包括的代謝パネル

From Wikipedia, the free encyclopedia

血液検査の検体:一本の検体で同時に多数の検査項目を実施することができ、しばしば、複数の検査項目がセットとして指示される。

包括的代謝パネル(ほうかつてきたいしゃパネル、英語: Comprehensive metabolic panel : CMP[1][注 1]とは、 米国で頻用される生化学検査のセットの一つである[2]。 電解質・糖代謝・腎機能・肝機能に関連する14の検査項目を含み、初診時の評価、疾患の経過観察、健康診断などに広く用いられる[3]。 日本でも同じ検査項目群を実施可能であるが、日本の診療報酬請求の体系にはCMPに相当する診療報酬請求用の生化学検査セットは存在しない[4][5]

包括的代謝パネルの構成

包括的代謝パネル(Comprehensive metabolic panel (CMP) 、CPTコード:80053)は米国の生化学検査セットの1つである。 電解質・糖代謝・腎機能・肝機能の基本的な評価項目を含むことから、初診時の評価、疾患の経過観察、健康診断などに広く用いられる[3]。 また、そのサブセットとしてBasic metabolic panel (BMP)がある[6]

包括的代謝パネルは以下の合計14検査項目をセットにしたものである[3][7]

電解質
ナトリウムカリウムクロール(塩化物イオン)[注 2]重炭酸/CO2[注 3][8]総カルシウム
腎機能
尿素窒素(BUN, UN)、クレアチニン
糖代謝
グルコース
タンパク質
総タンパク質アルブミン
肝機能
アラニンアミノ基転移酵素(ALT/GPT)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST/GOT)、 アルカリホスファターゼ(ALP)、 総ビリルビン

米国における位置づけ

CMP、および、そのサブセットであるBMPは、米国において、生化学検査セットとして広く用いられている[2][9]

CPT(Current Procedural Terminology)は米国医師会が管理する、医療行為の標準コードであり、診療報酬の請求に利用される[10]。 CPTには多数のパネル(検査セット)が登録されており、米国の医療では、しばしば、パネル単位で検査の指示と診療報酬の請求が行われる。 包括的代謝パネルもCPTに採録されているパネルの一つであり、高頻度に利用され、医療費に占める比重が高い。2024年の米国メディケア医療費の臨床検査の支払額では2位[注 4]を占めている[2][9]

MedlinePlus米国国立医学図書館により一般人・医療提供者向けに提供されている無料の医療情報サイトであるが、 CMP(およびBMP)は、臨床検査の一つとして独立のページで解説されている[3][6]

医療情報規格

LOINC(Logical Observation Identifiers Names and Codes、ロインク)は米国のレーゲンストリーフ研究所(Regenstrief Institute)で開発された、 医療情報の交換に用いる臨床検査の項目コードであり、 国際的に広く用いられているが、 CMPとBMPはLOINCで検査項目のセットとしてコード化されている(CMP:24323-8、BMP:51990-0)[11][12][13] [14]

関連するパネル

BMP

Basic metabolic panel:BMP(CPTコード:80048、基本的な代謝パネルの意、基本代謝パネル、基礎代謝パネルとも)[注 5]はCMPから総タンパク質・アルブミンおよび肝機能の項目を除いた、 合計8項目のサブセットである:電解質(ナトリウム、カリウム、クロライド、重炭酸/CO2、カルシウム)、腎機能(血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン)、糖代謝(グルコース)。BMPは、初診時の評価、疾患の経過観察、健康診断などで特に肝機能の評価を必要としない場合に用いられる[6][7]。 BMPも頻用されるパネルであるが、CMPよりは実施件数が少ない傾向がある[2]

なお、総カルシウムの代わりにイオン化カルシウムを含むBMPも定義されている(CPTコード:80047) [注 6] [15]

脂質パネル

脂質パネル(Lipid panel、CPTコード:80061)は総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロールの実測値、および、計算値のLDLコレステロール [注 7] が同時に報告される。その他、non-HDLコレステロール(総コレステロール - HDLコレステロール)などの計算項目も同時に報告されることがある[16][7][17]

脂質パネルは頻用されるパネルの一つである。2024年の米国メディケア医療費の臨床検査の支払額では3位を占めている[2]

なお、脂質パネルの生化学検査セットについては、英語では様々な同義語があり、MedlinePlusでは"lipid profile"(脂質プロフィル)として掲載されている他、"lipoprotein panel"(リポタンパクパネル)、"lipoprotein profile"(リポタンパクプロフィル)と呼ばれることもある。なお、この文脈ではリポタンパクという言葉が使用されているが、実際には高比重リポタンパク(HDL)や低比重リポタンパク(LDL)のようなリポタンパクそのものではなく、リポタンパクに含まれるコレステロール、すなわち、HDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)の検査であることに注意を要する [注 8] [18][17]

その他

米国の電解質パネル(electrolyte panel)、肝機能パネル(liver function panel)、腎機能パネル(renal function panel)の構成をCMP・BMPと対照して以下の表に示す[7]

米国でよく使用される生化学検査パネルの例(含まれる項目は「●」で表示)[7]
分野検査項目CPTコードCMPBMP電解質パネル肝機能パネル腎機能パネル
8005380048800518007680069
タンパク質 血清総蛋白84155
アルブミン82040
肝機能 アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST/GOT)84450
アラニンアミノ基転移酵素(ALT/GPT)84460
アルカリホスファターゼ(ALP)84075
総ビリルビン82247
直接ビリルビン82248
糖代謝 グルコース82947
電解質 ナトリウム84295
カリウム84132
クロール(塩化物イオン)82435
重炭酸/CO2[注 3]82374
総カルシウム82310
リン(無機リン)84100
腎機能 尿素窒素(BUN, UN)84520
クレアチニン82565

パネルの利点と欠点

包括的代謝パネルのような多項目の生化学検査セットのメリットとしては、利便性と効率性があげられる。 一項目ずつ検査を選択するのは煩雑であり、必要な検査項目を見落とす可能性があり、 多項目同時実施により、予想外の病態が発見できる可能性がある。 また、パネルは医療の標準化と一貫性のある医療に寄与する可能性がある[19]

一方で、セット化することにより、必ずしも必要のない検査の実施が増えることも懸念されている[20]。 たとえば、BMPとCMPが導入されてからカルシウムの検査件数は3倍以上に増える一方で、 カルシウム値が異常(高値または低値)となる率は減少し、カルシウム代謝の異常に関連する診断名の頻度には有意差は なかったとの報告がある[20]。 不必要な検査は、単にそれ自体が医療資源の無駄というのみではなく、医学的意義に乏しい基準値からの逸脱にさらに不必要な検査が追加され、 患者の肉体的・精神的・経済的負担となるとの主張がある[21]。 これらの問題に対する対策としては、一律に標準的なパネルを使用する代わりに、 医療施設ごとに対象とする患者集団に最適な検査セットを構築することが提案されている[22][19]

日本の現状

脚注

関連項目

Related Articles

Wikiwand AI