本トンネルは約500万年前に形成された妙義カルデラ西端に位置し、安山岩質凝灰角礫岩、自破砕状溶岩で構成される[6]。長野側坑口付近直上には高さ70m、傾斜角70°の岩塊がそそり立つ。
1996年に北海道の豊浜トンネルで起きた崩落事故を受け、日本全国の類似した箇所の点検調査が行われた。その結果、当トンネル上部の岩塊に亀裂が確認されたことから、2000年から2002年にかけてグラウンドアンカー工法による対策を実施した[7]。その後のモニタリング調査ではグラウンドアンカーの緊張力に増加傾向がみられ[8]、2009年から2014年にかけての追加調査では「くさびブロック」と呼ばれる崩落の可能性のある領域が見つかった[7]。東日本高速道路は、北野牧トンネル上部岩塊は直ちに崩落につながる危険性は低いものの、緊急輸送道路としての信頼性向上や利用者の安全確保の観点から、岩盤を除去する保全措置を打ち出した[8]。撤去工事の設計は応用地質、施工は大林組が受注。道路の通行規制や防護条件、周辺の環境条件などをもとに施工計画を検討。策定した計画は85パターンにのぼり、2017年2月より準備工事に着手した[8]。
現地は妙義荒船佐久高原国定公園内に位置し[6]、盛土や切土による地形改変を最小限にするため、大規模な仮設備の構築が特徴となった。藤岡側の斜面には、傾斜25度、長さ152mのインクラインを設けた。残土を積載したダンプカー2台、重量80トンを、片道6分40秒で昇降できる[8]。県道92号に接続する市道とインクラインの間には、長さ295mの仮桟橋Aと185mの仮桟橋Bが架設された。仮桟橋Aはピア高40mと高低差が大きく、安全かつ迅速な架設が可能な「LIBRA工法」が採用された[注釈 5]。長野側には現場から県道92号まで、設置距離410m・最大傾斜角38度のモノレールが敷設された。最大積載量は3トンで、作業員の移動や資材の搬入出に使用される。次いで、発泡スチロール製で大型クレーンの重量に耐えうる軽量盛土を構築し、これを使って55トンクレーンを組み立て、そのクレーンを用いて90トンクレーンを組み立てた。2基のクレーンで、長野側の仮桟橋Dのうち20mを架設。スパンを長く設計した仮桟橋をすべて架けるには90トンクレーンでは長さが足りないため、仮桟橋Dの20mが出来上がった段階で200トンのクローラークレーンを組み立てた[6]。
供用中の高速道路上への落石はあってはならず、多重の安全策が講じられた。上下線の長野側の坑口は、全長40mにわたるロックシェッドで覆われた。除去する岩塊表面には落石防止のため、高さ1.8m間隔で1200本のロックボルト[注釈 6]が打ち込まれた。ロックボルトの施工のため、各段1.8mの足場が34段組まれた。足場だけで16億円、仮設工全体では150億円を要した[11]。高さ70m、幅90mの規模で組まれた要塞のような足場は、現場の景観を特徴づけるものとなった[7]。
工事現場(2025年11月)。工事の進捗により、足場の解体が進んでいる。
2023年5月より、背面側からの削岩に着手した。現場の条件から火薬による発破は行えず、作業スペースに制約のある施工開始当初はバックホー式ドリルと静的破砕剤、7月よりクローラードリルとビッガー[注釈 7]を組み合わせた作業を行う。原則として夜間に削岩、昼間に搬出の工程を採り、一日当たりの積み込みは最大で約200m3となる。除去する岩塊は約94,800m3で、約3年を見込む。露出面へのコンクリートの吹き付け、仮設備の除却などに2年を要することから、工事完了は掘削開始から起算して5年後となる見込みである[11]。発生した石は、北野牧の現場から約60キロメートル離れた長野県坂城町の蓬平地区での地滑り対策工事の使用が検討されたが、輸送距離が長くなることと、工期がずれると仮置き場の確保が必要となることから河川浚渫土や建設発生土を使用することとなった[13]。
本トンネルを含む上信越自動車道富岡IC - 信濃町IC間147kmおよび長野自動車道安曇野IC - 更埴JCT間43kmは橋梁やトンネルの割合が多く、リニューアル工事を要する箇所が多数あることから、2021年10月に専門部署となるNEXCO東日本長野工事事務所が新設された。同社のリニューアル専門部署は札幌工事事務所に次いで2例目である[14]。