動物の系統
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動物の系統(どうぶつのけいとう)については、現在もさまざまな論議があり、一定の意見の一致を見ていない。むしろ、最近まではある程度安定した見解があったものが、揺らいでいる状態にある。
動物の系統を論じるためには、動物の分類がある程度進まなければならなかった。ジャン=バティスト・ラマルクは、無脊椎動物(この言葉自体が彼の考案になるものである)の分類に取り組み、その中から進化論の考えをもつに至った。彼は動物の体制にいくつかの段階があると考え、それを上っていく進化と、その体制のままで生活環境に合わせた適応があると考えたが、具体的な道筋は示さなかった。
チャールズ・ダーウィンは、自然選択による進化論を発表した際、主に種の漸次的な変化について論じたが、種分化と系統の分化に関しては多くを述べていない。しかし、その進化論は多大な影響を各方面に与えた。特に、進化論に感銘を受け、生物学がそのあらゆる分野で進化論によって再構成されるべきだと考えたのがエルンスト・ヘッケルである。
ヘッケルの系統発生論
ヘッケルは、進化論に基づいて、動物の系統を解明することを考えた。そのころ、幼生の形態が、動物の類縁関係の解明に役立つことが、少しずつわかってきていたが、彼はそれを大胆に拡張した。彼の考えによると、発生の過程はその動物の進化の道筋そのものであって、だから、幼生が似通っているものは、そこまでの進化の道を共有する証拠なのである。彼のこの説は“反復説”と呼ばれる。彼はさらに、それを発生の初期にさかのぼって適用し、動物の系統全体を説き明かそうとした。
発生は受精卵に始まる。彼はこれを単細胞段階と考える。受精卵は細胞分裂を行い、多くの動物では中空で表面に繊毛を備えた、いわゆる“胞胚期”(ガスツルラ)となる。彼はこれを最初の多細胞動物の姿と考え、その仮想の姿に対してガスツレアという名をつけた。彼の説は、ここからガスツレア説と呼ばれる。
胞胚はその一部が中にもぐりこんで消化管の元基となり、やがてその反対側に新たな出入り口を作る。ここで、どの出入り口が口になるかは動物群によって大きく分かれ、節足動物、軟体動物など、無脊椎動物の多くは最初にできた出入り口(原口)が口になる(旧口動物)のに対して、棘皮動物や脊椎動物では原口は肛門になり、新たにできた出入り口が口になる(新口動物)。また、刺胞動物や扁形動物は消化管に出入り口がひとつしかない。
そこで、彼はこれを進化の道筋として理解した。つまり、ガスツレアにくぼみができて、そこで消化をするようになったのが動物の消化管の起源であると考えた。そうすると、最初に消化管をもった動物は、放射相称で、袋状の消化管をもっていたことになるから、刺胞動物がこれに当たる。ほとんどの動物が左右対称なのは、這って進む生活をするからだろうが、そうすると、刺胞動物から扁形動物へと進化したのだろう。その後、消化管が通り抜けへと進化するときに、新たな出入り口が口となるか、肛門となるかで進化の道筋が分かれ、新口動物と旧口動物に道が分かれた。それぞれの道筋で、それぞれ独自に体制を高度化させ、その結果、旧口動物からは節足動物や軟体動物が、新口動物からは脊椎動物が現われた、と説明したのである。
ヘッケルはこのような説明をさらに系統樹という図つきで説明し、多くの支持を得た。彼の説は、その後の研究により、細部においてさまざまな改編を加えられながらも、基本的に支持され続けた。それらはまとめて新ヘッケル派と呼ばれ、最近まではこの分野でほぼ定説と見なされていた。
それによれば、旧口動物は、扁形動物から肛門をもつに至ったのが紐形動物、そこから偽体腔動物である線形動物、触手動物などが生じ、さらに真体腔ができ、体節ができて環形動物が、そこからさらに節足動物が生まれたとする。軟体動物は、このあたりから体節を失ったものと見る。
一方、新口動物は、無脊椎動物が少ないので関係をたどるのは難しいが、棘皮動物は左右相称の動物から二次的に五放射相称になったと見られる。そして、原索動物から脊椎動物が進化したと考える。