情報源が必要]。一方で、このような表示をまったく設けないゲームも存在する。『スーパーマリオ』シリーズでは、プレイヤーキャラクターの初期状態の体力は1のみであり、体力の残量はキャラクターの容姿によって表現される。スーパーキノコを獲得するとキャラクターの体が大きくなり、体力が1追加される[44]。また、『コール オブ デューティ』や『Halo』といった一部のファーストパーソン・シューティングゲームでは、体力の具体的な数値はプレイヤーから隠されている。その代わりに、キャラクターが大きなダメージを受けるとゲーム画面(またはダメージを受けた画面の一部)が赤く染まり、血の滴りなどが描かれることで、実際の怪我による効果を疑似体験させる演出が施される。体力が回復するにつれて、これらの視覚効果は徐々に消えていく[45]。

歴史

ヒットポイント

「ヒットポイント」という用語は、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の共同制作者であるデイヴ・アーネソンによって考案された[46][47][48]。アーネソンは、ゲイリー・ガイギャックスが以前制作したゲーム『チェインメイル』をベースに、ガイギャックスと共に卓上ロールプレイングゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の開発を進めていた。その中でアーネソンは、大軍勢を率いるよりも、小規模な部隊を指揮する方がプレイヤーにとって面白いと感じていた。これにより、プレイヤーは分隊の各メンバーの役割を演じることができるようになった。一方で、この手法には1つの欠点があった。『チェインメイル』のルールでは、各戦闘時にサイコロを振り、出た目によってキャラクターが敵を倒すか、逆に一撃で倒されるかが決まる仕組みになっていたためである。プレイヤーは自分たちが思い入れを持ったキャラクターを簡単に失いたくなかったため、アーネソンは、以前彼が関わったウォーゲーム『Don't Give Up the Ship(英語版)』や『Ironclads(英語版)』で採用されていた類似の仕組みを基に、「ヒットポイント」システムを生み出した[46][48][49][50]。このシステムでは、各キャラクターは一定数のヒットポイントを持ち、攻撃を受けるたびにその数値が減少していく。これにより、キャラクターは敵からの複数回の攻撃に耐え、生き残ることが可能となった[46]。アーネソンは「プレイヤーが制御する対象を軍隊から個々のキャラクターへと移行させた際、プレイヤーは『モンスターを一撃で倒せるかどうか』よりも『モンスターに一撃で殺されたくない』という点を重視していた」と語っている[10]。

「PC Gamer」のジョディ・マクレガーは、「D&Dの影響を受けたコンピュータゲームが、最初にヒットポイントを模倣した。それは1975年まで遡り、イリノイ大学によって開発されたPLATOシステム向けにプログラミングされたゲーム『PEDIT5』や『DND』にまで見られる」と述べている[10]。ヒットポイントを採用した初期のパソコンゲームとしては、体力が分数形式で表記されていた『ローグ』(1980年)[51][52]や、プレイヤーキャラクターの状態に応じて心拍音が変化する演出を取り入れた『Dungeons of Daggorath(英語版)』(1982年)[41]などが挙げられる。また、アクションゲームにおいても、一撃で即死する仕様から、複数回のダメージに耐えられる体力システムへの移行が進んだ。その例として、攻撃を受けると減少するエネルギー量を数値で表現したSNKのアケ―ドシューティングゲーム『オズマウォーズ』(1979年)や、攻撃を受けると機動性が低下する代償と引き換えに複数回のダメージに耐えられるマテルのインテレビジョン用ソフト『Tron: Deadly Discs(英語版)』(1982年)などが挙げられる[53]。

体力ゲージ

体力ゲージが導入される以前のアクションゲームでは、一度ダメージを受けただけで即死となるものの、残機を消費することでゲームを続行できる残機制が一般的であった。体力ゲージの導入により、プレイヤーにはミスをするプレイ上の猶予が与えられるようになった。また、開発者にとっても敵キャラクターが与えるダメージ量を調整することで、ゲームの難易度を自由にコントロールすることが可能となった[54]。

データイーストがアーケード用「デコカセットシステム」向けに開発した『Flash Boy』(1981年)は、漫画・アニメ作品『鉄腕アトム』(1952年–1968年)を題材にしたスクロールアクションゲームであり、時間の経過とともに徐々に減少するエネルギーゲージを備えていた。このエネルギーの一部は、一時的に無敵状態になるための代償として消費することができた[55]。また、任天堂が開発したアーケード用ボクシングゲーム『パンチアウト!!』(1983年)にはパワーメーターが導入されており、プレイヤーが相手に攻撃を命中させるたびに回復し、相手の攻撃を回避し損ねると減少した。このメーターが完全に底をつくと、プレイヤーキャラクターは意識を失ってしまう[56]。

コナミが開発したアーケード用対戦型格闘ゲーム『イー・アル・カンフー』(1984年)は、『空手道』(1984年)のポイント制(一本勝負方式)に代わり、体力ゲージシステムを採用した。各ファイターは体力ゲージを持ち、攻撃を受けるたびにそれが減少していき、ゲージが完全に底をつくとノックアウトとなる。『イー・アル・カンフー』は、体力ゲージを対戦格闘ゲームにおける標準的な機能として定着させた[57]。また、アイレムが開発したアーケード用ベルトスクロールアクションゲーム『スパルタンX』(1984年)では、プレイヤーの体力を表すために体力ゲージが使用されており、ダメージを受けるとゲージが減少した。本作ではプレイヤーキャラクターだけでなくボスキャラクターにも体力ゲージが用意されていたため、ボス戦の最中は一時的に一対一の対戦格闘ゲームのような形式となった[58][59]。『スパルタンX』は、ベルトスクロールアクションなどの横スクロールアクションゲームにおいて、体力ゲージを標準的な機能として確立させた[59]。

体力ゲージは、ブループラネットソフトウェアが開発した『ザ・ブラックオニキス』(1984年)を皮切りに、ロールプレイングゲームにおいてもヒットポイントを視覚的に表現する手法として使われ始めた。この演出はT&E SOFTのアクションRPG『ハイドライド』(1984年)における体力ゲージの採用へとつながり、同作ではさらに一歩進めて自動回復する体力ゲージが導入された[60]。また、ナムコのアーケード用アクションRPG『ドラゴンバスター』(1984年)は、ロールプレイングゲームにおける体力ゲージの存在をさらに広く定着させた[54]。

回復

1982年に発売されたApple II用プラットフォームゲーム『クライシスマウンテン(英語版)』では、体力が3(最大)から0(死亡)までの数値で表示され、1ポイントずつ徐々に回復する仕組みが採用されていた[61]。任天堂のアクションゲーム『パンチアウト!!』(1983年アーケード版)では、プレイヤーが敵に攻撃を成功させるたびにパワーメーターが回復した[56]。『ハイドライド』(1984年)や『イース』シリーズでは[62][63]、キャラクターの体力(ヒットポイントと体力ゲージの両方で表記)は、操作を行わずに静止していると徐々に回復した[64][65]。『Halo: Combat Evolved』(2001年)は、ファーストパーソン・シューティングゲームにおいて自動回復システムを普及させた作品として評価されている[66]。一方で、「GamesRadar+」のジェフ・ダンによると、『Halo: Combat Evolved』で自動回復していたのはシールドのみであり、現在のような形態での体力自動回復システムを最初に導入したのは『ゲッタウェイ』(2002年)であるとされる[62]。

防御力

アーマークラスという用語もまた、デイヴ・アーネソンが考案したとされており、これは『チェインメイル』やその後の『ダンジョンズ&ドラゴンズ』で使用された[67][68]。「アーマークラスの概念は『Don't Give Up the Ship!』のルールから影響を受けた可能性があるものの、同作のゲームルール内にその名称を持つ明確な能力値は存在しない。(中略)アーネソンが『Don't Give Up the Ship!』で適用していたアーマークラスに関するローカルルールが、同ウォーゲームの最終的な市販版に収録されなかった可能性が高いと考えられる」[49]。一方で、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の後に登場した数多くのロールプレイングゲームでは、「アーマークラス」という用語は使われなくなり、単に「防御力」という言葉に置き換えられていった[49]。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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