制限修飾系

From Wikipedia, the free encyclopedia

制限修飾系(せいげんしゅうしょくけい、英語:Restriction-Modification system; RM system)とは、細菌古細菌といった原核生物がしばしば保持する、バクテリオファージ等の感染によってもたらされる外来DNAに対する防御システムの1つである。

このシステムは、制限酵素と呼ばれるDNAエンドヌクレアーゼ(英:Restriction Enzyme、REase)とメチル化酵素であるDNAメチルトランスフェラーゼ(英:Methyltransferase、MTase)の2種類の酵素から成り立っている。このシステムは、バクテリオファージなどによって導入された外来DNA(感染因子)を、制限酵素によって切断して破壊する。

制限酵素はある特定の配列(モチーフ配列)を認識し、DNA鎖の非末端のホスホジエステル結合を切断する特徴がある。一般にこのモチーフ配列は4–10塩基対程度の長さであり、しばしば回文的な構造を持つ。その短さのためもあり、殆どの場合、外来遺伝子中のみならず、それを発現している細菌自身のゲノム中にもモチーフ配列が多数存在している。そこで、制限酵素によって細菌自身のDNAが破壊されることを防ぐために、細菌DNA中のモチーフ配列はDNAメチルトランスフェラーゼ(メチル化酵素、MTase)によってメチル基修飾が付加される。

このようなメカニズムにより、自身のDNAをメチル化により防御しながら、外来遺伝子を制限酵素で切断する、という防御システムを原核生物は発達させてきた。既知の細菌系統の約4分の1からこの制限修飾系を少なくとも1セット所有しており、約半分の細菌系統では複数タイプのシステムを持っていることが知られている。

制限修飾系は、1952年から1953年にかけて、サルバドール・エドワード・ルリアとMary Humanによって報告された[1][2]バクテリオファージをバクテリアに感染させたところ、バクテリオファージのDNAが何らかの修飾を受けて成長が制限される(抑制される)ことを発見した[3]。1953年に、Jean WeigleとGiuseppe Bertaniは、異なるバクテリオファージを使用して、ホストの細菌側から同様の改変と制御を受ける例を報告した[4]。1962年のDaisy Roulland-Dussoixとヴェルナー・アーバーによる研究[5]やその後の多くの研究から、この制限は細菌が持つ特定の酵素によってバクテリオファージのDNAが改変され、分解が引き起こされることによるものである、ということが分かった。ハミルトン・スミスが、現在制限酵素として知られている酵素の最初のクラスであるHindIIを分離し、ダニエル・ネイサンズはこれが制限酵素地図の作成に使用できることを示した[6]

制限酵素はDNAの制御操作に使用できるため、この酵素が実験室で単離されたことは、遺伝子工学における重要なマイルストーンである。その功績から、ヴェルナー・アーバーダニエル・ネイサンズハミルトン・スミスは、1978年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。

制限修飾系のタイプ

制限修飾システムには4つタイプが知られており、タイプI、II、IIIでは制限酵素活性とメチル基転移(メチラーゼ)活性を備えており、タイプIVは制限酵素活性のみを持っている。番号は発見された順に命名されている。

タイプI

最も複雑で、R(制限)、M(修飾)、S(特異性)の3つのポリペプチドから構成されている。Sサブユニットは、制限とメチル化の両方の特異性を決定している。この複合体はDNAの切断とメチル化修飾の両方を行える。どちらの反応にもATPが必要であり、しばしば切断サイトは認識部位からかなり離れており、さらに厳密には決まっていない。そのため、まちまちな長さでDNAが切断されてしまい、ゲル電気泳動では分離したバンドを明瞭に観察することは容易ではない。

タイプII

最もシンプルな構造であり、遺伝子工学の分野において最も普及している。メチルトランスフェラーゼとエンドヌクレアーゼは、複合体ではなく2つの別個のタンパク質としてコード化され、独立して機能する。両方のタンパク質は同じ認識部位を認識するため、活性をめぐって競合する。メチル化酵素は単量体として作用し、二重鎖を一度にメチル化する。エンドヌクレアーゼはホモダイマーとして機能し、両方の鎖の切断を促進する。認識配列の内部または近傍に存在する厳密に決まったサイトで切断が発生するため、ゲル電気泳動によって個別のフラグメントを観察できる。 このため、生命工学の分野では、DNA分析や遺伝子クローニングのためにタイプIIシステムがよく利用されている。

タイプIII

R(res)およびM(mod)のサブユニットをコードするタンパク質から構成される。この複合体は、メチル化修飾と切断の両方に作用する。 ただし、Mタンパク質は単体でメチル化活性を持つ。メチル化は、他のタイプとは異なり、DNAの1鎖でのみ発生する。RおよびMタンパク質によって形成されたヘテロ二量体は、同じ反応を修飾および制限することによって、それ自体と競合するため、しばしば不完全な消化をもたらす[7][8]

タイプIV

制限酵素のみを含み、メチル化転移を行うドメインを含まないため、完全なRMシステムとはみなされないことがある。他のタイプとは異なり、タイプIV制限酵素は修飾されたDNAのみを認識して切断する[9]

生態学的な機能

可動性遺伝子との関係

脚注

Related Articles

Wikiwand AI